第41話ユウシャちゃんモンスターマスターちゃんと打ち合わせする・モンスターマスターちゃんに部屋にて

「ねえ、ユウシャちゃん。アイドルちゃんってかわいいわよねえ。わたしね、仲間のモンスターさんたちといっつもアイドルちゃんの本見て『かわいいかわいい』言ってるのよ」


「そ、そうなんですか、モンスターマスターちゃん。それで、アイドルちゃんとはどんなお話をするつもりなんですか」


「それなんだけどね、ユウシャちゃん。まず、ユウシャちゃんをアイドルちゃんと思ってわたしが昔の話をするってことでいいかしら」


「はあ、モンスターマスターちゃんの昔の話なら、あたしも興味がありますし……じゃあその設定でいきましょうか」


「初めてわたしの仲間になってくれたのはスライムさんだったわね。別にわたしがスライムさんと戦って倒したわけじゃないのよ。たまたまスライムさんと出会ってね、わたしびっくりしちゃって動けなかったの。そしたらスライムさんもわたしを襲ったりなんかしなかったのね。スライムさんも人間と戦うのが嫌だったみたい。そのまま二人で見つめ合ってたら、なんだかいっしょに旅しようかってことになっちゃったの」


「スライムかあ。あたしもスライムには苦労させられたなあ。最初に戦うモンスターといえばスライムだけど、だからと言って簡単に勝てる相手じゃないのよねえ。なにせ、服を溶かしてきちゃうんだから。冒険はスタートしたばっかりだから、装備も布の服とかだし、簡単にドロドロになっちゃうのよね。でもそのスライムが仲間になるんだから、これは心強いわよね。だけど、モンスターマスターちゃんって別にモンスターを倒して仲間にするわけじゃないんだ。なんだか意外」


「そんな、わたしにはモンスターさん倒すことなんてできないわ。でも、ユウシャちゃん。アイドルちゃんってスライムと戦ったことあるかしら」


「それは……スライムと戦ったことがある人間ばかりとは限らないかな。話を聞くとアイドルちゃんってのは役者さんみたいなものらしいし、だったら戦闘自体したことないのかも」


「だったら、最初に仲間になったのがスライムさんって聞いて、そのスライムさんとの戦闘の思い出をアイドルちゃんが話すのはおかしいんじゃない」


「あ! それもそうか。いけないいけない。今のあたしはアイドルちゃんなんだった。ついつい素のユウシャちゃんの反応をしちゃった」


「それじゃあ、次の話に行くわね。その仲間になってくれたスライムさんが、今度はゴブリンさんと戦ってくれたのね。そのゴブリンさんも、味方のはずのモンスターのスライムさんが自分に襲いかかってくるからびっくりしたんじゃあないかしら。そしたら、ゴブリンさんが不思議そうな目でわたしを見てくるのね。『この人間はいったいなんなんだ。なんでスライムが人間の味方をしているんだ』みたいな感じで。そしたら、わたし言っちゃったのね『いっしょに来ませんか?』って。そしたらゴブリンさんはいっしょに来てくれたの」


「ゴブリンかあ。スライムは野生のモンスターって感じがするけど、ゴブリンは魔王軍の兵隊さんって感じなんだよねえ。したっぱのゴブリンの上にはゴブリンの上司がいて、その上司の上にはさらにまた偉いゴブリンキングがいるってイメージかなあ。なんかこう、戦っててもゴブリンの集団が陣形組んでたりするし」


「ユウシャちゃん。アイドルちゃんがゴブリンの一般的なイメージを話すのはいいとしても、戦った時の感想を言うのは……」


「へへへ、まいっちゃうなあ。なにせ、演技なんて初めてだから。どうしても素の自分が出ちゃうんだよねえ」


「それにしても、不安だわ。アイドルちゃんと二人っきりになっちゃったら、とてもじゃないけど何話していいかわからないわ。だって、アイドルちゃんったらあんなにかわいらしいんだもん。そうだ、ユウシャちゃん。いっしょにいてくださるかしら」


「は、はあ。マオウちゃんにもそう頼まれましたし、最初からそのつもりでしたけれど……」


「そうだったんですか、ユウシャちゃん。マオウちゃんがそんな頼みをしていたんですか。さすがマオウちゃんね。わたしがアイドルちゃんと二人きりになったら緊張してろくな話ができなくなることがわかってたのね」


「そ、そうなんじゃないかな(モンスターマスターちゃんとアイドルちゃんの間にあやまちが起こらないように見張りを頼まれたことは黙っていよう)」


「ユウシャちゃんがいっしょにいてくれるならこんなに心強いことはないわ。それにしても、アイドルちゃんとのお話にユウシャちゃんがいてくれるだけでこれだけ安心するのなら、ユウシャちゃんとわたしがパーティーを組んで冒険したらどうなっちゃうのかしらね」


「モンスターマスターちゃんとパーティーをですか? でも、そうなるとモンスターマスターちゃんの仲間のモンスターさんともいっしょになるってことですよね。ちょっと不安になっちゃうなあ」


「あら、ユウシャちゃんならわたしの仲間のモンスターさんもきっと歓迎するわ。それに、ユウシャちゃんといっしょに冒険するってことは、センシちゃんにソウリョちゃん、それにマホウツカイちゃんもいっしょってことじゃない。きっとすてきな冒険になるわ」

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