第67話ユウシャちゃんデシユウシャちゃんと再会する・ユウシャちゃんの部屋にて

「(はあ、ダイマオウさんの話は衝撃的だったなあ。あたしがこんなに快適な生活をしている裏にはあんなカラクリがあったなんて。ダイマオウさんには何もするなって言われたけど、今の子供が苦しんでるって話を聞くとなあ……)」


 コンコン


「(あれ、ノックの音だ、誰だろう)はーい、いま出まーす」


 ガチャリ


「師匠! お久しぶりです」


「デシユウシャちゃん! デシユウシャちゃんじゃない! うわあ、ひさしぶりじゃない。おっきくなったねえ。どうしたの?」


「師匠! ひどいです。師匠が魔王征伐の旅に出ると言うからこそ、おいらは師匠の教えを受けることを諦めたんです。『師匠はこれから魔王征伐で忙しくなる。だけどおいらはまだ未熟だから師匠達にはついていけない』って。だからこそ、おいらは師匠とおいらのふるさとの村で、師匠がおいらに残してくれた特訓メニューをずっとこなしてたって言うのに。でも、師匠はいまここレトロゲームセカイで引退したって言うじゃないですか。それならそうと一言言ってくれれば、おいらはすぐに師匠のもとに駆けつけたって言うのに」


「(そういえば……レトロゲームセカイに来て以来いろんなことがありすぎて、すっかりデシユウシャちゃんに連絡するのを忘れていたよ)そ、そうだね、ごめんね、デシユウシャちゃん。で、でも今はあたしは引退して暇で暇でしょうがないからね。デシユウシャちゃん。いっしょに修行しようか?」


「そ、そのですね、師匠……特訓もいいんですが、実は師匠に報告したいことがありまして……」


「報告? なになに、デシユウシャちゃん。早く言ってよ」


「それが、実はおいら結婚したい相手ができちゃって……」


「!!! ほんとなの? デシユウシャちゃん! そっかあ、ふるさとの村をあたしが出発してからずいぶんたつし、あの時はちっちゃかったデシユウシャちゃんももう立派な大人になったもんね。そうかあ、デシユウシャちゃんが結婚かあ。先こされちゃったな。で、相手はどんな人なの? 会わせてよ」


「その、相手はここに連れてきてるんだけど……」


「それを早く言ってよ、デシユウシャちゃん。だったら早く紹介してよ」


「それがその師匠……問題があって……」


「問題? なにかあるの? 向こうの親御さんに反対されてるとか?」


「親御さんと言うか……向こうの奥さんに反対されてて……」


「へえ、奥さんに……奥さん! いま奥さんって言ったの、デシユウシャちゃん!」


「うん、言いました、師匠」


「奥さんってあれでしょ、結婚相手ってことでしょ? じゃあなに、デシユウシャちゃんはもう結婚しちゃってる相手と結婚したいってこと?」


「そういうことです、師匠」


「そ、それはつまり、相手がハーレムを作りたがっていて、しかもデシユウシャちゃんもそれを喜んで受け入れてて、デシユウシャちゃんは相手の二号さんでも三号さんでもかまわないってこと? い、いくらなんでもそれは……」


「違うの、師匠。そうじゃないの。相手は奥さんと離婚したがってるの。でも、奥さんがそれを認めないの。だから、おいらはその人と結婚できないの」


「そ、そう言うことなの。そうかあ、バツイチかあ。ま、まあそう言うことなら……とりあえずその人と会ってみようじゃないの。どんな人なの、その人は?」


「すごい人なのよ。テレビってのを発明したの」


「テレビ? なにそれ? えっとね、遠くのものが近くで見れる装置で……」


「望遠鏡みたいなやつ?」


「違うの、師匠。ううん、なんて言ったらいいのかな。とにかくね、今までになかったものを発明して、それを世の中に広めようといま頑張ってる人なの」


「今までになかったもの? それって、チェーン店とかガチャとかそう言うものってこと、デシユウシャちゃん」


「そう、師匠よくチェーン店とかガチャとか知ってましたね、さすがです」


「(ダイマオウさんが言っていたチェーン店やガチャと同じようなものを発明した人ってこと? それなら子供達を苦しめてる大悪人ってことに……いやいや、とりあえずあってみないと)へえ、その人はすごい人なんだねえ」


「そうなんです、師匠。その人といっしょにテレビを盛り上げようって人がいっぱい集まって、会社作って社長になっちゃったんですから」


「社長ってなに?」


「ああ、そうか、会社自体新しいシステムだから師匠が知らないのも当然か。あのね、社長ってのは会社のトップってことなの」


「(会社のトップ! ダイマオウさんが言ってた。下っ端を奴隷のようにこき使って自分だけ大儲けしてる悪い奴だって。だめだめ、落ち着かないと。あってもいない人を話だけで判断するなんて。マオウちゃんも話とは全然イメージが違ったじゃない」


「と、とりあえずその人に会わせてよ、デシユウシャちゃん」


「わかりました、師匠。ベンチャーちゃん、師匠があってくれるって。さあ、はいって、ベンチャーちゃん」

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