第77話ユウシャちゃんソウリョちゃんがエルフクイーンちゃんに宣戦布告するところを眺める・エルフちゃんの部屋にて

「待たせてしまってすまない、エルフクイーンさん。僕がエルフさんと結婚を約束しているソウリョだ。マージャンだそうだね。しかも賭けるのは寿命と来た。シンプルにいきましょう。サシウマ勝負です。僕とエルフクイーンさんで、点数を上回ったほうが相手の寿命を五十年いただく。それでいいですか」


「(えええ、ソウリョちゃん、あたしが連れてきたと思ったら、いきなりそんな宣言しちゃって。『五十年』って。そりゃあ、何千年も生きるエルフさんからすればそこそこのレートかもしれないけれど、下手すればそのままあの世行きじゃない、ソウリョちゃん。エルフクイーンさんもなんか満足そうにうなずいてるし)ソウリョちゃん、そんな勝負でいいの? 寿命五十年吸い取られたら、ポックリ成仏しちゃうかもしれないんだよ」


「心配ご無用、ユウシャちゃん。エルフちゃんに確認してある。寿命を全て吸い取られたらどうなるかを」


「ど、どうなるの?


「さすがに寿命切れでは蘇生はできないそうだ。肉体的には死んじゃうみたいだね。でも、エルフの秘術とやらで、霊魂は存在し続けられるようになるらしい」


「???」


「簡単に言うと、負けても僕の魂はエルフちゃんといっしょにいられるんだ。いやあ、それを聞いた途端にがぜん気が楽になっちゃってねえ。プレッシャーなんて吹っ飛んじゃったよ。なにせ、エルフちゃんと出会ったことで、急にあと数十年で死ぬのが怖くなってねえ。今までは『僕は神に仕える身だから、死とは神様のもとへ赴くこと。喜ぶべきことなんだ』なんて言い聞かせてたんだけどね。やっぱり、愛する人とは一秒でも長くいたいじゃない」


「……」


「そしたら、霊魂になったら、半永久的にエルフちゃんといられるときた。まさか、エルフちゃんの死を僕が看取る可能性があるなんてねえ。え? なに? エルフちゃん?『エルフのわたしも死んだら霊魂になるから、エターナルにソウリョちゃんといられる?』いやあ、参ったなあ。ユウシャちゃん、どうしようか」


「(ソウリョちゃん、それ口に出さないほうがよかったんじゃあないかなあ。質問したあたしが言うのもなんだけど。ほら、エルフクイーンさんが白い目で見てるよ。今まさにソウリョちゃんは人間性を観察されてるんだよ。なんだか、エルフクイーンさんの味方をしたくなってきちゃったなあ)『どうしよう』と言われてもね」


「そうか、恋愛経験もろくにないユウシャちゃんには難しい質問だったかな。いやいや、自分でも驚きだよ。いままで僕は神学の研究こそが人生の目的で、恋愛なんて一時の気の迷いのシロモノにうつつを抜かす人間なんて俗物のいいところだと思っていたけれど……愛って素晴らしいものだよ、ユウシャちゃん。『汝の隣人を愛せよ』と言う主の言葉がやっと頭じゃなく心で理解できた気がするよ。世の中ラブアンドピースだよ」


「(これ見よがしにピースサインなんかしちゃってさ、とんだ色ボケソウリョちゃんだよ)」


「やっぱり、本を読んでのお勉強だけじゃダメだね。かといって、実際の体験学習も一人で誰とも議論せずに学ぼうとしたって、独りよがりもいいところだよ。それがここレトロゲームセカイで多くの先人の話をうかがって理解できたんだ。ねえ、エルフちゃん。君は実に多くのことを僕に実体験で教えてくれたよ。え、なになに、『ソウリョちゃんもわたしにいっぱいいろんなことを教えてくれたな』だって、何を言うんだよ、エルフちゃん。みんな見てるじゃないか」


「(なにさ。どうせあたしは恋も知らないお子様ですよ……そういえば、ソウリョちゃんといっしょにいたセンシちゃんにマホウツカイちゃんもついてきちゃったけど)ソウリョちゃん、一応聞くけど、センシちゃんとマホウツカイちゃんの三人がかりでエルフクイーンさんをイカサママージャンでどうにかしようと思ってない?」


「イカサマなんてしないさ。人聞きの悪いことを言わないでよ、ユウシャちゃん。と言うよりも、なんだか言葉にトゲがない? ユウシャちゃんは誰の味方なの?」


「少なくとも、あたしにないしょでエルフちゃんと愛をはぐくんでいた誰かさんの味方じゃあないよ。なによ、いきなり婚約するなんて言われたこっちの気持ちにもなってよ。その前に一言言ってくれても良かったんじゃないの」


「それに関しては悪かったとは思うけどね。でも、色恋沙汰ってのは『秘めたるが花』なんて言葉もあるしね」


「(ふんだ。なにが『秘めたるが花』よ。すっかり恋愛マスターみたいな顔しちゃってさ。でも、向こうはエルフクイーンさん一人だしこっちが三人がかりってのはなんだか納得がいかないなあ。イカサマなしだとしても、単純に三人の方が有利だし。協力プレイもできるしうえに三人のだれがエルフクイーンさんから点を取ってもいいんだし。ああ、そういえば)三人かあ。だれが麻雀やるの? ソウリョちゃんは確定として、残りの二人は……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る