第70話ユウシャちゃんシンカンちゃんに諭される・ユウシャちゃんの部屋にて
「そう言うことだね、ユウシャちゃん。体の怪我は治っても、心の傷はそう簡単には治らないってことさ。それをなんとかするのがカウンセラーという仕事で、デシユウシャちゃんはそれを目指してたんだよ」
「そ、そうだったんですか。あれ、でも、デシユウシャちゃんはあたしが決めた特訓メニューをきっちりこなしてたって言ってたけど?」
「ああ、特訓もしっかりやってたよ。それはわたしが保障しよう。神の名に誓ってね。で、その特訓が終わったら、カウンセラーになるための勉強開始と来たもんだ。お世辞にも出来が良い生徒とは言えなかったけどね、わたしも『寄付金の支払いは断固いたしませーん』なんて言うやからを相手にするよりはよっぽど楽しかったからね」
「ええ、わたしの特訓メニューはわたしから見てもきついメニューだったはずですが……その後にお勉強ですか? それにその口ぶりからすると、シンカンちゃんがデシユウシャちゃんの勉強を見ていたみたいじゃないですか」
「『見ていたみたい』じゃなくて、『見ていた』の、ユウシャちゃん。デシユウシャちゃんも、最初は『そんな、ユウシャ師匠以外を師と仰ぐなんて……』なんてゴネてたけれど、そこはさ、わたしも聖職者として、懺悔に来た信者の悩み相談とかしてたからさ、『いやいや、わたしを師匠と思うことはないんだよ。先生と思えばいい』なんてデシユウシャちゃんをなだめすかしてさ」
「それはどうもわたしの弟子がご迷惑をおかけしました……じゃなくて、なに人の弟子に特訓の後に、勉強までさせてるんですか、シンカンちゃん! デシユウシャちゃん、寝る暇もなかったんじゃあないですか?」
「いやあ、なにせデシユウシャちゃんから『勉強教えてくれ』って頼み込んで来るもんだからさあ。それに、デシユウシャちゃんに寝る暇がなかったと言われたら、そうでもないんだなあ、ユウシャちゃん。確かに最初のうちは特訓を終えるのに、早朝から夕方までかかって、眠い目をこすりながらわたしの教えを受けていたけれど、すぐに特訓メニューを短時間で終えられるようになってね、しまいにはわたしの授業だけでなく、自習までやるようになってね。いや、感心感心」
「(デシユウシャちゃんがわたしの課した特訓メニューを短時間で! わたしでもあのメニューをこなしたらヘトヘトになったのに)そ、それはどうもシンカンちゃんにはご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんて思ってないよ。優秀な若者を導くのは年長者にとっての何よりの楽しみだからね。それは優秀だったよ。案外あのまま戦闘マシーンに育てたら、ユウシャちゃんより早くマオウさんを倒せちゃったりしたんじゃあないかなあ」
「(そんな! いつもあたしの後を『師匠、師匠』と追いかけてはへたっぴな剣技を披露しては『すぐに師匠のお役に立つようになってみせますからね』なんて得意がってたあのデシユウシャちゃんにそんな才能が。あたしの役に立つどころか、あたしより強くなる素質が。そして、そんな素質がありながらあたしのためにカウンセラーになるだなんて……)」
「それで、カウンセラーの専門教育を受けるために大学にまで通ってねえ。いやほんと、デシユウシャちゃんの勤勉っぷりには頭が下がるねえ」
「えええ、大学にまで! シンカンちゃんの導きはどうなっちゃったんですか?」
「わたしの導きなんて、すぐにいらなくなっちゃったよ。いや、ほんとデシユウシャちゃんは優秀すぎて……」
「(あたしが冒険で世界中を旅してた間にデシユウシャちゃんは女子大生になってたなんて……)」
「その大学で、例のベンチャーさんに出会ったらしいよ。ねえ、ユウシャちゃん。わたしも最近の若者には気にくわないやつがいっぱいいることは認めるよ。でも、あのベンチャーさんはそういう人ではない気がするんだよねえ。そもそも、ユウシャちゃん、ベンチャーさんが作り出したテレビが何かわかってるの?」
「そ、それはよくわからないです」
「『よくわからない』?」
「ちっともわからないです。テレビなんて言われても、何が何だかちっともわかりません」
「そう言うことなら、とりあえずテレビがどんなものか知らないとね。ちょうど教えてくれそうな人がここレトロゲームセカイにいるじゃないか」
「教えてくれそうな人? 誰ですか、それ」
「そんなの、ベンチャーさんに決まってるじゃないか。なにせテレビを作り出した張本人だからね。それはもう上手く教えてくれることだろうだろうね」
「う、ベンチャーさんですか」
「ユウシャちゃんがそんなふうに気まずそうな顔をする気持ちもわかるけどね。とりあえず、話くらいは聞いてやってもいいんじゃないかな。なにせ、今時だと、保護者に挨拶もろくにせずに『子供ができちゃいました。結婚します』なんてことを言うカップルがゴロゴロいるらしいからねえ。それに比べればきちんとした子じゃないかデシユウシャちゃんさんにしろ、ベンチャーさんにしろ」
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