第78話ユウシャちゃんマホウツカイちゃんに騙される。エルフちゃんの部屋にて

「それに関してはうちにええアイデアがあるんや。とっときのマル秘裏ワザアイデアやで」


「そんなのがあるの、マホウツカイちゃん、いいアイデアって何?」


「とりあえず、うちの話を聞きいな、ユウシャちゃん。うちの見るところ、ユウシャちゃんは『一人のエルフクイーンさん相手にあたしたち三人がかりなんてアンフェアじゃないかな』なんて考えてるんと違う?」


「そう、その通りだよ、マホウツカイちゃん。ほら、やっぱり勝負事はフェアじゃないと……いくらエルフクイーンさんがそれで構わないなんて言ってもさ。だって、これが仲間内でのお遊びならともかくさ、ソウリョちゃんとエルフクイーンさんの寿命がかかってるわけじゃない。だから……」


「皆まで言わんともええんや。うちはユウシャちゃんが何考えとるくらいはお見通しやからな。で、ユウシャちゃんのそんな心配を吹っ飛ばす素晴らしいアイデアがうちのこの明晰な頭の中にある。いやあ、こんなことを思いついちゃうなんて、うちは自分の才能が怖いわ」


「だから、そのアイデアってなんなの、マホウツカイちゃん。意地悪しないで教えてよ」


「まず、卓のメンバーの残り二人はうちとセンシちゃんにさせてもらう。ユウシャちゃんは見物しとればええんや」


「あたしが見物役になるの、マホウツカイちゃん?sで、でもそれだけじゃあ問題は解決しないんじゃないの……」


「そう、これだけじゃあ中途半端や。そこで、問題を解決する魔法のミラクルな呪文があるんや」


「え、そんな都合のいい呪文があるの? だったら、早く唱えてよ、マホウツカイちゃん」


「残念ながら、この呪文はうちは唱えても効果あらへん。と言うよりも、ユウシャちゃん以外の誰が唱えても効果がないんや。言うなれば、ユウシャちゃん専用呪文ってところやな。と言うわけで、ユウシャちゃん。この紙に書かれている通りに読み上げてえな。ほい、さんはい」


「『トップをセンシちゃんかマホウツカイちゃんが取ったら、ユウシャちゃんの好きな場所にキスできる権利を進呈します』……マホウツカイちゃん、どういうこと? キスって? しかも好きな場所って?」


「ほう、これはいいこと聞いたで。トップを取ったら、ユウシャちゃんの好きな場所にキスできるんか。これはがぜんトップを取るモチベーションが出てきたで。キスと言ったら、やっぱりマウストゥーマウスかな。しっかし、ユウシャちゃんもやりよるなあ。センシちゃんとうちにトップ賞のご褒美をちらつかせることで、うちやセンシちゃんにトップを取らせにいくなんて、なかなかできる発想ちゃうで」


「ちが……これはマホウツカイちゃんがあたしに言わせたことじゃない。『紙に書いてある通りに読み上げてえな』なんて言って。だいたいさっきマホウツカイちゃん言ってたじゃない『こんなことを思いついちゃうなんてうちは自分の才能が怖いわ』って」


「なんか言うたか、ユウシャちゃん。うちにはなんにも聞こえんなあ。それにしても、なるほどなあ。エルフクイーンはんは当然トップを取りに行くやろうし、となると、ソウリョちゃんもエルフクイーンはんにサシウマで負けないためにトップを目指さなあかん。で、うちとセンシちゃんがご褒美目当てにトップを目指すとなると、これは四人全員がトップを目指すことになるから、うちとセンシちゃんとソウリョちゃんが三人で協力してエルフクイーンはんを引きずり下ろすようなことはなくなるっちゅうことやな。いやいや、おみそれしました、ユウシャちゃん。まさかこんな大岡裁きがあるとは思いもせえへんかったで」


「(たしかに、四人全員がトップを目指せば勝負は公平になる。例えば、マホウツカイちゃんがわざとソウリョちゃんに振り込んで点をあげるなんてことはなくなるのかも……でも、キスなんて……マホウツカイちゃん絶対面白がってる。まさか、最初からこうするつもりでエルフちゃんにあたしがマージャンの達人だって吹き込んだって言うの)で、でもそんな……」


「いやあ、ユウシャちゃんと口づけをすることになるなんてなあ。子供の頃は思いもせえへんかったで。その、ユウシャちゃん、うちもキスは初めてやさかい、優しくしてえな。実は、うち手を繋いだこともないんや。そんなうちがいきなりキッスなんてちょいとハードルが高い気がするかもしれへんけど……でも、せっかくのユウシャちゃんの好意だし……」


「(なにムード出そうとしてるのよ、マホウツカイちゃん。別にあたしは好意でマホウツカイちゃんにキスするわけじゃ。それにトップがマホウツカイちゃんだって決まったわけでもないし……そんな、キスだなんて、みんなが見ている前で言わないでよ、恥ずかしい)いや、マホウツカイちゃん、辞めてよ。キスだなんて、冗談きついよ。ほら、センシちゃんも何か言ってやってよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る