第61話ショウニンちゃんアソビニンちゃんにお金を押し付ける・ショウニンちゃんの部屋にて

「だめだ、まさかこんなことになるとは。ゴーレムさんの言う通りだった。あのあとリュウキシさんはひょっこりあらわれたけど、誰にかくまわれていたかは頑として言わないんだもんなあ。わたしに商人の才能はなかったんだな」


「どうしたの、ショウニンちゃん。うわあ、すごいお金、これどうしたの」


「おお、アソビニンちゃんか。そうだね、お金だね。こんなものに熱狂してた時代もわたしにはあったなあ」


「そうだよ、ショウニンちゃん言ってたじゃない『いつか札束でうちわつくってあおぐんだ』って。ここにその札束があるじゃない。ほらほら。あたしがあおいであげるからさ」


 ぱたぱた


「うん、心地よい風ですこと。このゲンナマのフレグランスがたまらない……違う、そうじゃないの。あおいでくれるアソビニンちゃんの気持ちはうれしいけれど、この金じゃあダメなんだ」


「どういうこと、ショウニンちゃん? お金はお金じゃないの」


「『お金はお金』か。アソビニンちゃんはたまに深いことを言うよね。お金はお金であるがゆえにお金か。だけど、あたしが言ってるのはそういう高尚な学問的なことじゃないんだよ。もっと低俗なことなんだ」


「ショウニンちゃんが何言ってるかちっともわからない、きちんと説明してよ」


「いいよ。ちょうど話し相手が欲しいと思ってたんだ。それじゃあいくよ。わたしがマホウツカイちゃんと組んで賭けの胴元してたのは知ってる?」


「うん、知ってる。あたしはそういうギャンブル的な遊びは好きじゃないから参加しなかったけれど。なんか賭け事になるとみんな目を血走らせるからいやなんだよね。遊びはもっとこう、きゃっきゃうふふしてるものじゃないと」


「かなわないなあ、アソビニンちゃんには。その通りやなギャンブルはいけないね」


「どうして、ショウニンちゃん。『好きじゃない』ってのはあたし個人の話で、ショウニンちゃんはショウニンちゃんで好きにやればいいじゃない。実際こんなにお金がいっぱいあるんだから大成功なんじゃないの」


「それが違うんだ。簡単に言うと、わたしは『この中に当たりがあるからどれか選んでね。当たったら儲かるよ』と言うギャンブルをしたんだ」


「へえ、そうなんだ」


「ところが、賭けた客に的中させた客はいなかったんだ。つまり胴元……賭場を開いたわたしなんだけど。の総取りってことになったんだ」


「やったじゃん。ショウニンちゃん大儲けじゃない。でも、なんでそんな浮かない顔してるの」


「わたしが用意した選択肢に正解はなかったんだよ。『この中に当たりがある』なんて言っておいて、実際は当たりがなかったんだから、こんなものは詐欺だよ」


「詐欺じゃあダメなの、ショウニンちゃん」


「ダメなんだ。わたしは真っ当な商売で儲けたかったんだ。人様を騙して金を巻き上げるなんてことはしたくなかったんだよ。しかもだよ、わたしが想定してなかった正解を言い当てた人がいたんだ」


「へえ、すごい。でも、当てた人がいるんだったらその人に払い戻せばいいんじゃないの」


「ところがそもいかないんだ。その当てた人ってのはゴーレムさんなんだけど、そのゴーレムさんは賭けに参加にてお金を賭けたわけじゃないんだ。ただ、ギャンブルに目の色を変えていたわたしたちをちらりと見て、事実を言い当てて去って行っちゃったんだから」


「それでショウニンちゃんは悩んでるんだ」


「そう、悩んでるの。そこでアソビニンちゃんにお願いがあるんだ。このお金を全額ゴーレムさんに渡してもらいたい」


「ショウニンちゃんが『そうしろ』って言うのならそうするけど、ショウニンちゃんが自分で渡せばいいんじゃないの」


「それがそうもいかないんだ。商売では、誰かからお金をいただくのと同じくらい、いや、下手したらそれ以上にお金を受け取らせるのは難しいんだよ」


「そうなの? あたしはショウニンちゃんがお金をくれるって言うのなら、喜んでもらっちゃうけどなあ」


「じゃあ、わたしがこのお金を全部アソビニンちゃんにあげるって言ったらもらう?」


「ちょっと額が多すぎるかな」


「そういうこと。これだけのビッグマネーを受け取らせるのは難しいんだ。そのうえ相手がギャンブルを冷めた目で見てたゴーレムさんだからね。わたしみたいなお金大好き人間がこれだけの大金を渡そうとしたら、何か裏があるんじゃないかって勘ぐられちゃうんだよ」


「ふむふむ」


「そこでアソビニンちゃんの出番だよ。無垢なアソビニンちゃんが、『これあげる』ってこのお金を差し出せばあのゴーレムさんが受け取る可能性が出てくる」


「で、あたしは何をどうすればいいの、ショウニンちゃん」


「このお金を全額ゴーレムさんのところに持って行って、『ゴーレムさん大当たりです。これ配当金』と言って差し出してくれればそれでいい」


「ゴーレムサンオオアタリデスコレハイトウキン」


「いいよ、その配当金がなんなのかわかってない感じが実にいい。じゃあ、もう一回」


「ゴーレムサンオオアタリデスコレハイトウキン。でもいいの、ショウニンちゃんにもいくらかもらう権利はあるんじゃないの?」


「いらないいらない。もうギャンブルの胴元はこりごりだよ」




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