第81話ユウシャちゃんエルフクイーンちゃんに観戦を許可される・エルフちゃんの部屋にて

「で、ユウシャさんはどうするんだい」


「(え、エルフクイーンさん、『どうする』って)どういうことですか」


「ユウシャさんが賞品を提供してくださったことには感謝しよう。おかげで卓の四人が全員トップを目指すようだ。勝負はこうでないと面白くないからね。となると、ユウシャさんはこのゲームのスポンサーと言うことになる。となると、ユウシャさんには観戦の権利が当然あると思うんだが」


「(そう言われると……こんな凄い試合他じゃあ見られないかも。できることなら、なんとしても生で見物したいかも)」


「なにより、ユウシャさんのおかげでギャラリーがよそに移ってくれたみたいだしね。わらわにはよくわからんが、テレビの撮影?とやらのスタッフもいるみたいだし、ユウシャさん一人くらいの観戦はわらわも気にならんよ」


「そ、それではエルフクイーンさんのお言葉に甘えまして……」


「で、誰の後ろで観戦するんだい? マージャンの観戦で、誰の後ろに立つかは重要な要素なんだけれど……」


「(たしかに……向こうでテレビ見てるギャラリーさんたちは四人全員の手牌が見えるけど、ここで直接観戦すると一人の手牌しか見られない。さすがに勝負の最中にあっちいったりこっちいったりチョロチョロなんてできないし……となると、ここはやっぱり、ベンチャーさんがあそこまで出会えて感激していた)エルフクイーンさんの後ろにつかせてもらってもいいですか?」


「賞品であるキスのスポンサーさんがそうおっしゃられるのなら。しかし、わらわの後ろか。これはレトロゲームセカイの住人に通しをされるかもしれないな。どうだね、ソウリョさん。ひとつユウシャさんにわらわの手牌を通しで教えてもらっては。わらわの娘のエルフと、ユウシャさんのキスの両方を同時に手に入れられるかもしれんぞ」


「エルフクイーンさん! 変なこと言わないでください。ソウリョちゃんまでキスだなんて。キスの約束はセンシちゃんとマホウツカイちゃんだけです」


「おや、そうなのかい。残念だねえ、ソウリョさん。一挙両得とはいかないで」


「(エルフクイーンさんったら、妙なこと言うんだから。それに、ソウリョちゃんも涼しい顔してどういうことなの。まさか、エルフクイーンさんの言う通り、エルフさんとの結婚をエルフクイーンさんに認めてもらいながら、あたしにキスするつもりだったんじゃあ……)と、とにかく早くゲームを始めてください」


「はいはい。スポンサー様のおおせのままに」


 ……


「(す、すごい。あたしの貧弱な表現力じゃ言葉にできないけれど、四人がすごい激闘を繰り広げている! あっという間にもうラスト。四人の点差もどっこいどっこいだし、この勝負はどうなるか最後までわからないよ。最後のエルフクイーンさんの手配は……)」


 東東東南南南西西西北北北中


『(えええ、これって、大四喜で、字一色で、四暗刻単騎待ち! こんなことって……え、え、どういうこと? エルフクイーンさんが積み込んだの? とてもそんなふうには見えなかったけれど……あ、ソウリョちゃんが牌を捨てる……)


 中


「(あああ、エルフクイーンさんの当たり牌!)」


「それね、ロン」


 パタリ


「(エルフクイーンさんが牌を倒した。えっと四倍役満! これってどうなっちゃうの。役満ご祝儀とかどう決めてたんだっけ)」


「役満ご祝儀は特に決めてなかったから別にいいや。でも、サシウマの件はきちんとさせてもらうよ。ソウリョさんの寿命五十年分、しっかりいただくからね」


「(ソウリョちゃんが負けちゃった。寿命五十年って……下手したらそのままお陀仏に。ソウリョちゃんはそうなっても霊魂としてエルフさんとはいっしょにいられるとは言ってたけど。でも、肉体は無くなっちゃうんだから……あ、ソウリョちゃんがおずおずとエルフクイーンさんに近づいていく。そりゃあそうよね。ソウリョちゃんは約束を破るような女の子じゃないし)」


「ほう、いい度胸だ。人間にしては珍しい。今までの人間と言えば、いざ勝負が決して自分の寿命が吸い取られるとなると、一度約束したにも関わらず無様にじたばた抵抗するやつばっかりだったものだが……」


「(エルフクイーンさん。それって、いままで何人もの人間の寿命を吸い取ったってことですか。でも、エルフクイーンさんにしてみればただの食事なのかも。ああ、そう言うことじゃなくて、ソウリョちゃんの寿命が五十年分吸い取られちゃう。ソウリョちゃん、なに平気な顔してるの。いくら神に仕える僧侶だからって、潔すぎるにもほどがあるんじゃないの?)」


 ヒュオーん


「これでソウリョさんの寿命を五十年分吸い取ったぞ。あとは勝手にするがいい。ちなみに、賭けの対象はソウリョさんの寿命五十年分で、娘のエルフを勘当するとかそういうことでは全然ないからな。いいか。そこのところをしっかり理解しておくんだぞ」


「(あ、エルフクイーンさんが部屋を出ていっちゃった。それにしても、ソウリョちゃん、寿命を五十年分吸い取られたにしては、ちっとも変わっていないような……そういえば、ベンチャーさんには中継で世話になったんだった。とりあえずベンチャーさんのところにお礼に行こう)」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る