第21話ユウシャちゃんモンスターマスターちゃんに礼を言われる・ユウシャちゃんの部屋にて
「なんだかユウシャちゃんには迷惑ばっかりかけちゃったね」
「いやいや。そんなのへっちゃらだって。なんだかんだで全部丸くおさまったみたいだし。そもそも、あたしがあの杖を伝説の武器かもしれないなんて大騒ぎしたのが原因なんだしだ」
「あら。ユウシャちゃんは優しいのね。わたし、ユウシャちゃんに『モンスターマスターちゃんのせいなんだよ。あんな杖あたしに鑑定させちゃって。モンスターマスターちゃんが、あの杖をたきぎにでもして燃やしていればこんなことにはならなかったんだよ』なんて怒られるかもしれないってビクビクしてたんだから」
「あたし、そんなこと言いませんってば。でも、モンスターマスターちゃんはすごいですね。大魔道士さんがボケたふりをしているなんて、なんでわかったんですか」
「実はね、わたしの手柄ってわけじゃないのよ、ユウシャちゃん。今回はね、アソビニンちゃんのお手柄なの」
「アソビニンちゃんが? どういうことなの」
「それはね、わたし、ダイマドウシちゃんが魔法が使えなくなる理由は老化による判断力の低下のせいだって決めつけちゃってたの。だからダイマドウシちゃんの話すことがふがふがもごもごでもおかしくないって思っちゃったのね。多分他のみんなもそうだったと思うわ。でも、アソビニンちゃんだけは違ったのね」
「へええ、あのアソビニンちゃんがねえ」
「そういえば、ユウシャちゃんはアソビニンちゃんのことをご存知なのかしら」
「うん。いっしょにパーティーを組んだことはないけれど、うわさくらいなら。いるだけでまわりの全員が楽しくなっちゃうような人なんだってね」
「そうなの。すてきな女の子なのよ。アソビニンちゃんったら。自分では自分のことを『ちっとも戦闘の役にたたないバカな女』なんて言ってるみたいだけどね。ちっともそんなことないのにねえ」
「それで、そのアソビニンちゃんがなんで大魔道士さんがボケたふりをしてるってことに気づいたんですか。教えてくださいよ、モンスターマスターちゃん」
「ボケたふりをしてることに気づいたとはちょっと違うかな、ユウシャちゃん。正確には、アソビニンちゃんは『ダイマドウシちゃんが魔法が使えなくなっただけで、他は何一つ変わってないこと』を見抜いてたってことになるのよ」
「???」
「わかりにくいわよねえ、ユウシャちゃん。あたしもうまく説明できる自信はないの。だってダイマドウシちゃんったら、魔法が使えなくなったことをみんなに知られるのが恥ずかしいからって、おボケになったふりをなさるんですもの。きっと、大魔道士だった自分が魔法を使えない姿を人前にさらしたくなかったのね。それで、あんな演技をしていたのよ」
「大魔導士さんがボケた演技をしていたんですかあ。あたしは実際に目にしたわけじゃあないけれど、どんな感じだったんですか」
「今にして思えばね、ユウシャちゃん。魔法が使えなくなっただけで、それ以外は以前とちっとも変わらない、女の子のおっぱいやお尻を触りまくるエッチな女の子だったは。結局根っこのところは同じダイマドウシちゃんだったってことね。だけど、わたしも含めて誰もそれに気がつかなかった。そのくらいダイマドウシちゃんが魔法が使えなくなるってことがおおごとだったってことね」
「たしかに。あたしも大魔導士さんが魔法が使えなくなってって聞いてショックだったもんなあ」
「だけど、アソビニンちゃんは違ったのね。アソビニンちゃんにとって、魔法が使えるか使えないかなんてささいなことだったのね。だから、ダイマドウシちゃんの内面をしっかり見てて、本当は何一つ変わってないってことをわかってたのね」
「ふうん。わかったような、わからないような……」
「そうね、ユウシャちゃん。わたしも良くわかってないのかもしれないわね。だけど、一つわかったことがあるわ。世の中戦闘能力だけが全てじゃないってことなのね」
「それはそうじゃないですか。モンスターマスターちゃんだって、自分が戦闘能力を発揮しなくても仲間のモンスターがしっかり戦ってくれるじゃあないですか」
「違うのよ、ユウシャちゃん。それだって、結局はモンスターさんの戦闘能力あっての話じゃない。わたし一人じゃあ何にもできないわ。でも、アソビニンちゃんは、一人でも、戦闘能力なんてまるでなくてもすごいことができるってことなのよ。それが戦闘能力が全てじゃないってことなの」
「???」
「ユウシャちゃんにはちょっと難しかったみたいのようね。でも、いずれユウシャちゃんにもわかると思うわ」
「そうですかねえ、だってあたしそんなに頭良くないですもん。モンスターマスターちゃんが言ってることがわかるようになるとはとても思えないんですけれど」
「わかるってことは、頭で理解することじゃないのよ。頭では理解してなくても、わかることも世の中にはあるのよ、ユウシャちゃん」
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