第31話ブトウカちゃんセンシちゃんとパーティー人数について語る・ブトウカちゃんの部屋にて

「それにしても……」


「どうしたんでしょうか、ブトウカちゃん。なにかお気になることがおありになるんでしょうか」


「いや、べつにそこまでかしこまらなくていいよ、センシちゃん。正直気持ち悪い。それはともかく、マオウちゃんは多勢に無勢ってことをどう考えているのかなあと思ってさ」


「どういうこと?」


「それはね、センシちゃん。一対四くらいの数の差なら、マオウちゃんは問題にしないどころか、歓迎してるよね。ユウシャちゃんたちが四人でマオウちゃんと戦った時は大喜びでワンターンキルしたそうじゃない」


「はい、ワンターンキルされて、ここレトロゲームセカイで生き返らせてもらいました」


「じゃあ、一対五ならって話になるんだよ、センシちゃん。わたしも、ユウシャちゃん、センシちゃん、ソウリョちゃん、マホウツカイちゃんとの五人で戦ってみたいていう気持ちはあるんだよね。それでもマオウちゃんが圧勝することには変わりないと思うんだけれど」


「ああ、またあのブレスと全体魔法の連続攻撃を喰らわせるのは勘弁してもらいたいなあ。いくらいくらでも生き返らせてもらえるといってもなあ」


「センシちゃんの心に刻まれたトラウマは置いとくとして、じゃあ、一対十なら? 一対二十なら? って話になるんだよ。最近じゃあ、ひとりの敵を数十人単位で集中砲火することもよくあるって話じゃないか。それをマオウちゃんはどう思うのかって話になるんだよね」


「数十人もいっぺんに戦うのかあ。かえって戦いにくそうな気もするけどね、ブトウカちゃん」


「マオウちゃんは、戦いに美学とかエチケットとかを求めるタイプみたいだからね。普段はレトロゲームセカイにあるふつうの家に住んでいるくせに、戦闘となるとおどろおどろしい魔王城におもむくんでしょう? そんなマオウちゃんはいきなり数十人単位で攻め込まれたらどう思うのかなって」


「そういえば、王様に『魔王倒してこい』って命令された時にちょっと思っちゃったんだ。『なんで国家が軍隊を魔王城に派遣しないの』って」


「それは、人間サイドとモンスターサイドが裏で繋がっているからだろうね。マオウちゃんは、少人数での戦いを楽しみたい。わたしたち人間サイドのお偉いさんは正規軍は国家同士の争いのためにとっておきたい。なんてお互いに考えていて、その利害関係ががっちりハマった結果、わたしたちみたいな余り物を体良く冒険者として魔王征伐に送り出しているんだろうね」


「わたしたちは余り物かあ。なんだか嫌な話だね、ブトウカちゃん」


「お偉いさんにとって、平民なんて家畜みたいなものだからね。だからこそ、冒険者がギルドなんてものを作って一致団結していることを苦々しく思っている連中も大勢いるんじゃないかな」


「例えば?」


「マオウちゃんはうぞうむぞうが大挙して魔王城に押し寄せたら嫌だろうね。風情もなにもあったものじゃないからね。それに、わたしたち人間のお偉いさんも冒険者に団結されて、反乱されたらたまったものじゃないだろうね。となると、ここレトロゲームセカイはそんな最近のギルドなんて作ってる冒険者連中への対抗勢力なのかもしれないね」


「えええ、ブトウカちゃん。わたしたち、今時のヤングな冒険者を殺すために集められたっていうの?」


「まだそうと決まったわけじゃないよ、センシちゃん。これはあくまでわたしの想像だからね。それに仮に対抗勢力だとしても、なにも殺すだけが手段じゃないさ。ここレトロゲームセカイにも一大勢力があるぞて事実だけで冒険者ギルドへの牽制にはなるだろうからね。マオウちゃんはここの存在は極秘だなんていってるけれど、そんなのわかったものじゃないからね」


「なんだか、わたし裏切られた気分だよ、ブトウカちゃん」


「だから、これはただのわたしの想像だってば、センシちゃん」


「いやそうじゃなくて、ブトウカちゃんもわたしと同じで前衛物理攻撃タイプでしょう。だったら、知性や賢さのステータスは低いってのがお約束じゃない。それなのに、そんな難しいこと考えてたなんて……ブトウカちゃんはわたしと同じで脳みそまで筋肉でできてるタイプだと思ってたのに」


「そっちだったの、センシちゃん。でも、センシちゃんの脳みそは筋肉でできてるというよりも、ユウシャちゃんへのラブで詰まってるといったほうが正確なんじゃあないのかなあ。白状しなよ。ここレトロゲームセカイでユウシャちゃんとまったり過ごせて嬉しいんでしょう。そういえば、マオウちゃんとマッドドクターちゃんは結婚しているそうだねえ。モンスターと人間、その上女の子同士。これは禁じられたタブーこの上ないね。特に、センシちゃんは女の子同士というところに興味が深々なんじゃないのかな」


「絶対ユウシャちゃんには内緒にしておいてよ、ブトウカちゃん」


「わかってるよ。そのほうがのちのちセンシちゃんを利用できそうだしね」

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