第28話センシちゃんブトウカちゃんと再会する・ブトウカちゃんの部屋
「やれやれ、いいタイミングでセンシちゃんが来てくれて助かったよ」
「それはどうも、ブトウカちゃん。まったく、あばれるユウシャちゃんを落ち着かせるのは一苦労だったよ」
「ああなったらユウシャちゃんはちょっとやっかいだからねえ。わたしとセンシちゃんの二人掛かりでやっとだったね。村でいちにを争う力自慢のわたしとセンシちゃんが二人してかからないと手に負えないんだから。いやいや、ユウシャちゃんの潜在能力ってんもはおそろしいねえ」
「そうだね、ブトウカちゃん。でも、そのユウシャちゃんも落ち着いたみたいだし、こうして二人で再会を喜ぶのも悪くないんじゃないかな」
「それにしても……はがねのよろいを脱ごうとするユウシャちゃんとはがねのよろいを脱がさせないとするわたしがくんずほぐれつしているところに、たまたまセンシちゃんは出くわしたわけだけど、よく誤解しなかったね。あの状況だったら、いやがるユウシャちゃんをわたしがむりやりてごめにしようとしていたと早合点してもおかしくはないんじゃない」
「ブトウカちゃんがユウシャちゃんにそんなことするわけないじゃない。子供の頃はずっと一緒だったんだもん。それくらいはわかるよ」
「そんなこと言って、本当はセンシちゃんが一部始終をこっそりのぞき見していただけなんじゃないの。昔から、センシちゃんはユウシャちゃんのことになるとほかのことは目に入らなかったじゃない」
「……!」
「その様子だと図星のようだね。センシちゃんがのぞき見をするようになったとは……ちょっと会わない間にずいぶんマニアックな趣味をお持ちになったみたいだね。まあ、ユウシャちゃんには話さないでおいてあげるから安心していいよ」
「なによ、恩着せがましくしちゃってさ、ブトウカちゃんったら。それじゃあ言わせてもらいますけれどね、なにが『たまたまユウシャちゃんと街で再会したから、そこでアイテムばらまくついでにはがねのよろいプレゼントしちゃった』よ。どうせ、しっかりわたしたち四人パーティーの情報をリサーチした上で、ジャストタイミングでバッタリでくわせるようにタイミングはかってたんでしょう。こつこつためたゴールドで買ったはがねのよろいをユウシャちゃんにプレゼントするために」
「……!」
「やっぱりそうだったんだ。ってことは、ほかの街でもアイテムただでばらまいてたってのも嘘なんでしょう、ブトウカちゃん。ユウシャちゃんに気を使わせずにはがねのよろいを使ってもらうための。本当は、ダンジョンで手に入れたアイテムはちゃんと売りさばいてしっかりもうけてたんでしょう」
「やっぱりセンシちゃんにはお見通しかあ。ユウシャちゃんには秘密にしといてよ。最近はダンジョンでろくなアイテムが手に入らなくて、それをマオウちゃんがあわれに思ってここレトロゲームセカイに住まわせてもらうようになったってのは本当なんだから」
「そんなことだろうと思ったよ。もちろんユウシャちゃんには秘密にしておくよ。ブトウカちゃんがわたしたちが育った村を旅立つ前夜に、二人で話したこともわたしたち二人だけの秘密のままなんだから」
「わたしが故郷の村を旅立つ前夜か……思い出すね、センシちゃん。子供の頃にユウシャちゃん、センシちゃん、ソウリョちゃん、マホウツカイちゃん、そしてわたしの五人でよく遊んだもんね」
「正直言って、ブトウカちゃんには悪かったと思ってるよ。わたしは……ううん、ブトウカちゃん以外の四人とも、ずっとこの五人でいるものとばっかり思っていたから……でも、ブトウカちゃんは気付いちゃったんだよね。パーティーのメンバーは四人だって。誰かが一人あぶれちゃうって。それで、ブトウカちゃんが自分だけまず一人で旅立つって宣言したんだもんね」
「わたし、ブトウカちゃんは今から裸一貫で、おのれの拳だけを頼りに生きていく。仲間も不要。一人で旅立つのだ。ではさらば」
「そうそう、そうだったね。その前夜に、わたしはブトウカちゃんと約束させられたんだよね。『これからはセンシちゃんが何があってもユウシャちゃんを守るんだよ。これはわたしたち二人だけの秘密だよ』って。その時はどういうことかわからなかったけど、ブトウカちゃんが旅立ってからどういうことかわかったよ」
「そういえば、センシちゃんと二人でユウシャちゃんのために木刀用意したことあったね。二人で雑魚モンスター倒してさ。そのドロップアイテムの木刀。そのとき、センシちゃんがわたしにユウシャちゃんへのプレゼント役譲ってくれたじゃない。『戦士のわたしは木刀装備できちゃうからユウシャちゃんへプレゼントするのは不自然だ』って。それでおあいこってことでいいじゃない」
「そんなのおあいこにならないよ。だって、わたしはユウシャちゃんといっしょに冒険してたのに、ブトウカちゃんはひとりぼっちだったじゃない」
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