第16話モンスターマスターちゃんショウニンちゃんに入れ知恵される・モンスターマスターちゃんの部屋にて
「聞いたよ聞いたよ、モンスターマスターちゃん。大魔導士さんからなにかすんごい贈り物もらったらしいじゃん」
「よしてくださる、ショウニンちゃん。そんな下世話な話。わたし、いやだわ」
「でも、本当なんでしょう」
「それは本当だけれど、わたしね、受け取らないでおこうかと思ってるの」
「どうしてさ、モンスターマスターちゃん。もったいないじゃない」
「だって、大魔導士さんが使った杖って、伝説の武器クラスなんでしょう。そんなすごいもの、とてもじゃないけどいただけないわ」
「だけど、大魔導士さんって、モンスターマスターちゃんに相当いやらしいことしてたんでしょう。大魔導士さんの女好きは有名だったからね、自分も女の子のくせに」
「それは……おっぱいやおしりを触られたけれども。でもそれは、大魔導士さんももうボケていらっしゃったみたいだし」
「甘い、甘いよ、モンスターマスターちゃん。大魔導士さんがボケていたからってそれが何よ。聖母様みたいにお優しいのも結構だけどね、いくらなんでも限度ってものがあるのよ」
「でも、ちょっと触られたくらいだし……」
「モンスターマスターちゃんは自分の価値をまるで理解してないわね。聖母様のおっぱいやお尻にどれくらいの価値があると思ってるの」
「どれくらいの価値がおありになるの、ショウニンちゃん」
「それはね、伝説の武器と同じくらい価値があるのよ。あたしにプロデュースさせてもらえるのなら、アイドルモンスターマスターちゃんでいくらでも富を生み出すことができるのに」
「わたし、そういうお金とかは別にいらないわ」
「そう、その浮世離れしたところがまたいいんだよ、モンスターマスターちゃん。最近のアイドルってのはどうも世俗的すぎていけないよ。スターってのは、もっとこう、ミステリアスというか、庶民には手が届かない高嶺の花というか、憧れのターゲットであってほしいんだよねえ」
「そうなの、ショウニンちゃん」
「そうなの。スターってのはね、世間知らずな深窓のご令嬢が、大監督にね、『君かわいいね、この綺麗な服着て見てくれる。ちょっと笑って見てくれる』なんて言われて笑顔が大衆に振りまけられるくらいでちょうどいいのよ。それが今時のアイドルときたら……『会いにいけるアイドル?』『クラスで二、三番目くらいのかわいさ』……ナンセンスもいいところだわ」
「ショウニンちゃんはいっぱい最近のことを知ってるのねえ。わたしはもうさっぱりよ」
「アイドルが仕事を求めたり、売り上げだのなんだの大騒ぎするのもダメダメね。スターってのはね、一つの仕事が終わったら、すぐに別の監督が仕事を依頼してきてね。もちろんギャラの話なんて一切しないのよ。それで、適度に贅沢な暮らしをしてね、マネージャーに『子供に水鉄砲買ってやりたいんだけれど、そんなお金あるかしら?』なんて聞いて、マネージャーに『あるに決まってるでしょう』なんて呆れられるくらいでいてほしいのよ」
「ショウニンちゃん。あなたはわたしに何を話したいの」
「ああ、そうだった。話がずれちゃったね。ごめんね、モンスターマスターちゃん。あたしが言いたいことはだね。モンスターマスターちゃんは大魔導士さんにおっぱいやお尻をさんざん触られたんだから、その対価として大魔導士の杖を大いばりでもらっちゃえばいいって言う話なのよ。大魔導士の杖が伝説級の武器だからってそれが何よ。むしろもらい足りないくらいじゃない。モンスターマスターちゃんは『もっとよこせ』って言ってもちっともバチは当たらないと思うよ」
「ああ、ショウニンちゃんが言いたかったのはそのことなのね。それはどうもありがとう。わたしが大魔導士の杖なんてすごいものもらっちゃって困ってるって聞いて、はげましに来てくれたのね」
「そんな……別にあたしはモンスターマスターちゃんがみすみすお金をドブに捨てるようなまねをするのがほっとけなかっただけで……はげますとか、そんな一ゴールドの得にもならないようなことを、このショウニンちゃんがするはずが……」
「ショウニンちゃんがどんな思いでわたしにあんな話をしたかは知らないけれど……わたしはショウニンちゃんの話を聞いて元気が出たわ。わたしのためにあんなにショウニンちゃんが一生懸命になってくれたんだもん。それだけでわたしは嬉しいわ。それじゃあダメなの?」
「そ、それはあたしの言葉をモンスターマスターちゃんがどう解釈しようが、それはモンスターマスターちゃんの自由だけれど……」
「ならそれでいいじゃない、ショウニンちゃん。ショウニンちゃんはわたしに気の済むまで話をして満足した。わたしもショウニンちゃんの話を聞いて元気が出た。それで十分じゃあないの」
「モンスターマスターちゃんがそう言うのなら、あたしもそれでいいや。やっぱりモンスターマスターちゃんと話をすると調子がくるっちゃうな。まあいいや、それじゃあ今日のところはばいばいね」
「ええ、さようなら、ショウニンちゃん」
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