昔ながらのゲームキャラクターに居場所はないのですか

第59話ユウシャちゃんセンシちゃんに相談される・ユウシャちゃんの部屋にて

　コンコン

「あ、お客さんだ。リュウキシさん。隠れてください。それにしても、ゴーレムさん遅いなあ。リュウキシさんのご飯を持ってくるよう頼んだのに……はーい、今出ます」

　ガチャリ

「ユウシャちゃん。いま、少し話できるかな」

「セ、センシちゃんじゃない。うん、いいよ。とりあえず入ってくれるかな」

「うん、おじゃまします」

「（センシちゃん、いったい何の用だろう。まさか、リュウキシちゃんの存在をかぎつけて！　リュウキシちゃんの大ファンのセンシちゃんなら十分考えられる）な、何の用かな、センシちゃん」

「わたし、自分が恥ずかしいよ」

「ど、どうしたの、センシちゃん。いきなりそんなこと言われてもわけがわからないよ。何があったか事情を説明してよ」

「それがね、ユウシャちゃん。ショウニンちゃんに『チキチキ、リュウキシさんはだれにかくまわれているんでしょうか！』に誘われたの」

「？？？」

「ああ、ユウシャちゃん、ごめんね。わかりづらかったね。簡単に言うと、リュウキシさんはこのレトロゲームセカイの誰かにかくまわれていることは間違いない。だったら、その誰かをみんなで当てっこして、そこにちょっぴりの賭け要素を入れちゃおうってことなんだ」

「（そ、そんなことになってたんだ）そ、それは楽しそうと言うかなんと言うか」

「でしょ。ユウシャちゃんもそう思うようね。わたしもそう思ったの。『リュウキシさんをかくまっている人を当てるなんて面白そうだな』って。まあ、わたしが大本命だって知った時は驚いちゃったけれど」

「（そうかあ、センシちゃんはリュウキシさんの大ファンだもんな。本命に思われるのも当然か。でも、犯人はあたしなんだよねえ。センシちゃん、ごめんね、みんなの期待を背負わせちゃて）そ、そうなんだ。それで、センシちゃんは誰に賭けたの？」

「それがね、わたしも誰に賭けようか悩んでたらね、そこにたまたまゴーレムさんが通りかかったの。ほら、ユウシャちゃん担当のゴーレムさん」

「（ゴーレムさん。リュウキシさんを運ばせたりご飯を取りに行かせたりだけじゃなく、賭けにまで巻き込ませちゃってごめんなさい）へ、へえ。ゴーレムさんは誰に賭けたの？」

「それがね、ゴーレムさんったら『自分は誰にも賭けたくありません』なんて言ったんだ」

「（ゴーレムさんはいわば当事者だもんね。ゴーレムさんって見るからに堅物だし、そんな八百長みたいなまねしないのも当然かあ）ゴーレムさん真面目そうだもんね。ギャンブルなんてやらないんじゃないかな」

「わたしもそう思ったし、みんなそう思ったみたい。ショウニンちゃんなんて『ゴーレムさんカタブツだなあ。人生もっと楽しまなきゃあ損だよ』なんてからかうのね」

「（ゴーレムさんがあたしのせいでみんなにからかわれてた、どうしよう）そ、そしたらどうなったの」

「ゴーレムさんが答えたの。『自分は、誰が犯人かはわからないままだと思います。リュウキシさんをかくまうと言うことは、厳密に言えばレトロゲームセカイのルール違反です。リュウキシさんは、そんなことをさせている人が誰かを自分から言うようなことはないと思いますし、思いたくありません。かくまっている人も、『俺がリュウキシさんかくまってたんだ』なんてペラペラ言うような人をリュウキシさんが頼ったとは思えません。リュウキシさんが頼るような人はきっと立派な人だと思います』ってね」

「（ゴーレムさんったら、あたしを評価しすぎだよ。あたしはそんな立派な人間じゃないんだから）へええ」

「さらにゴーレムさんが続けたの。『となると、犯人が明らかになるのは当局の捜査によるしかないと思いますが、魔王様もそんなことは命令しないと思います。魔王様は警察ではありません。真相が明らかにならないと判断すればそのまま謎は謎のままにするだけの度量を持った方だと自分は思います。ですから、自分は犯人が誰かはわからないままだと思いますし、その犯人当てに参加する気もありません』ってね。その言葉にみんな息を飲んだよ」

「ゴーレムさんがそんなことを』

「それで、その賭けの集まりは解散になったんだ。みんな心の中ではリュウキシさんをかくまっていた犯人が誰かなんて知りたくなかったんだろうね。ユウシャちゃんにはわたしがリュウキシちゃんの大ファンだって言ってたよね。そんなわたしが、そのリュウキシさんをかくまっていた人を競走馬みたいに見ていたんだから、自分が恥ずかしいの」

「（センシちゃん、その犯人はわたしなの。わたしはセンシちゃんがわたしのことで賭けで盛り上がってもぜんぜん大丈夫だよ。むしろ、謝るべきはあたしなんだから。でも、いまここでそれを言うわけにもいかないし、ああ、どうしよう）リュウキシさんはそのうちひょっこり顔を出すんじゃないかなあ。で、ゴーレムさんの言う通り犯人が誰かは迷宮入りで終わるんじゃないかな」

「ユウシャちゃんもそう思う？」

「思う思う」

「そうか、なんかごめんね、ユウシャちゃんに話聞いてもらっちゃって」

「そんな、ちっともかまわないよ」

「じゃあ、今回はこれでバイバイするね」

「うん、センシちゃんバイバイ」