第26話ユウシャちゃんブトウカちゃんと再会する・ユウシャちゃんの部屋にて
「ふう、マッドドクターちゃんもマオウちゃんに負けず劣らず変な人だったなあ」
「あ! ユウシャちゃん、久しぶり」
「わあ、ブトウカちゃんじゃない。久しぶり、ブトウカちゃんもレトロゲームセカイにいたんだ」
「そうなの。最近すっかり金欠でね。レトロゲームセカイでご厄介になってるんだ」
「えええ! ブトウカちゃんが金欠なの。ブトウカちゃんって、ひとり旅をしていて、その旅で手に入れた武器や防具を売ったお金で大金持ちだったんじゃないの。『武闘家は装備が必要ないから手にいれた装備品は、次から次へと売っぱらっちゃうんだ』なんて言ってたじゃない」
「それなんだけれどね、ユウシャちゃん。今のご時世そうもいかないんだ。昔はね、ダンジョンにひと潜りすればアイテムもいっぱい手に入ってけっこうな儲けになったんだけどね……今はそうもいかないんだ」
「なんで! どうして! ブトウカちゃんって言ったら、四人いてやっとなんとかなるあたしたちパーティーと違って、一人で冒険できちゃうすごい人ってあたし尊敬してたのに。良かったら理由聞かせてよ。あたしには聞くくらいしかできないかもしれないけどさ……」
「いやそれはもう、ユウシャちゃんが悩みを聞いてくれるっていうのなら、いくらでも話しちゃうけどさ。それじゃあ……長くなるよ」
「ぜんぜん平気。時間だけはいっぱいあるからさ」
「そう? それじゃあ……まずは、ほら、昔はパーティーって言っても、せいぜい四人だったじゃない。だから、四人パーティーが一人になってもなんとかなる程度の冒険の難易度だったんだけどさ、ユウシャちゃん。今は一つのパーティーが十人や二十人なんてのは当たり前でさ、百人なんてのも珍しくないんだ。そんな大人数でこなす冒険を、わたし一人ではもうこなせなくなっちゃったんだ」
「十人や二十人って、ブトウカちゃん。そんな大勢がいっぺんに戦ったり、ぞろぞろいっしょになって歩いたりしてるの。なんだかやりにくいんじゃないかなあ。百人なんて、ちょっと想像もつかないよ」
「ああ、十人や二十人がいっぺんにガヤガヤしてるパーティーもあるみたいだけどね、ユウシャちゃん。最近は、どこか他の場所でその他大勢を待機させておいて、戦闘は数人でやるパターンが多いみたいなんだ。戦闘ごとにパーティーを入れ替えて、さっきまで戦ってたメンバーがゆっくり休むなんてこともよくあるみたいだね」
「どこか他の場所って、ブトウカちゃん。そんなダンジョンにその他大勢が待機できるような場所なんてあるの?」
「それが最近はあるみたいなんだ、ユウシャちゃん。わたしみたいな古い人間にはよくわからないんだけれどね」
「ふうん。それにしても、百人もパーティーメンバーがいたら、ちっとも自分の出番がなくて退屈になったりしないのかなあ。あたしは、ずっと冒険してたほうが飽きがこなくていいような気がするけどな」
「ユウシャちゃんみたいな女の子はもう少数派なんだよ。今は、他のパーティーメンバーに戦わせて経験値だけは自分もしっかりもらうっていう楽したい派が多数派なんだ」
「えええ、ブトウカちゃん。自分は戦わないのに経験値はもらっちゃうの? それって経験値になるの? あたしだったら、そんな経験値いやだけどな」
「それがなるみたいなんだよ、ユウシャちゃん。それにそんな経験値でも嫌じゃないっていうのが、今の女の子みたいなんだ」
「ふうん、なんだか変なの。でも、そんなにパーティーメンバーがいっぱいいるんだったら、ダンジョンでアイテム手に入れても取り合いになったりしちゃわないのかなあ。四人パーティーのあたしたちだって、『センシちゃん、この剣はセンシちゃんが使ってよ』『いやいや、ユウシャちゃんが使うべきだって』っていう感じになるのに」
「ユウシャちゃん、そのダンジョンに落ちているアイテムって考え自体が古いみたいなんだ。最近は、苦労して潜ったダンジョンの奥で手に入るものと言えば、パーティー全体で使いまわせるスキルとか言うのが主流みたいなんだ。そのスキルは売り買いするものじゃあないみたいでね、わたしみたいなダンジョンを潜って手に入れたアイテムを売ってお金を稼いでいた女の子は失業ってことになっちゃったんだ」
「スキルかあ……あたしにはよくわかんないや」
「それだけじゃなくてね、ユウシャちゃん。やっとの思いでたどり着いたダンジョンの最深部が、温泉とか言うこともあったんだよ。たしかに苦労の末に入る温泉は気持ちよかったけどさ……それをどうお金にしろって言うのさ。そんなダンジョン昔はなかったよ。まったく、最近はどうなっちゃったんだろねえ」
「温泉かあ。それはそれで悪くないけれど……ブトウカちゃんみたいなスタイルで旅をしている女の子には問題かもね」
「そうなんだよ、ユウシャちゃん。もうすっかりお手上げになっちゃったんだよ」
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