第17話モンスターマスターちゃんアソビニンちゃんにはっとさせられる・モンスターマスターちゃんの部屋にて
「ねえねえ、モンスターマスターちゃん。大魔導士さんにすごいものもらったんだって。あたしにもそれ見せてよ」
「あら、アソビニンちゃん。来てくれたのね、どうもありがとう。でも、ごめんなさいね。いまは手元にないの。ちょっとユウシャちゃんに調べてもらってて」
「そうなんだ。ないならないでいいや。だけど、あの大魔導士さんがねえ。あたしのおっぱいやお尻を触りまくるただのスケベちゃんといままで思ってたけれど……モンスターマスターちゃんにプレゼントかあ。なかなか見る目があったんだね」
「そんな、見る目だなんて。ほら、大魔導士さんはかなりお年だったから、いろいろ判断力が衰えていらっしゃるのよ。たいした意味なんかないと思うわよ、アソビニンちゃん」
「『判断力が衰えてる』って……それってボケてるってこと?」
「わたしはそういう直接的な物言いは好きじゃないけれど、まあそう言うことね、アソビニンちゃん」
「へえ、大魔導士さんってボケてたんだ。あたしにはちっともそうは見えなかったけどなあ。モンスターマスターちゃんもよくわかったね」
「え、それは……見ればわかると言うか……ほら、大魔導士さん昔は魔法がすごかったじゃない。それがいまではあんなふうに魔法が使えなくなっちゃったから」
「魔法かあ。そう言えば、あたしにどうのこうの説明してきたっけ。この世の仕組みがどうとか。エレメントがどうだとか。あたしはそんな難しいことさっぱりわからないから、右から左に聞き流してたけれど。そういえば、大魔導士さんこんなこと言ってたな。『前はこれだけ説明しても魔法が使えないお前は愚か者だなんて思ってたけれど、こうして魔法が使えなくなった身になるとお前みたいなものが本当に賢いものなんて気がしてくるよ。わからないことをわからないと認めることがどんなに難しいことか』」
「アソビニンちゃん! 大魔導士さん本当にそんなことをおっしゃってたの? 『魔法が使えなくなると愚か者が賢く見えてくる』だなんて」
「どうしたの、モンスターマスターちゃん。そんなに慌てちゃって。でも、その通りだよ。あたしのおっぱいやお尻を触りながら、『魔法は使えていたあの頃が懐かしい。もうあの頃の大魔導士はいないのだ。こんな姿はとても人前にはさらせない』なんてぼやいてたよ」
「そんなことがあったの、アソビニンちゃん。たしか大魔導士さんは魔法が使えなくなると同時に、ふがふがもごもご話すことも訳が分からなくなっていったけれど……アソビニンちゃんに魔法が使えないなんて愚痴ってたとなると、大魔導士さんの判断力はにぶっていなかった……でもどうして」
「ねえ、モンスターマスターちゃん。できることができなくなるってどんな気持ちなの?」
「『できることができなくなる』? どういうことかしら、説明してちょうだい、アソビニンちゃん」
「説明って言われても……ほら、あたしは遊び人で役立たずで戦闘では何にもできないバカだからさ、できることができなくなることがどう言うことなのかよく分からないんだ。だってもともとなにもできないんだもん。できることができなくなった人の気持ちなんてわかんないよ。だから魔法が使えなくなった大魔導士さんの気持ちもわからなくてさ。例えばモンスターマスターちゃんがいままで仲間だと思ってたモンスターからいきなりそっぽを向かれたらどんな気持ちになるかと思ってさ」
「わたしの仲間だったモンスターがわたしの元を離れていく……そんなこと考えたくもないわ。モンスターとの戦いも魔法もだめだめだったわたしに、モンスターが優しくしてくれてどんなに嬉しかったことか。それが突然ひっくり返ったとしたら……あんなに優しかったモンスターがわたしの悪口しか言わなくなったとしたら……」
「あ、ごめんね、モンスターマスターちゃんをそんなにおびえさせる気はなかったんだよ。本当だよ。あたしがちょっと気になっただけだから。モンスターマスターちゃんがそこまで恐がるくらいなら、あたしはできることができなくなる気持ちなんて分からなくて全然構わないから」
「こ、こっちこそごめんね。アソビニンちゃんを驚かせちゃって。でもありがとう。アソビニンちゃんのおかげですごいことに気がついちゃったから」
「あたしのおかげ? あたし何かしたの、モンスターマスターちゃん」
「したのよ、それもすごいことを」
「ふうん、まあいいや。あたしがしたことがどんなことなのかモンスターマスターちゃんに説明されてもあたしにはわかりっこないだろうし。それなら最初から説明されなくていいや。そんなことより、新しい遊び思い付いちゃった。ねえ、モンスターマスターちゃん。遊びに行っていい?」
「ええ、どうぞ、アソビニンちゃん」
「わーい。いってきまーす。じゃあねー、モンスターマスターちゃん」
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