第43話ユウシャちゃんモンスターマスターちゃんをなだめる・モンスターマスターちゃんの部屋にて
「いやあ、モンスターマスターちゃん。アイドルちゃんってのは本当にかわいらしい女の子だよねえ。あたしも一目見てファンになっちゃったよ。ぜひともアイドルちゃんの演技を見たくなっちゃったよ」
「そうですか、それはよかったですね、ユウシャちゃん。それじゃあ、アイドルちゃんにユウシャちゃんの若い頃を演じてもらったらいいんじゃないかしら。アイドルちゃんもそれをお望みみたいですし」
「そんなこと言わないでよ。アイドルちゃんはここにモンスターマスターちゃんの話を聞きにきたんだからさ。そんな、アイドルちゃんにわたしの若い頃を演じさせるなんて割り込むようなまねはできないよ」
「でも、アイドルちゃんはユウシャちゃんのファンみたいじゃないですか。ユウシャちゃんもアイドルちゃんのファンになったみたいだし、ファンはファン同士仲良くおやりになったらよろしいんじゃないですか。なんなら、わたしが席をはずしましょうか」
「そんなことしなくてもいいよ、モンスターマスターちゃん。たしかにあたしはアイドルちゃんの演技が見たいとは言いましたけれど……どうせなら一人芝居より相手のいる演技が見たいなあ。そうだ、モンスターマスターちゃんがアイドルちゃんの相手役をやってよ」
「わ、わたしがアイドルちゃんの相手役を? でも、わたし演技なんてできないわ」
「モンスターマスターちゃんが演技なんてする必要はないんだよ。モンスターマスターちゃんは、モンスターを仲間にするときのモンスターマスターちゃんをそのままやってくれればいいの」
「どういうこと? ユウシャちゃん」
「あたしはね、一度でいいから、モンスターマスターちゃんがどんなふうにモンスターを仲間にするところ見たかったの。それで、モンスターマスターちゃんがいつもやってるみたいにモンスターを仲間にするところを再現してくれたらうれしいんだけど……アイドルちゃんがモンスター役ってことで」
「アイドルちゃんがあたしの仲間になるの?」
「そう、そういうこと、モンスターマスターちゃん。どんなモンスターがいいかな? アイドルちゃんにはどんなモンスター役が似合うかな?」
「アイドルちゃんがモンスター役……アイドルちゃんのかわいらしさを生かすとしたら、モーグリかしら。可愛いモンスターといえば、なんといってもモーグリよねえ」
「アイドルちゃんがモーグリ! いいじゃない、モンスターマスターちゃん。アイドルちゃんが『なになにクポ』なんていうところを想像しただけでキュンキュンなっちゃうもんね」
「でも……あえてギャップを出すというのもいいかも……となると凶悪なイメージのモンスターってことに……オーガなんてどうかしら」
「オーガ! そんな役柄もありね、モンスターマスターちゃん。これだけかわいいアイドルちゃんが『貴様ら全員、死体すら跡形もなくしてくれる』なんて言っちゃうのかあ。これはすごいことになりそうね」
「無邪気な幼さを表現するとういことでは、ベビーデビルなんてどうかな、ユウシャちゃん。アイドルちゃんが強力な破壊呪文を使おうとするんだけど、魔力が足りなくて使えないの。魔法が失敗してあたふたするアイドルちゃんって見たくない?」
「見たい見たい、さすがモンスターマスターちゃんだね。次から次へとよくそんなにアイデアがわくね。あれだけたくさんのモンスターを仲間にしているんだもん。モンスター関係と言えば、モンスターマスターちゃんだよね」
「天使のようなアイドルちゃんに、悪魔を演じさせるのなんての思いついちゃった。ルシフェルなんてモンスターがいるんだよ。元々は天使だったんだけど、堕天して悪魔になっちゃったの。そんな二面性をアイドルちゃんが演じるの。どうかな、ユウシャちゃん」
「堕天? なにそれ、そんなモンスターがいるなんて聞いたこともなかった。そのルシフェルっていうあたしが見たことないモンスターをアイドルちゃんが演じちゃうの? そんなの、面白くになるに決まってるじゃない」
「ううん、アイドルちゃんにどんなモンスター演じてもらおうかな。候補がありすぎて選ぶのに困っちゃう。それもこれもアイドルちゃんが魅力的すぎるからいけないんだろうね。まったくもう、こんなに悩むのなんて、仲間のモンスターが多くなりすぎてレギュラーメンバー選ぶとき以来なんだから」
「そ、それでモンスターマスターちゃんはアイドルちゃんにどんなモンスターを演じてもらうの」
「どうしようかな、よし、決めた。アイドルちゃんにはナーススライムさんを演じてもらおう。ナーススライムさんってね、戦いで傷ついたわたしの仲間モンスターを回復してくれてたのよ。それが出会ったきっかけだったの。でも、その時わたしは戦いの巻き添えで気を失っちゃってたのね。そして、わたしが目を覚ましたらナーススライムさんもわたしに気づいて驚いちゃったみたい。『人間だ、どうしよう』って。懐かしいなあ」
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