第42話ユウシャちゃんアイドルちゃんに感激される・モンスターマスターちゃんの部屋にて
コンコン
「あの、すいません、あたしアイドルです。モンスターマスターさんがここにいるとうかがってきたのですが」
「あ、アイドルちゃんが来たみたいだよ、モンスターマスターちゃん。え、なに? 恥ずかしくてとても出迎えなんてできない? でも、アイドルちゃんはモンスターマスターちゃんと話をしにきたのに……あたしがアイドルちゃんをでむかえるんですか? まあいいですけれど……モンスターマスターちゃんったら、ドラゴンやベヒーモスなんて強いモンスター引き連れてたのに……アイドルちゃんと会うのがそんなに照れくさいのかな」
コンコン
「モンスターマスターさん、いらっしゃいますか」
「はーい、いま開けますよ」
ガチャリ
「これはどうも。わたし、アイドルです。今回はモンスターマスターさんの話をうかがわせてもらうということで……」
「はい、事情は聞いています」
「あの……そちらがモンスターマスターさんですか? なんだか聞いていた話とは雰囲気が違うような……」
「あ、いえ、あたしはモンスターマスターちゃんではなくてですね……今回はアイドルさんとモンスターマスターちゃんにお話の見届け役をすることになりましたユウシャでありまして……」
「ユウシャさん! そうです、ユウシャさんです。どこかで見た顔だと思ってたんです。あたし、ユウシャさんの大ファンなんです。ユウシャさんの活躍は何度も耳にしていました。ユウシャさんのことが記事になっている本も何冊も読みました。あたし、ユウシャさんの冒険を演じられたらって、ずっと思ってたんです。なんでユウシャさんがこんなところにいるんですか」
「そ、それはどうもありがとうございます。あたしがここレトロゲームセカイにいるのは、魔王城でマオウちゃんと戦っていろいろあったからで……」
「ユウシャさんが魔王と戦ったんですか! なんですかそれ? そんな話聞いたことありません。その話、ぜひ聞かせていただけませんか」
「いや、いきなりそんなこと言われても……あ! ちょっとアイドルさん」
「なんですか、ユウシャさん。急にひそひそ声になっちゃったりなんかして」
「ひそひそ声になりますとも。アイドルさん、あそこに聖母のような女の子がいるでしょう。でも、少しむくれている感じの。ふてくされてあらぬ方向を見ている女の子」
「そういえばいますね……ひょっとしてあの女の子が……」
「そう、あの女の子がモンスターマスターちゃんなんだよ、アイドルさん。ほら、見てよ、自分に会いにきたと思ってたアイドルさんが、『ユウシャさんののファンです』なんて言ったうえに、モンスターマスターちゃんを演じるアイドルさんが『ユウシャさんを演じたい』なんて言っちゃったんだよ。そりゃあご機嫌ナナメにもなっちゃいますよ」
「し、しかしですね、こんなところであこがれのユウシャさんに会えるとは思いもしなかったものですから……」
「その気持ちはうれしいけどね、アイドルさん。時と場所がまずいことこの上なかったと言いますか……」
「あ、ユウシャさん。モンスターマスターさんがこっちをちらっと見ましたよ。と思ったらすぐにそっぽを向いちゃいました。どう言うことなんでしょうか、ユウシャさん」
「それはね、きっとモンスターマスターちゃんは『せっかく会いにきてくれたアイドルさんと、わざわざ見守りにきてくれたユウシャちゃんを無視するようなまねして、二人に不愉快な思いをさせちゃってるんじゃないかな』って心配になっちゃったのよ。モンスターマスターちゃんはそんなふうに他の人のことをきちんと考えられる女の子なんですよ」
「なるほど、それがモンスターマスターさんがこっちをちらっと見た理由なんですね。では、なんですぐにそっぽを向いちゃったんでしょうか」
「それはね、あたしとアイドルさんの二人がちっとも怒ってなくて、それどころか、モンスターマスターちゃんに気を使い始めたとわかったら、安心したんですよ。モンスターマスターちゃんは、あたしたちが怒っちゃったら自分が怒っちゃいけないとわかってるんです。そうなったら、けんかになっちゃいますからね。でも、あたしもアイドルさんもモンスターマスターちゃんを心配している。それで、心置きなくふてくされていると言うわけです」
「すごいです、ユウシャさん。なんでそこまで人間の心のことがわかるんですか。あたし、モンスターマスターさんがそんなことを思っているなんてちっともわかりませんでした」
「そのくらいは、何年も勇者をやっていればわかるようになりますよ」
「さすがユウシャさん。あたしみたいな若者にはそんなことできそうにありません。それで、これからあたしたちはどうすればいいんでしょうか」
「これからって……しょうがない、アイドルさんにも一つ協力してもらいますよ。こうなった原因の一つはアイドルさんにあるんですから」
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