第58話マホウツカイちゃんソウリョちゃんを賭けに誘う・ソウリョちゃんの部屋にて
「ソウリョちゃん。ちょっと見てほしいものがあるんやけどな」
「なんだマホウツカイちゃんか。で、見てほしいものってなんだい」
「それはね……これなんや」
「これは……ギャンブルのオッズじゃないか。なになに、『チキチキ、リュウキシさんはだれにかくまわれているでしょうか!』なるほどお、そう言うことか。マホウツカイちゃんがやりそうなことだね」
「せやろ。ドラゴンから人影が飛び降りたっちゅうことは間違いあらへん。ここレトロゲームセカイの警備は相当なもんやからな。その警備担当が言うんやら間違いないやろ。となると……」
「その人影はリュウキシさんで間違いないだろうね。でも、ならなんでそのリュウキシさんは姿を出さないのか。本来ならとっくの昔にファンに取り囲まれててもおかしくないのに」
「なにか姿を見せられへん理由があるんやろな。その理由はどうでもええけれど、問題は、はたしてリュウキシさん一人でその身を隠しきれるか、ちゅうことやな、ソウリョちゃん。おそらく無理や。なんぼリュウキシさんでもな。となると、だれか協力者がいることになる。それをみんなで当てあいっこしようっちゅう企画やな」
「で、魔法使いの取り分は? いくら巻き上げるつもりなの。ギャンブルはやるより開く方が確実に儲かるからね」
「人聞きの悪いことを言わんといてもらいたいなあ。このオッズ表も作るのにそれなりの経費がかかっとるさかい。せめて経費くらいは回収せんとな。企画、立案はうちで、運営はショウニンちゃんにやってもらっとる」
「手回しのいいことだね、まったく」
「それでなんやがな。ソウリョちゃんにはオッズの評価をしてもらいたいんや。なにせ、オッズ配当がお客さんがギャンブルを楽しんでもらうかの鍵やからな」
「いいけどね……ふむ。センシちゃんの配当がこんなに低いのは納得いかないなあ」
「やっぱりソウリョちゃんもそう思うか。ソウリョちゃんならそう言うと思っとったで」
「だって、センシちゃんはユウシャちゃんにぞっこんじゃないか。そりゃあ、センシちゃんは『わたしはリュウキシさんの大ファンなんだ』って言ってるけれど、それはユウシャちゃんに対する偽装だってことはマホウツカイちゃんも知ってるだろう? そんなセンシちゃんがリュウキシさんをかくまうことが絶対にないとは言い切れないけれど、ここまでガチガチのど本命になるとは思えないなあ」
「そこなんや、今回のキモは。うちがこのギャンブルを開こうと思った理由はな、金儲けがしたいと言う理由もあるんやけどな。このオッズ表を見てセンシちゃんがどんな反応をするかを見たいからなんや」
「なるほどお。センシちゃんのリュウキシ熱がカモフラージュだと言うことを知っている僕やマホウツカイちゃんからすればこの配当は不自然だけど、それを知らないユウシャちゃんからすればこの配当はちっともおかしくない。『そうだね、センシちゃんはあれだけリュウキシちゃんの大ファンなんだからかくまっていてもおかしくないよね』なんてユウシャちゃんが言うことも十分考えられるね」
「さっすがソウリョちゃんや。話がはよおて助かるわ。センシちゃんは、『いやいや、わたしはリュウキシさんをかくまったりしてないよ。なんでわたしが本命になるのさ』なんて言うやろうから、そこにうちがビシッと突っ込んだるんや『あれ、センシちゃんってリュウキシちゃんの大ファンだったよね。かくまってるかどうかはともかく、本命であることは不自然でもなんでもないと思うんだけどな』なんてね。ああ、考えただけでゾクゾクしてくるわ」
「そのためにわざわざこんなことをね。マホウツカイちゃんも物好きだねえ」
「笑いのためには努力を惜しまんと言ってほしいな。で、センシちゃんの配当が低いのはそう言うことやとして、これは利益度外視や。重要なのはそれ以外なんや。今回の収益はソウリョちゃんがどうオッズをつけるかにかかっているんやからな」
「なんだ。やっぱり金儲けに興味シンシンじゃないか、マホウツカイちゃんは」
「ソウリョちゃんはこういうの嫌いなんか?」
「嫌いとは言ってないよ。むしろ好きだね。しかしオッズ配当かあ。これは難しいなあ。お客さんを納得させて、それでいて利益が出るようなものにしないといけないからね。センシちゃんを本命として……対抗馬はやはりマオウちゃんかなあ。動機はともかく、リュウキシさんをかくまうとなるとそれ相応の権力というか手回しが必要になるからなあ。となると最高権力者のマオウちゃんと言うことに……」
「客を盛り上げるなら大穴も必要やで。こんな馬くるわけあらへんと思いつつも、ひょっとしたらと思いついつい馬券を買ってしまうロマンある競走馬が必要や。かと言って、みんながその大穴にかけて万が一その大穴が来てもうたらうちは破産や。そのへんのあんばいが難しいんやな」
「へへへ、マホウツカイちゃんも悪ですなあ」
「ひひひ、ソウリョちゃんにはかないまへんがな」
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