第14話ユウシャちゃんマオウちゃんに大魔導士の杖の効果を発動させる・魔王城にて
「というわけなんですか、どうしましょうマオウちゃん」
「面白いじゃないか、ユウシャちゃん。さっそく試すとしようじゃないか。それじゃあ二人で魔王城最深部に行くとしよう」
「えええ、魔王城最深部へですか、マオウちゃん」
「安心してよ、ユウシャちゃん。魔王城への入り口からえっちらおっちらということじゃあないから。このマオウちゃん様にかかれば、転移呪文であっという間さ。ここレトロゲームセカイは戦闘目的に作られていないからね。あんまり派手なことはできないんだ。その点魔王城なら安心さ。なにせあそこは生死をかけた殺し合いをするために作った場所だからね。その大魔導士の杖がどんなに凄い攻撃呪文を発動させたとしてもビクともしないよ」
「そ、そういうことでしたら、マオウちゃん、魔王城最深部に連れて行ってください」
「いいでしょう。さあ、ユウシャちゃん、手をつなぎましょうね」
「て、手をですか、マオウちゃん」
「そうだよ、ユウシャちゃん。手を繋がないといっしょに転移呪文で瞬間移動できないじゃないか。さあ、遠慮なんてせずに」
「で、でも、人間世界では手なんて繋がなくても、パーティーメンバー全員で瞬間移動できたんですけれど……」
「人間の場合とこのマオウちゃん様の転移呪文を一緒にしてもらっては困るよ、ユウシャちゃん。このマオウちゃん様がね、なんの制約もなしに転移呪文を使ったらね、ここレトロゲームセカイ全部が瞬間移動しちゃいかねないんだ。それを防ぐために、手をつないでいる相手だけとしか瞬間移動できないように制約を課しているんだ。だから、ユウシャちゃんと手を繋ぐことには必然的な理由があるんだよ。けしてそれ以外の理由なんてないんだから、さあ、早く」
「そ、そう言うことでしたら、わかりました、マオウちゃん」
ニギッ
「そうだよ、ユウシャちゃん。しっかりわたしの手を握っているんだよ。それじゃあ瞬間移動だ」
ヒュイーン
「ふはは、よく来たな勇者よ。この魔王が貴様のはらわたをくらいつくしてくれる」
「あの、マオウちゃん。毎回それやらなきゃあダメなんですか」
「いやまあ、絶対必要ってわけじゃあないけれどね。ユウシャちゃんがいいならそれでいいんだけれどね……じゃあ、とりあえずその大魔導士の杖使ってみてよ」
「わかりました、マオウちゃん。えいっ」
もわわわーん
「おお、なんだこれ、そこいら一帯に変な霧が出てきたよ。これはなんなんだい、ユウシャちゃん」
「いえ、あたしにもわかりません、マオウちゃん。攻撃呪文の効果が発動するわけじゃあなさそうですね」
「そうみたいだよ。わたしにはなんのダメージもないもん。バッドステータスにもなってないみたいだし。となると……ステータス変化系かな。ちょっとユウシャちゃん、わたしのこと殴ってみてよ。だいじょうぶ、だいじょうぶ、武器もないユウシャちゃんの攻撃なんて全然平気だから」
「そ、そうですか、マオウちゃん。じゃあ、失礼して……やあっ」
ポカッ
「ふむ、なるほど、これがユウシャちゃんの打撃かあ」
「どうですか、マオウちゃん。何か変化ありましたか」
「いや、わからないや、ユウシャちゃん。そもそも、ユウシャちゃんのパーティーと戦った時は、わたしの開幕先制連続全体攻撃でワンターンキルしちゃったからね。ユウシャちゃんの攻撃がどのくらいなのか知らないんだよ。元の威力を知らないから、変化があったかどうかはわかんないや」
「それじゃあ、どうすればいいんですか、マオウちゃん」
「そうだねえ……それじゃあ、わたしが一回ブレス攻撃するとしよう。なに、初戦闘の時も一回は全体攻撃を耐えたじゃあないか。一回ぐらいは平気だよ、ユウシャちゃん。それにもし死んでも、レトロゲームセカイで生き返らせてあげるから」
「え、そんな、いきなり、マオウさん……」
「それじゃあいくよ、ユウシャちゃん……せーの」
ゴオオ!
「熱い! マオウちゃん。おそらくですが、あたしたちのパーティーが全滅した時とちっとも威力が変わってないと思います。この杖の効果はブレスには関係ないのではないかと……」
「そうみたいだね。じゃあ、ユウシャちゃん、回復してよ。回復魔法使えるんでしょう? いい、回復したね。それじゃあ、こんどは攻撃魔法といくか。やあっ」
どかーん
「うわああ! あれ? ハデな音やすごいエフェクトはあったけど、ダメージはないみたいです、マオウちゃん」
「そうなのかい。じゃあ、ユウシャちゃん、今度はユウシャちゃんが攻撃魔法使ってみてよ。使えるんでしょう、攻撃魔法? ひとつくらい」
「そりゃあ使えますけれど……じゃあ、いきますよ、マオウちゃん。とおっ」
ぽんっ
「ふむ、それなりの効果音やエフェクトはあったけど、わたしにダメージはないね。いくらユウシャちゃんが弱いと言っても、ここまでわたしにダメージがないというのはおかしいよ。ユウシャちゃん。このさい、回復魔法でも補助魔法でもなんでもいいから使ってみてよ」
「はあ、わかりました。えいっ、やあっ」
ホワワン、ピロロン
「効果音やエフェクトはあるみたいだね。それじゃあ、ちゃんと効果を発揮したかどうかをこのマオウちゃん様の通常攻撃で確かめるといくか。じゃあいくよ、ユウシャちゃん。歯を食いしばってね」
「え、そんな、マオウちゃん様の通常攻撃ですか。マオウちゃん様ともなれば通常攻撃といってもただの攻撃であるはずが……」
ドグシャーン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます