第22話アソビニンちゃんマオウちゃんと遊ぶ・マオウちゃんの部屋にて

「やっほー、マオウちゃん。アソビニンちゃんが遊びに来たよ。遊んでくれる?」


「いいよ、アソビニンちゃん。ちょうど時間が空いたところだったんだ。何をして遊ぼうか」


「うん、マオウちゃん。すっごい遊び思い付いちゃったんだ」


「それは良かった。こうしているとアソビニンちゃんと初めてあった時のことを思い出すねえ」


「そうなの? マオウちゃんはあたしとどんなふうにして出会ったんだっけ」


「おやおや、忘れちゃたのかい、アソビニンちゃん。まあ、らしいといえばらしいけどね」


「それで、あたしとマオウちゃんとの出会いはどんな感じなんでしたっけ。教えてくださいよ」


「まあいいけどね、アソビニンちゃん。あれはね、わたしが魔王城の玉座で魔王征伐パーティーを待ってた時のことだったね。久しぶりに魔王城に到達したパーティーが出てきたっていうから、はりきって玉座で待機してたんだよ。魔王征伐パーティーがやってきたらどんなセリフで出迎えてやろうかなんて考えながらね」


「魔王征伐パーティー? それって最近レトロゲームセカイにやってきたユウシャちゃん御一行のことですか?」


「ユウシャちゃん御一行も魔王城にやってきたけどね、アソビニンちゃんとわたしが出会った時のパーティーはユウシャちゃん御一行じゃないよ。と言うより、アソビニンちゃんがメンバーの一員だったパーティーじゃないか。忘れちゃったのかい」


「うーん、なんだかそんなこともあったような気もするけれど……よく覚えていないや。でも、マオウちゃんが教えてくれるんでしょう」


「アソビニンちゃんにそう言われちゃあ教えないわけにはいかないけどね」


「わーい。だからあたしマオウちゃんが大好き」


「まったく、調子がいいんだから、アソビニンちゃんは。それで、わたしたち二人が出会った時のことだよ。アソビニンちゃんがいたパーティーはね、玉座にいるわたしの目前までやってきたんだけどね、そこで、アソビニンちゃん一人を残して全滅しちゃったんだよ」


「そうだったんだ。それで、マオウちゃん。その続きはどうなったの?」


「はいはい、アソビニンちゃん。いま話してあげますからね。わたしも、自分を殺しにわざわざ魔王城を進んできてくれたんだから、わくわくしていたんだけれどね。それが目の前でアソビニンちゃん一人残してやられちゃったんだから、正直言ってがっかりしちゃったんだけれどね。その残されたアソビニンちゃんがその後たった一人、それも魔王城の最深部でどんな行動をとるか見物させてもらってたんだよ」


「あれっ、マオウちゃんってその時にはもうあたしがアソビニンちゃんって知ってたの?」


「ああ、その時は人間の一人としか認識していなかったけどね。妙なところでするどいんだよね、アソビニンちゃんは」


「へへ、マオウちゃん。ほめてくれてどうもありがとう」


「まあいいけどね。それで、その一人になっちゃったアソビニンちゃんがどうしたかと言うとね。まずぴいぴい泣いてたんだけれどね。『えーんえーん。どうしよう』って感じで。ところがその泣いていたアソビニンちゃんが、わたしにきづくとだね。『あれっ、お姉さんだれ? なんでこんなところにいるの? まあいいや。いっしょに遊ぼうよ』と、こうだからねえ」


「だって、マオウちゃん。誰かと遊ぶのってすっごく楽しいじゃない」


「そりゃあそうだけどね、アソビニンちゃん。わたしが魔王城の玉座で自分を殺しにきてくれる相手を待っているのも遊びみたいなものだし……」


「なによそれー、マオウちゃん。殺し合いなんて、ちっとも楽しくなんかないじゃない」


「アソビニンちゃんならそれもそうか。とにかく、魔王城の玉座で待機していたら、アソビニンちゃんが『遊ぼう』なんてくるもんだからね。わたしとしても『はらわたを食い尽くしてやる』なんて言う気はすっかりなくなっちゃってだね。アソビニンちゃんとお絵かき遊びやままごと遊びを楽しんだってわけさ。どうだい、思い出したかい」


「なんとなく、マオウちゃん。それで、その後どうなったの」


「その後って……ひとしきり二人で遊んだらアソビニンちゃんがこう言ったんじゃないか。『なんだか疲れちゃった。もう眠い。ベッドか何かないの』ってね。それで、わたしが『レトロゲームセカイってところがあって。そこだと三食昼寝つきだよ』って返事したら、アソビニンちゃんが『じゃあ、そこで寝る』って言ったんじゃないか。で、そのままアソビニンちゃんはレトロゲームセカイにいついちゃったんだよ」


「そうだったんだ、マオウちゃん。ひょっとして、あたしがいついちゃって迷惑だった?」


「いや、そんなことはないよ。魔王と遊んでくれる人間なんて珍しいからね。アソビニンちゃんみたいな人間は大歓迎だよ」


「そう。だったらよかった、マオウちゃん。いろいろ思い出させてくれてどうもありがとう。それじゃあね、マオウちゃん」


 たったった


「あらら、アソビニンちゃんったら、いっちゃったよ。結局、新しい遊びってなんだったんだろうねえ」

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