第9話ユウシャちゃんマホウツカイちゃんに謝罪する・マホウツカイちゃんの部屋にて
「マホウツカイちゃん、マホウツカイちゃん。生き返ったんだね、良かったね」
「落ち着きいや、ユウシャちゃん。うちら、もう何度も死んだり生き返ったりを繰り返しとるやん。一回魔王に全滅させられて、生き返るくらいでなにをそんなに大騒ぎしとんねん」
「だって、マホウツカイちゃん。いろんなことがあったんだよ」
「らしいなあ。なんやけったいなことが起こっとるみたいやん。ここがそのうわさのレトロゲームセカイなんか」
「そうなんだよ、マホウツカイちゃん。魔王さんが管理人として設立したんだって」
「うちらを開幕ワンターンキルしたあの魔王はんがなあ。世の中おもろいことがあるもんやなあ」
「それでその、これからのことなんだけど……マホウツカイちゃん、どう思う」
「どう思うもなにも。ユウシャちゃんはどうせセンシちゃんとソウリョちゃん、それにうちの三人がここレトロゲームセカイに居たいって言ったら、そうするんやろ。なら決まりやん」
「『決まり』って。どう言うことなの、マホウツカイちゃん」
「どう言うこともなにも、センシちゃんは魔王討伐なんてやばんなもんするより、ここでユウシャちゃんとのほほんとしとりたいやろうし……ソウリョちゃんは、ここでいろんな人の話を聞きたいやろうし……ほら、決まりやろ」
「センシちゃんとソウリョちゃんについてはその通りだけど、マホウツカイちゃんはどうなの。『四人で魔王倒そうね』って約束したじゃない」
「そういやそんなこともあったなあ。うちはてっきり、ユウシャちゃんとセンシちゃんが二人っきりで約束しとるもんやとばっかり思っとったわ」
「もう! そんなはずないじゃない、マホウツカイちゃん。あたしたちは四人で一つのパーティーなんだから」
「それもそうなんやけどな。これはセンシちゃんも難儀なことやなあ」
「なんでここでセンシちゃんの話になるかわかんないよ、マホウツカイちゃん。そもそもなんでマホウツカイちゃんはあたしについてきてくれたの」
「それはな、そうしたらおもろいもんが見れると思ったからや。うちら四人で旅するのもおもろそうやし、魔王を倒すために世界のあっちやこっちを行ったり来たりするのもおもろそうやったからな。べつに魔王が悪かどうかはうちにはどうでもいいこっちゃ」
「そうだったんだ。それなら、マホウツカイちゃんはこれからどうしたいの」
「そんなん決まっとるやん、ユウシャちゃん。敵と味方やとばっかり思っとったモンスターサイドと人間サイドがやな、裏では手を握りあっとって、しかもこんなレトロゲームセカイなんてごっついもん作っとったんやで。こんなん、ここにいるみんなの話聞かないわけにはいかへんやん。というわけで、うちはここレトロゲームセカイにおりたいで。センシちゃんもソウリョちゃんも、ここにいたいという点では一致しとるんやろ」
「なんか、マホウツカイちゃんズルい。自分だけなんでもお見通し、みたいな感じで」
「まあ、うちはおもろいことが好きで、うちの言うおもろいことってのは人間関係の機微やからな。そりゃあ、人間観察には注意深くならへんとな。というわけで、ユウシャちゃんパーティー御一行がどうなるかなんて予想くらいはできへんとな。かといって、なんでもちゅうのは言い過ぎやで、ユウシャちゃん。なんでもは知らないから、いっぱい知りたくてレトロゲームセカイの人の話を聞きたがるんやけどな」
「じゃ、じゃあ魔王討伐はここでおしまいってことでいいのね、マホウツカイちゃん」
「そうとは限らへんのちゃうかなあ、ユウシャちゃん。たしかに、うちら四人がレトロゲームセカイに住むことにはなると思うけども、それがイコール魔王討伐終了とはならへんのちゃうかなあ」
「それってどういうことなの、マホウツカイちゃん。さっきから難しいことばっかり」
「かっかっか。それを知りたきゃ、もう一度、ここの管理人である魔王はんとユウシャちゃんが話し合うこっちゃな。なんやスタッフはんが言うにはうちらを生き返らせるまでの間、魔王はんと話をしとったんやろ。で、いまユウシャちゃんがここにいるっちゅうことは、魔王はんとの話もそこそこに生き返ったうちらに会いにきたんやろ。ほなら、とりあえずはその魔王はんとな話を終わらせへんとな」
「それはマホウツカイちゃんの言う通りだけれど……」
「せやろ。せやから、さっき来たみたいに魔王はんのところに瞬間移動してきなさい。うちはその間ゆっくりやすんどるさかいに」
「う、うん、わかったよ、マホウツカイちゃん。じゃあ、いってくるね」
ヒュイーン
「それにしても、初めての戦闘の時はああもおっそろしい女王様っぽかった魔王はんが実はやりての管理人やったとはなあ。こんなごっついレトロゲームセカイっちゅう施設を運営しとるんやもんなあ。ただの乱暴者にはできへんこっちゃ。このマホウツカイちゃん、まだまだ人を見る目が足りてへんわ」
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