第34話ユウシャちゃんモンスターマスターちゃんとレベルについて話す・ユウシャちゃんの部屋にて
「ううう、あれからモンクちゃんに何時間も話を聞かされちゃったよ。ナイトちゃんがあんなに厳しい特訓をしていたなんて知らなかったよ。あんな特訓をしなければ両手持ちができないなら、あたしが両手持ちをマスターできなかったのも当然だよね」
「ずいぶんとモンクちゃんに熱弁をふるわれたみたいですね、ユウシャちゃん」
「そうなの……わ! モンスターマスターちゃん、いつからいたの?」
「そうね、モンクちゃんがユウシャちゃんにナイトちゃんがいかにして両手持ちをマスターしたかについて説明しているのを、おもしろく見物させてもらっていたわ。話の内容もだけど、モンクちゃんが嬉々としてナイトちゃんについて話していることとか、ユウシャちゃんがそのモンクちゃんのナイトちゃんラブラブっぷりに、ちょっととまどっていることとかもとっても面白かったわ」
「そうだったんだ。それにしても、なんで本では修行について書かれていなかったんだろう」
「実はね、ユウシャちゃん。わたしね、冒険していた頃に何人かに弟子入り志願をされたことがあるのよ」
「へえ、そうなんですか。モンスターマスターちゃんともなれば、弟子入り志願者の一人や二人くらいいてもおかしくないですもんねえ。それで、そのお弟子さんはどうなったんですか」
「すぐに逃げ出しちゃったわ。なんでも、『勝手にモンスターが仲間になってくれるなんて、すぐに俺つええになっちゃうじゃん。やっべ、俺のチート人生始まっちゃう』と思ってたけど、『なにがモンスターマスターだよ。モンスターのお世話だなんて、こんな面倒臭いことやってられねーよ。スキルがいつのまにか身についてたり、モンスターを奴隷のようにこき使えるんじゃないのかよ』と言うことらしいわ。言っていることは半分もわからないけれど、どうも強いモンスターが仲間になれば、自分も強くなった気になれると思ってたんじゃあないかしら」
「たしかに、モンスターを仲間にできるなんてことが他の誰かに簡単にまねできるとも思えないし……でも、自分から『弟子にしてください』って頼んどいて、そんな捨てゼリフでやめちゃったんですか。モンスターを仲間にするってことを、どう思ってたんでしょうねえ」
「おかしいわよね、ユウシャちゃん。わたしには強いモンスターの仲間が何人もいるけど、だからってわたしが強いと言うことではないのにね。わたしは自分がレベルアップできないけれども、仲間のモンスターがレベルアップして強くなってくれるからそれで十分なんだけど、今の若い子は自分も強くならないと満足できないみたいね。そういう意味では、自分が戦って自分がレベルアップして強くなるユウシャちゃんがうらやましいわ」
「そ、そんなあたしがうらやましいだなんて……あたし程度の人間なんんていくらでもいますよ。モンスターを仲間にしちゃうモンスターマスターちゃんのほうがよっぽどすごいです」
「あら、わたしもユウシャちゃんもお互いがお互いをうらやましく思っていたのね。なんだか変な話ね」
「いえ、あたしなんてまだまだで……」
「でも、わたしがレベルアップできないからそう思うのかもしれないけれど……わたしの元お弟子さんね、ちゃんと経験を積めばちゃんとレベルアップする素質はあったと思うのよ。だけど、今の子はそれじゃあ嫌みたいね。何かのきっかけでふとしたひょうしに、どっかんと強くならないと我慢できないのね。だから、こつこつ経験値を貯めるってことができないみたい。もったいないわよね。せっかくレベルアップできる素質があるって言うのに」
「レベルアップできる素質ですか……」
「そうよ、ユウシャちゃん。もちろんユウシャちゃんにもそれがあるわ。だから、ここレトロゲームセカイに住むようになっても、きちんと修行してればいつかはマオウちゃんを倒せるようになるかもしれないわね。マオウちゃんのお望み通りに。ほら、ここには私の仲間以外にも、いっぱいモンスターさんがいらっしゃるじゃない。殺し合いはわたし好きじゃないけど、修行だったらユウシャちゃんの戦闘につきあってくれる相手にはこと欠かないんじゃないかな」
「いつかはマオウちゃんを倒せるようにかあ」
「もちろん。それに修行相手ってのはなにも敵役のモンスターさんだけじゃないよ。ユウシャちゃんの戦闘訓練につきあってくれるパーティーメンバーだってユウシャちゃんにはいるんじゃないのかな」
「そっかあ、そうだよね、いままで戦闘漬けだったから、急に戦うの辞めちゃったらかえって体に悪いかもしれないし……訓練くらいはしておいたほうがいいのかな」
「人間のパーティーメンバーか。わたしにはそういうのいなかったけど、なんだか素敵ね、ユウシャちゃん」
「そっか、なんだか一人旅してたモンスターマスターちゃんの気も知らないであたし悪いこと言っちゃったかな。ほかの女の子誘っちゃおだなんて」
「いいのよ。わたしにはモンスターさんって言う素敵な仲間がいるんだから」
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