第46話アイドルちゃんモンスターマスターちゃんに説明される・モンスターマスターちゃんの部屋にて
「そ、それでどうなったんですか、モンスターマスターさん」
「どうなったって……ああ、もう演技は終わったんですね、アイドルさん」
「そ、そうです。演技はもうおしまいです。それで、そのナーススライムさんはそのあとどうなったんですか?」
「たしか、しばらくしたらこっそりわたしたちの後ろをついてきましたわ。もうひとかたリビングアーマーさんとごいっしょに。後から話を聞いたんですけどね、そのリビングアーマーさんがナーススライムさんに『お前みたいな弱虫は引っ込んでろ』なんて言ったモンスターさんだったそうなんですよ。お二人はいつもいっしょでいらしたのよ。とっても仲良しさんだったのねえ」
「後から話を聞いたってことは、そのナーススライムさんとリビングアーマーさんはモンスターマスターさんの仲間になったということなんですか?」
「そうなのよ。それからしばらくしたら、わたしたち戦闘で大ピンチになってしまいましてね。そこにナーススライムさんとリビングアーマーさんがさっそうと登場してくださってね。『まったく人間っていうのも、その人間なんかと仲間になるモンスターも弱っちいなあ』なんて言いながらリビングアーマーさんが敵をやっつけてくださって、ナーススライムさんがわたしたちを回復してくださったのよ」
「そ、そうだったんですか」
「それでね、リビングアーマーさんったらおかしいの。『俺はべつにどっちでもいいけど、ナーススライムがお前らといっしょにいたいって言うからしかたなくてさ』なんて言うのよ。そのくせ、戦いになると真っ先に飛び出していつも自分が一番怪我しちゃうのよ。それで回復するナーススライムさんにいっつも愚痴られてるの。『なんでリビングアーマーが特攻隊長みたいになってるのさ。これじゃあ、俺たち二人だけの頃の方が怪我が少なかったんじゃあないのか』ってね」
「それは、なんと言いますか」
「そしたらね、リビングアーマーさんったらこうなのよ。『うるせえな、俺はいいんだよ。お前が回復してくれるからな。そもそもお前は俺以外のやつにろくに回復魔法使ったことないじゃねえか。ガキの頃から、俺以外のやつとはまともに話もできなかったくせに。だいたい、お前はすぐにけんか腰になるからいけねえんだ。あれじゃあ、人間はおろかモンスターだってお前とは仲良くしたいとは思わないぜ』なんてね」
「ほうほう」
「で、ナーススライムさんが言い返そうとしたら、リビングアーマーさんが間髪入れずにこう言っちゃうのよ。『俺は俺で、口と手が同時に出るタイプだからな。事あるごとにモンスターどうしでケンカばっかりよ。そんな俺とつきあえるのはお前くらいのもんだからな。お前は俺みたいに口が悪くて、そのうえケンカになってもお前の回復魔法であとくされがないからな。だから戦闘でも、俺がダメージを受ける。お前が回復する。それでいいんだ。そんなお前が、人間と旅したいなんて言うなら、俺もその人間と旅するしかないだろう』だって」
「すごいですねえ」
「そしたら、ナーススライムさんがこうなのよ。『いやいや、人間と旅したいて言ったのはリビングアーマーの方じゃないか。そこまで一緒に居たいって言う人間ってのはどんなやつなんだ。興味が出てきたぞ。見に行くか。よし、お前もついてこいって言ったんだぞ』ってね。そしたら、リビングアーマーさんがこう返事するのよ。『そうだっけ、まあどっちでもいいじゃねえか。俺たちコンビはいつでも最強なんだから』ってね。ああ、おかしい」
「たいしたもんですねえ」
「そうなのよ、アイドルさん。ナーススライムさんもリビングアーマーさんもすごいんだから」
「いや、わたしがほめたのは、モンスターマスターさんのその記憶力ですよ。よくもまあ、そこまでナーススライムさんとリビングアーマーさんが仲間になったときのことを事細かに覚えていられますね」
「だって、ナーススライムさんもリビングアーマーさんも本当にステキなんですもの。そんなステキな方のことはそりゃあ印象に残るから、覚えているわよ。あら、いけない。すっかり話が長くなっちゃったわね。アイドルさんもお急がしいでしょうからね。それにファンの方もいっぱいいらっしゃるでしょうから、わたしばっかりアイドルさんを独り占めしちゃバチが当たるわよね」
「たしかに、スケジュールはかつかつと言えばそうなんですが……」
「やっぱり。名残惜しいし、話したいモンスターさんのことも他にいっぱいあるんだけど、アイドルさんみたいな人間がいつまでもこんなところにいてはいけないわ。アイドルさんは今を生きる現役のお人なんですから、とうの昔に引退したわたしみたいな人間にいつまでもつきあってちゃあいけません」
「で、ですが……」
「ごちゃごちゃ言わないの。人生の先輩の言うことは聞くものよ。アイドルさんを待ってる人のところに早く戻りなさい」
「わ、わかりました。それでは失礼します、モンスターマスターさん」
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