第74話ユウシャちゃんソウリョちゃんに婚約報告される・ソウリョちゃんの部屋にて
「(ふう、デシユウシャちゃんの結婚騒ぎもひと段落したな。それにしても、みんなには迷惑かけっぱなしだなあ。よくこんなあたしが勇者していられたよなあ。それにしても、ソウリョちゃんったら話ってなんなんだろう。ソウリョちゃんの部屋に来てくれだなんて)おーい、ソウリョちゃん、ユウシャだよ。話ってなーに?」
「ユウシャちゃんか、とりあえず入ってくれ」
「うん、いいけど」
ガチャリ
「で、話ってなあに、ソウリョちゃん?」
「そ、それはだね、結婚の話なんだけれど……」
「ああ、そのことだったら解決したよ」
「『解決した』ってどういうことだい、ユウシャちゃん。まだ始まってもいないと思うんだが?」
「いや、だからデシユウシャちゃんの結婚の件が……」
「デシユウシャちゃんも結婚するの?」
「え、デシユウシャちゃんの結婚の話じゃないの。ソウリョちゃん。あれ、今『も』って言った? 『デシユウシャちゃんも』って」
「言ったよ」
「それって、デシユウシャちゃん以外にも誰か結婚するってこと?」
「そうだよ」
「え、だれだれ? 教えてよ、ソウリョちゃん」
「僕」
「へ」
「だから僕が結婚するの。すでに婚約もしている」
「えええ、ソウリョちゃんが結婚? 誰と?」
「スタッフのエルフちゃん」
「エルフちゃんって、あのもう千年以上も生きてるのにすでに小じわや中年のたるみが気になり始めたあたし達と違って、いつも若々しいあのエルフちゃん?」
「そうだよ、そのエルフちゃん」
「(そんな、あの学問への探求一筋と思ってたソウリョちゃんが結婚。デシユウシャちゃんだけじゃなくて、ソウリョちゃんにまで先を越されるなんて。しかも、相手はあのエルフちゃん。一見したら可憐な幼女なのに、千年以上いきてきたアンティークでビンテージ的な魅力がなんとも言えないあのエルフちゃんだなんて)そ、そうなんだ。とりあえず、おめでとう」
「ありがとう」
「ち、ちなみに馴れ初めなんか聞かせてもらってもいいかな、ソウリョちゃん」
「いいよ。僕が回復魔法について、エルフちゃんにいろいろ助言を受けてたんだ。なにせ、向こうは千年以上生きてるからね。その知識と経験は非常に参考になる」
「ほ、ほほお」
「で、向こうは向こうで人間界のことに興味津々なんだ。なにせ、エルフはエルフの世界にこもりっきりらしいからね。そしたら、エルフちゃんは禁を犯して里を飛び出し、人間界に忍びこもうとしたんだって。それで、あえなく御用となって、エルフちゃんのお父さんがいろいろ骨を折って、ここレトロゲームセカイのスタッフになるからってことで刑務所行きを回避したらしいんだ」
「(あんな清楚なエルフちゃんにそんなアグレッシブな一面が……)な、なるほど」
「それで、僕が回復魔法について教えてもらったお礼がわりに人間界のことをああだこうだ教えてたら、まあ、その、女の子が二人きりだからさ、関係が親密になっちゃったんだな。これが」
「(『なっちゃったんだな。これが』じゃないわよ、ソウリョちゃん。『人間界のことをああだこうだ教えた』って、どうああだこうだ教えたのよ。なにそれ、千年以上生きてるエルフちゃんをソウリョちゃんがリードしてたの? なんだか頭がクラクラしてきちゃった)け、結婚は当人同士がしたければすればいいんじゃないかな」
「それがそうもいかないんだ。エルフちゃんの母さん……長老でもあるらしくって、エルフクイーンって言うらしいんだけど、が猛反対してるらしくって。『人間なんぞに娘をやれるはずがありません。せめて五百年は生きていないと話になりません』ってカンカンみたいなんだ」
「そうなんだ……そういうことなら、マオウちゃんとマッドドクターちゃんの話が参考になるんじゃないかな。ほら、あの二人も人間とモンスター同士で結婚してるわけだし、いろいろ参考になると思うけど……」
「それはできないんだ、ユウシャちゃん」
「なんで?」
「スピンオフの『中間管理職マオウちゃん 部下のスライムはチートモンスター』のネタバレになるからだ」
「???」
「とにかく、とりあえずユウシャちゃんにエルフちゃんと話をしてもらいたい。そうしないと話が始まらないんだ。いいだろう、ユウシャちゃん。嫌って言うのなら、あのことバラしちゃうからね。ユウシャちゃんが何歳までオネショしてたとか、ユウシャちゃんが旅芸人の怪談話聞いた時にマホウツカイちゃんといっしょにお漏らししちゃったとか」
「わかった、わかったから。エルフちゃんと話をすればいいんでしょ」
「ユウシャちゃんならそう言うと思っていたよ」
「(なにが僧侶よ。『僕は生涯を神に捧げると決めたんだ』って言ってたくせに、ちゃっかりエルフちゃんと婚約なんかしちゃって。これはあれだね。いつのまにかできちゃった結婚して『女の子同士だから処女懐胎しちゃいました』なんて言うパターンだね。決まってるんだから」
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