第27話ユウシャちゃんブトウカちゃんに遠慮される・ユウシャちゃんの部屋にて

「あ、そういえば……」


「どうしたの、ユウシャちゃん」


「このはがねのよろいって、ブトウカちゃんがくれたものだったじゃない。あたしたち四人のパーティーが旅の途中でダンジョン帰りのブトウカちゃんに街でばったり会って。その街でブトウカちゃんが酒盛りしながら街のみんなにダンジョンで見つけたお宝ばらまいてたじでしょ。そのときにブトウカちゃんがこのはがねのよろいくれたんじゃない」


「そうだったっけ、ユウシャちゃん。そんなこといちいち覚えてはいられないからね。でも、そんな昔の話を持ち出して、いったいどうしようって言うのさ」


「どうしようって、ブトウカちゃん。このはがねのよろい、あたしがタダでもらったものじゃない。あたしがお金払おうとしても、『お金なんていらないよ、ユウシャちゃん。どうせわたしには装備できないし。今はダンジョンに潜って手に入れたアイテム売ったお金で左うちわだしね』なんて言って」


「そういえばそうだっけ。それで……」


「『それで』じゃないよ、ブトウカちゃん。昔はお金持ちだったかもしれないけれど、今はブトウカちゃんも貧乏なんでしょ。じゃあ、このはがねのよろいブトウカちゃんに返すよ」


「別にいいよ、ユウシャちゃん。今さら受け取れないよ。それに貧乏と言ったって、ここレトロゲームセカイに住んでいるんだから何か不便なことがあるわけでもないしさ」


「そう言う問題じゃないよ、ブトウカちゃん。そもそも、このはがねのよろいをもらった時にゴールドを払うべきだったんだよ。それをブトウカちゃんに言いくるめられて、ただで受け取っちゃって……あたしのばかばか」


「ユウシャちゃん、そんなに自分を責めなくても……」


「ねえ、ブトウカちゃん。ひょっとして、いつもそうだったの? ダンジョンで見つけたお宝をほかの女の子にもただでばらまいてたの?」


「……そりゃあ、まあね。お金のああだこうだっていろいろ面倒だからね。プレゼントってことであげちゃったりすることもあったかな」


「ブトウカちゃんって、昔からそう言うところあったよね。子供の頃のあたしがトレーニング用の木刀欲しいなって思ってたら、あたしにプレゼントしてくれたじゃない。『この木刀、わたしは装備できないからユウシャちゃんにあげる』って。あの木刀はどうしたの? 子供のブトウカちゃんが一人でダンジョンになんて潜れるわけないし……」


「さあてね、昔のことは忘れちゃったな。まあ、いいじゃない、ユウシャちゃん」


「よくないよ、ブトウカちゃん。ブトウカちゃん、さっきは『今のご時世ダンジョンで見つかるお宝はお金にならなくてね』なんて言ってたけど、そんなふうに景気良く自分で手に入れたアイテムばらまいてちゃあ、そりゃあいつかはスカンピンになっちゃうよ」


「でもねえ、ユウシャちゃん。わたしがダンジョンに潜ってアイテムを手に入れるでしょ。そのアイテムを近くの街でばらまくでしょ。そしたらその街の景気が良くなって夜な夜な宴会が行われるでしょ。だったらわたしはしばらくは食べることには困らないでしょ。で、宴会が行われなくなったら、そろそろ潮時ってことでわたしはまた別の街に行って同じことを繰り返すでしょ。わたしはいままでそうやって生きてきたんだよ」


「ブトウカちゃんって、そんな生活してたんだ」


「そうだよ、ユウシャちゃん。そんな生活をしてたら、最近その日食べるものにもことをかくようになっちゃってねえ。そしたらここレトロゲームセカイのマオウちゃんがやってきてね、『いままであれだけ冒険らしい冒険をしてきたブトウカちゃんがこのままのたれ死ぬようなことになるのはあんまりだ』ってことでここで世話をしてくれることになったんだよ。いやあ、見てる人は見てるんだねえ」


「ブトウカちゃんがここレトロゲームセカイに住むようになった理由はわかったよ。あたしもブトウカちゃんにまた会えて嬉しいし……でも、それはあくまで結果論で、ブトウカちゃんの金銭感覚がいいかげんなのは変わらないんじゃあ……」


「わたしの金銭感覚がいいかげんなのは認めるとしてもだよ、ユウシャちゃん。じゃあ、そのユウシャちゃんのおサイフ事情はどうなのさ。なんでも、全滅するたんびに教会への蘇生費用をなんとかしなきゃいけないってんで、薬草や毒消し草をちまちまひとつひとつ武器屋で売ってたらしいじゃない」


「な、なんでブトウカちゃんがそのことを知っているの?」


「こんな外からは隔離された場所だと、うわさくらいしか楽しみがないからね。特に新参者のうわさといったら、それはもう格好の話題のタネだよ、ユウシャちゃん」


「ううう、あたしのことがそんなふうに広まっていたなんて……なんだかブトウカちゃんにやり込められた気分……こうなったら、無理やりにでもあたしのはがねのよろいをブトウカちゃんに突き返してやる」


「おいおい、落ち着いてよ、ユウシャちゃん。なんでそうなるのさ。こんなところではがねのよろいをぬいだりしちゃあダメだよ。ほら、ちゃんと装備しなさいって」


「やだ、ブトウカちゃん、離してよ」

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