第57話ユウシャちゃんマオウちゃんに貸し借りなしと宣言される・マオウちゃんの部屋にて
「そこでだね、ユウシャちゃん。わたしがユウシャちゃんに『マオウちゃん、実は秘密にしてほしいことがあるんだけれど……』なんて相談してきてだね、そのユウシャちゃんのお願いを『いいよ、秘密にしておいてあげる』なんてわたしがかなえれば、これは貸し借りなしということになるんじゃあないかな。どうだい、それでもユウシャちゃんはわたしに何も言うことはないなかな」
「(間違いない。マオウちゃんは百パーセントあたしがリュウキシちゃんをかくまっていると確信している。そのうえで、あたしから白状するチャンスを与えてくれている。でも、でも……)ありません。あたしはマオウちゃんに何も隠したりなんかしていません」
「ほう、そうかい。ならその言葉を信じるとしようかね」
「(あーあ、せっかくマオウちゃんが自首のチャンスをくれたって言うのになあ。なんで秘密にしちゃうかなあ。でも、あたしは昔からのリュウキシちゃんファンだったからな。そのリュウキシちゃんにあそこまでされたら裏切れないよ。マオウちゃん怒るかなあ。怒ったマオウちゃんってどうなるんだろう。マッドドクターちゃんもマオウちゃんは絶対怒らせたくないって言ってたし……)って、『信じる』ですか? マオウちゃんいま『信じる』って言いました?」
「言ったよ、ユウシャちゃん」
「その、あたしが嘘ついたりしてるとは思わないんですか、マオウちゃん」
「思わなくもないんだけれどね。わたしがあそこまで言ったのに、それでもユウシャちゃんが知らないって言って、それが嘘なんだとしたら……それはユウシャちゃんにそこまでする何かがあるって言うことだからね。そのユウシャちゃんの気持ちを無下にはできないってことさ。犯人が誰かと言う謎が謎のまま終わるなんてのは、ミステリーとしてはダメだろうけれど、これはミステリーじゃないからね」
「は、はあ」
「それで、アイドルちゃんの一件でわたしはユウシャちゃんに借りがあると思っていて、それはユウシャちゃんがどう思うかの問題ではないと言った。でも、ユウシャちゃんがどうしてもと言うのならその借りをなかったことにしてもいい。いいかい、ユウシャちゃん。ユウシャちゃんがわたしに借りを返すんじゃあないよ。わたしが勝手に借りだと思っていることがなくなるんだ。それでいいかい」
「(それって、わたしがリュウキシちゃんをかくまっていることを白状しなくてもいい。マオウちゃんはリュウキシちゃんがわたしの部屋にいると確信しているけれど、秘密にしてくれることで貸し借りなしにしてくれるってこと?)は、はい。それでお願いします」
「なら今回のユウシャちゃんへの話はこれまでだ。ところで、ユウシャちゃんの個人的な意見でいいから聞かせてほしいな。リュウキシさんがここレトロゲームセカイに来ると言うのになかなか来ないことで多少の混乱が起こっている。その混乱はリュウキシさん本人がいないとおさまりそうもないけれど……どうかな、ユウシャちゃん。リュウキシさんはそのうちひょっこり顔を出してくれるかな」
「は、はい。そうなります……じゃなかった。あたしはそうなると思います」
「ユウシャちゃんがそうなると思うならそうなるんだろうね。これでわたしも一安心だ」
「は、はい、マオウちゃん、ありがとうございます」
「おや、わたしはユウシャちゃんに感謝されるようなことをしましたっけな。わたしがしたことといえば、わたしが勝手に感じていたユウシャちゃんへの借りを勝手になかったことにしただけなんだけどね。いいかい、ユウシャちゃんはこのマオウちゃんへの頼みごとをする権利を一つ失ったんだよ」
「はい、わかってます、マオウちゃん。でも、ありがとうございます」
「まあ、ユウシャちゃんがそう言うのなら、『どういたしまして』と言っておこうかね。わたしとしては、ユウシャちゃんのお礼の言葉よりも、ユウシャちゃんがわたしをタイマンで殺せるくらい強くなってくれる方がありがたいんだけどね」
「うう、それはその、前向きに善処します」
「ちなみに、ユウシャちゃん。レトロゲームセカイ上空で観測されたドラゴンがリュウキシさんのドラゴンだとしたら、そのドラゴンは今頃困っているだろうねえ。なにせ肝心のリュウキシさんが落ちたっきりなんだから。でも、わたしもレトロゲームセカイの管理人として、上空をドラゴンにうろうろされることを黙って見逃すわけにはいかない。もちろん、わたしはリュウキシさんが入居することをドラゴンもレトロゲームセカイに迎えることをコミとして考えている。あとはそれがドラゴンに伝わるかどうかだけれども……」
「きっと伝わると思います。リュウキシちゃんがどこにいるかはわからないけれども、マオウちゃんがドラゴンさんのことをそう考えていらっしゃると言うことは、リュウキシさんを通してドラゴンさんにきっと伝わると思います」
「それならよかった。これでわたしも上空のドラゴンをやっつけずにすむ」
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