第84話ユウシャちゃんソウリョちゃんに暴露される・ソウリョちゃんの部屋にて

「(センシちゃんしっかりしてるなあ。『賭けの約束をチャラにはできない』なんてキリッと言っちゃって。そうだよね、賭けの約束をチャラにするなんていけないもんね。さすがセンシちゃん。かっこよかったなあ。あれ、ソウリョちゃんが部屋でふさぎこんでる)どうかしたの、ソウリョちゃん」


「ああ、ユウシャちゃんか。それで、僕たちのマージャンはどうだった?」


「(イカサマのことかな? でも、なにか怪しい動きをソウリョちゃんがしてたって確認したわけでもないし。ひょっとしたらひょっとして、偶然あんなすごい手牌になっちゃったのかもしれないし)そ、それはもう名勝負だったんじゃあないかな」


「ユウシャちゃんは誤魔化すのが下手だねえ。イカサマを疑ってるのがバレバレだよ。いいよ、白状する。僕がエルフクイーンさんにあの手配を仕込みました。どう、満足かい?」


「エ、エルフクイーンさんも、ソウリョちゃんがあの手配を仕込んだんじゃあないかと疑ってたよ。で、でも、エルフクイーンさんはそんなにソウリョちゃんのことを悪く思ってなかったよ。『エルフの里に娘とおいでなさい。しゅうとめとしていびり倒してやるから』なんて言ってたし」


「『いびり倒す』か。おお、怖い怖い」


「ソウリョちゃん、そうじゃなくてね!」


「わかってるよ、ユウシャちゃん。ふざけて悪かった。エルフちゃんと里帰りしていいってことでしょ。それくらいはわかるさ。さいわい、寿命もまだ吸い尽くされてはいないみたいだしね。それとも、そもそも吸われてはいなかったのかな……ちなみに、ユウシャちゃんは僕のイカサマ見抜けた?」


「ううん、ちっとも。あのあとエルフクイーンさんが過去を巻き戻したのをいっしょに確認したけど……それでもあたしはもちろんだけど、エルフクイーンさんも怪しい動きなんて見つけられなかったよ」


「そうか、僕の手技もさびついちゃいなかったようだね」


「そ、それにしても、びっくりだよ。ソウリョちゃんがあんなことができるなんて。だって、あたしたちパーティー四人でマージャンしてる時はあんなことなかったじゃない」


「それなんだけどね、僕はけして、ああいった手技を使わなかったからって、ユウシャちゃんたちをバカにしてるとか、下に見てるとか、そんなことは思ってなかったんだよ。それどころか、四人でやるマージャンは本当に楽しかった。なにも賭けないでやるとセンシちゃんは結構強いのに、脱衣マージャンでいこうかってことになると、センシちゃん途端に弱くなるんだよね。それまで冷静だったのに、とたんに顔になにもかも出るようになってね。あれはお遊びのゲームなら強くても、賭け事には向かないタイプだね」


「(そういえば……センシちゃんって何も賭けてないマージャンだと結構強いのに、脱衣マージャンだととたんにチョンボをするわフリテンリーチをするわで、負けてばかりだったな。下着姿にまでなる寸前で、いつもマホウツカイちゃんが『このへんでお開きにしたる』って終わらせてたけれど。なんでかな、物を賭けることにプレッシャーを感じるタイプにも見えないけれど。戦闘ではいっつも真っ先に先頭に立って飛び出すし。それって、自分の命を平気で賭けの対象にできるってことじゃないのかな)」


「ひょっとしたら、自分が下着姿になる以上に下着姿にさせたくない人でもいたのかね。チョンボもフリテンリーチもわざとだったりしてね……それはともかく、勝負で手加減していたってことは事実だしね。ひょっとしたら、それをこころよく思ってない人がいるかもしれない。そのことに関して僕がどうこう言うつもりもないし、その資格もないと思っている」


「あ、あたしはちっとも嫌だなんて思ってないよ」


「ありがとう、ユウシャちゃん。でも、そうは思わない人がいるかもしれないし、その人がもう僕とはマージャンをしたくないと言うのなら、それはしかたがないことだと思っている」


「あたしはソウリョちゃんとまたマージャンしたいけどな」


「僕もさ、ユウシャちゃん。僕も前みたいに四人でマージャンをやりたい。でも、マージャンってのは四人でやるものだからねえ。一人を無理やりさせるなんてことはしたくないしね。かといって、エルフクイーンさん相手にああする以外の方法は思いつかなかった。なにせ、大事な娘さんを人間に持っていかれるわけだから、こちらとしても誠意を尽くそうと思ったんだ」


「……」


「それがあのエルフクイーンさんへの積み込みでね。あそこでエルフクイーンさんが僕の捨て牌を見逃すようなら、エルフクイーンさんは僕を対戦相手とみなしていなかったことになる。なにせ当たり牌を見送るんだからね。でも、エルフクイーンさんはそうしなかった。あれで、僕は少なくともエルフクイーンさんと同じ土俵に立っている。この後、一人の人間と一人のエルフとして話ができると感じたんだ」


「(マージャンの強い人の発想なのかな。あたしにはピンとこないや。でも、ソウリョちゃんもエルフクイーンさんも立派だってことはよくわかる気がする)」


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