第82話ユウシャちゃんエルフクイーンちゃんに愚痴られる・テレビの前にて
「(えっと、観戦用のテレビが設置されたところっと……あれ、ギャラリーがいなくなってる。まだゲームが終わったばかりだってのに。どうしてだろう。あれ、一人だけいるな……)エルフクイーンさん! どうしたんですか、こんなところで」
「おや、誰かと思えば、スポンサーのユウシャさんか。何か用か。わらわは別に商品としてお前にキスなんかしたくないぞ」
「いえ、キスがどうのこうのと言う話じゃなくてですね。テレビ中継でベンチャーさんにお世話になったから、お礼を言いに行こうと……で、でもここにはエルフクイーンさん以外には誰もいませんね」
「テレビ? ああ、このわらわのマージャンが映し出されてる箱のことか。さっきのマージャンで確かめたいことがあってな。見に来たらいつのまにかわらわ以外には誰もいなくなってしまった」
「(エルフクイーンさんが来たら、そりゃあ普通の人は逃げ出したくなっちゃうよなあ)」
「そんなことよりも、ほれ、見てみい。さっきのマージャンじゃ。このテレビと言うものはすごいな。四人全員の手牌が観れる」
「あ、本当ですね。テレビって、過去の映像も見れるんだ。生放送だけかと思ってた」
「勘違いするでない。過去の映像が見られるのはテレビの力のおかげではない。わらわの魔法のおかげじゃ。わらわが時間をさかのぼる魔法をテレビにかけて、さっきのマージャンを見ておるのじゃ」
「そ、そうなんですか。エルフクイーンさんの魔法ってすごいんですねえ」
「お世辞はいらん。それよりも、テレビに映っとるマージャンを見よ。ラストの局じゃ。どうじゃ、なにかおかしな動きをしてるものはおるか」
「(ラスト……エルフクイーンさんがあの凄い手を上がった一局かあ。でも、エルフクイーンさんがなにか変なことをしているようには見えないなあ。エルフクイーンさんともなると、イカサマしてもあたしには見破れないのかなあ)」
「言っておくが、わらわはべつにイカサマはせんかったぞ」
「わ、わかってますよ、そのくらい」
「おぬしは思ってることがよく顔にでる小娘じゃのう。その様子じゃと、わらわがイカサマをしてると思っとったことが丸分かりじゃぞ。少しはあのソウリョさんを見習わんか。あやつのポーカーフェイスは腹ただしいくらいじゃったと言うのに」
「(うう、全部エルフクイーンさんに見抜かれてる。でも、『ソウリョさんを見習え』ってエルフクイーンさん、どういうことですか?)じゃ、じゃあ、エルフクイーンさんがラストの一局で上がったあの手は……」
「いくらなんでも、あれが偶然と考えるほどわらわはおめでたくはないからな。となると、仕込んだのはソウリョさんだろな。他の二人にはそんなことをする必要がない。と言うことで、もう一度再生してやるから、今度はソウリョさんの様子に注意して見るが良い」
「は、はあ……」
「どうじゃ、なにか怪しい動きをお主のお友達はしておるか?」
「い、いえ、特にそんなことをしているとは思えませんが……」
「そうか、わらわもじゃ。何度も見返したが、一向に妙な動きは見つからん。全く、実に気にいらん」
「き、気に入りませんか、エルフクイーンさん」
「当然じゃ。あのソウリョさんとか言うわらわの可愛い娘を奪ったやつのイカサマがわらわに見抜けんのも気にいらんし、そのイカサマでやつが勝ったのではなく、わらわにあんた手配を仕込まれたのも気にいらんし、わらわがあやつの捨て牌の中でロンしたのも気にいらん」
「で、でしたら、エルフクイーンさんがソウリョちゃんの捨て牌の中を見送れば良かったのではないでしょうか」
「バカモン、そんなことができるか。あやつ、このエルフクイーンを試しおったのじゃ。自分の捨て牌でわらわが上がるか試したんじゃ。わらわがあやつを試すつもりじゃったのに、試されていたのはわらわのほうだったのじゃ。実に気にいらん」
「そ、そうですか」
「気にいらんから、あやつを親戚総出でいびってやる。エルフの嫁しゅうとめ戦争は厳しいからな。はたして人間に耐えられるかな。ストレスで寿命が何年か縮むかもな」
「し、親戚総出でですか」
「ああ。あやつがエルフの里にやってきたら、しきたりをこれでもかと叩き込んでくれるわ」
「そ、ソウリョちゃんがエルフの里に行ってもいいんですか?」
「断る道理はあるまい。エルフの里の侵入許可は賭けの対象にはなっておらんかったからな」
「よ、嫁しゅうとめ戦争ですか」
「なにせ、あやつはわらわの可愛い娘のお嫁さんということになるからの。となるとわらわはあやつのしゅうとめということになる。しゅうとめは嫁をいびるものじゃ」
「じゅ寿命が縮んじゃいますか。そういえば、ソウリョちゃんは見た目が大して変わっていなかったような……五十年も寿命を吸われたのに」
「何か勘違いしておるようじゃな。わらわが吸い取ったのは寿命であって若さではない。五十年分の寿命を吸い取ったところで、あやつがしわくちゃのおばあちゃんになるわけじゃないのじゃ。しかし、人間の余命がどれくらいかはわらわにもわからぬでのう。あやつ、あと何十年はいきるかのしれぬのう。となると、もともと百や二百までいきるはずだったのかもいしれぬのう」
「はい、そうかもしれまんね、エルフクイーンさん」
「これはあやつをいびりがいがありそうじゃわい」
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