第49話アイドルちゃんマオウちゃんにうろたえられる・マオウちゃんの部屋にて
そわそわ
「いまごろ、アイドルちゃんユウシャちゃんやモンスターマスターちゃんと楽しくお話ししているのかな。いいなあ。うらやましいなあ。やっぱり会っておけばよかったなあ。だめだめ、何を考えているの、マオウ。わたしは魔王なのよ。そんなわたしが、大ファンのアイドルちゃんに会ったらどうなっちゃうかわかったものじゃないんだから。ほら、わたしにも威厳ってものがあるし……これでよかったのよ」
こんこん
「はーい、ノックするのは誰ですか。このマオウ様を殺しに来た誰かさんですか、それとも、毎朝恒例のレトロゲームセカイ体操になにか不満でもあるんですか。今ドアを開けますよっと。ふいうちやみうち大歓迎なんですけどね。ちなみに、わたしはいとしのアイドルちゃんの写真を見て物思いにふけっていたところを中断されて不機嫌なんだよ。戦闘したいというのなら、そのあたりわきまえてくださいね」
ガチャ
「あの、わたしアイドルなんですけれども。何かしてらしたんですか。今回ここレトロゲームセカイにお邪魔させてもらったお礼を言いに来たんですけれども」
「ア・イ・ド・ル……さん。なぜあなた様がこのようなところに。何かしてたって……なにもしていませんでしたわ」
「なぜと言われましても……本来わたしみたいな現役世代はここには入れないところを、無理にお邪魔させてもらったことですし。なんでも、魔王さんがここの最高権力者だそうで。ぜひあいさつをしておかなければいけないと思いまして」
「い、いやだわ、最高権力者だなんて。誰がそんなことをおっしゃいましたのかしら」
「ユウシャさんがそう言ってました」
「ユ、ユウシャちゃんがそうおっしゃいましたの。まったく、事実無根もいいところですわ。ほほほ。なにかお飲みになさるかしら。お茶かしら、コーヒーかしら」
「あ、いえ、おかまいなく……あの、魔王さん手元に何か握りしめていらっしゃるようなんですが……」
「こ、これですか……なんでもないのよ」
じゅっ
「(魔王さんの手元にあった写真らしきものがあっという間に跡形もなく消え失せた。やっぱり怖い人なんだな)その、たいへんぶしつけなお願いなんですが。今回に引き続き、モンスターマスターさんやユウシャさんのお話をうかがいたいので、たびたびここレトロゲームセカイに来させてもらってもいいですか」
「今回に引き続き! たびたび!」
「まずいですか、魔王さん」
「全然! ちっとも! わたくしマオウはアイドル様を大歓迎いたしますわ。そ、それで今回のアイドル様のご招待になにか不手際はございましたでしょうか。やはり、アイドル様のお出迎えとなると、わたくしマオウめの配下を勢揃いさせなければいけなかったでしょうか」
「そんな、とんでもない。むしろそこまで大ごとにされるとこちらとしても都合が悪いと申しますか、できればお忍びでお願いしたいと言いますか」
「そ、そうですよね。わたしったらなにを言ってるんでしょうね。」
「それで、瞬間転移の着地地点なんですが、どこにしたらいいですか。着地先をどこにするかは魔王さんの考えを聞いておいたほうがいいと思うんですが」
「(アイドルちゃんが瞬間転移でやってくる! もし、その着地地点をこのマオウのプライベートスペースにしたとしたら……わたしが着替えている時とか、お風呂に入っている時とか、あまつさえセクシーなネグリジェ姿でベッドに入っている時とかにアイドルちゃんが瞬間転移してきちゃうってことになるの? そんなことのなったら……マッドドクターちゃんのことなんて頭から吹っ飛んじゃうかのしれないじゃない)」
「あの、どうかされましたか、魔王さん」
「瞬間転移の着地地点ね。それは……モンスターマスターちゃんの部屋の前でいいんじゃないかな。そうね、それが一番いいわ(これでいい。これでいいのよ、マオウ。やはりマッドドクターちゃんは裏切れないわ)」
「そうですか。そうですね。あそこならいろいろありましたからイメージしやすいですし」
「(いろいろ! いろいろって何があったというの? アイドルちゃんとユウシャちゃんとモンスターマスターちゃんの間に何があったというの?)そうでしょう。そうでしょうとも」
「それでは、なにかとお世話になりました、魔王さん。それでは今後ともここレトロゲームセカイに来た折にはあいさつさせていただきますので、よろしくお願いします」
「(来た折には! これから何回もアイドルちゃんに会えるというの? わたしの体と精神持つかしら)そうね、そうしていただければ、モンスターマスターちゃんやユウシャちゃんも喜ぶと思うわ」
「それでは、今日のところはこれで失礼させてもらいます、魔王さん」
「(今日のところこのくらいにしないと。初めてなんだからこのくらいがちょうどいいんだよね)本日はわざわざおこしいただいてありがとうございました」
「そんな、わたしこそ招待いただきありがとうございました」
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