第11話ユウシャちゃんナイトちゃんとほめちぎりあう・ユウシャちゃんの部屋にて

「やれやれだわ、マオウちゃんがあんな人(?)だったなんて。ゴーレムさんもマオウちゃんをしたっているようだったし。悪い人じゃあないのかなあ」


「勇者さん、勇者さんですか。わたし、騎士です。勇者さんの噂はかねがね」


「えっ、まさかあなたがあの有名な騎士さん。騎士さんもここレトロゲームセカイにいたんですか。あっ、あたしのことはユウシャちゃんと呼んでください、マオウちゃんも含めてみんなそう呼びますから。とりあえず家の中にどうぞ」


「そ、そうですか、では失礼します。ああそれと、わたしのこともナイトちゃんと呼んでください。みんなそう呼びますから」


「なら、ナイトちゃん。ナイトちゃんのリーダーっぷりは有名ですよ。ナイトちゃんにしか装備できないヘビーアーマーや重盾でガチガチに固めた守備力で味方を敵の攻撃から守り、さらにナイトちゃんにしか装備できない両手剣で敵にパーティーで一番の大ダメージを与えちゃうんですから。あれこそまさにリーダーですよ」


「そ、そんな、わたしなんてたいしたことありませんよ。わたしには体を張るしかできないからそうしているだけのことで。ユウシャちゃんのリーダーっぷりのほうがよっぽどすごいですよ」


「いやいや、ナイトちゃん。あたしなんて全然大したことありません。あたしにしか装備できない武器や防具もないですし、あたしにしか使えない魔法があるわけどもないですし。そもそも勇者ってなんだろう、リーダーってなんだろうて悩んじゃう有様ですし」


「いえいえ、ユウシャちゃんともなれば、いずれユウシャちゃんにしか装備できない伝説の武器防具や転がり込んできますし、ユウシャちゃんにしか使えない魔法もいずれ覚えますってば。そう言うものですよ」


「そうですかねえ、そうだといいんですけれど。今のあたしなんて、攻撃力や防御力ではセンシちゃんにかないませんし。魔法だったらソウリョちゃんやマホウツカイちゃんのほうが優秀ですしで、しょせんあたしなんて器用貧乏の数合わせじゃないかなあって」


「ユウシャちゃん、リーダーがリーダーたる理由はですね、そんな専用装備や専用魔法が理由じゃあないんですよ。さっきユウシャちゃんにしか装備できない伝説武器防具とか、ユウシャちゃんにしか使えない魔法なんて言ったわたしが言うのもなんですけれども」


「リーダーがリーダーたる理由……なんですかそれ。そんなものがあるんだったら、ぜひ教えてください、ナイトちゃん」


「それはですね、ユウシャちゃん……教えてあげません。自分で考えてください」


「えええ、なんでですか、ナイトちゃん。そこまであたしに期待を持たせておいて。意地悪しないで教えてくださいよ」


「意地悪というかですね、今わたしがそれをユウシャちゃんに教えてしまうとですね、今後わたしとユウシャちゃんが同じパーティーになった時にですね、ユウシャちゃんが確実にリーダーになっちゃうじゃないですか。リーダーがリーダーたる理由はですね、わたしもわたしなりに苦労して見つけたんです。それをほいほい教えちゃうわけにはいきません。特に強力なライバルには」


「そんな、何をいうんですか、ナイトちゃん。もし、あたしとナイトちゃんが同じパーティーになったら、ナイトちゃんがリーダーになるに決まってるじゃあないですか。ナイトちゃんがガンガン敵に突っ込んでいく。それにあたしがついていく。ほら、ナイトちゃんがリーダーじゃないですか」


「やはりなにもわかっていないようですね。いいでしょう、ヒントをあげましょう、ユウシャさん。いいですか、ガッチガチに装備を固めて敵に突っ込んでいく俺についてこいタイプがイコールリーダーなのだとしたら、ユウシャちゃんのパーティーのリーダーはセンシちゃんになるはずです。しかし、少なくともセンシちゃんは自分のリーダーはユウシャちゃんと思っているようですね、違いますか」


「たしかにセンシちゃんはあたしのことをユウシャちゃんユウシャちゃんっていっつも言ってくれる。そういえばどうして? ユウシャってリーダーなんですか、ナイトちゃん」


「ヒントはここまでです、あとは自分で考えてください、ユウシャちゃん。それでは、いつか同じパーティーメンバーになれることを期待していますよ。じゃあ、今日はこのあたりで。それでは家へのご招待どうも、失礼しますね」


「そんなあ、ナイトちゃんが何を言っているかちんぷんかんぷんだよお。あ、待っていかないで」


 スタスタ


「ふう、危ないところだった。うっかり敵に塩を送るところだった。わたしみたいに先頭をきっていくタイプのリーダーもリーダーだけど、ユウシャちゃんみたいな、気がつけば周りに人が集まっていて、その周囲の人間がついついその人のために動いちゃうっていうのも立派なリーダーなのよね。ユウシャちゃんはまだわかってないみたいだけど。それも無意識でやってのけちゃうのがリーダーのリーダーたる理由ってところかしらね。となると、ユウシャちゃんはわからないままのほうがいいのかもしれないわね」

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