第8話ユウシャちゃんソウリョちゃんに謝罪する・僧侶ちゃんの部屋にて
「ソウリョちゃん、ソウリョちゃんだね、生き返ったんだね、良かった」
「なにをそんなに大騒ぎしているのだ、ユウシャちゃん。死者蘇生くらい、神のご加護があればなんとでもないことではないか。事実、僕の死者蘇生呪文くらい使える。まだ死んでいるマホウツカイちゃんを僕の呪文で生き返らそうとしたら、担当のスタッフにすごい目でにらまれてしまったがね。『オラの仕事だ。じゃますんじゃねえ』みたいな感じで」
「そうだったんだ。けど、ソウリョちゃんが生き返って良かったよ。それで、これからのことなんだけど……」
「だいたいの事情は僕も聞いているよ、ユウシャちゃん。ここレトロゲームセカイのシステムもね。ユウシャちゃんのことだから、『一回話をした魔王さんとまた殺し合いなんてできるのかなあ。けど、魔王討伐についてきてもらったソウリョちゃんたちのことを考えると、簡単に『魔王討伐』やめますとも言えないしなあ』なんて考えているんじゃあないのかい」
「うう、ソウリョちゃんの言う通りだよお」
「やっぱりか、ユウシャちゃんらしいや」
「なんだかごめんね、ソウリョちゃん。『四人で一緒に魔王倒そうね』って約束したのに」
「そう言えばそんなこともあったね。センシちゃんはなんだか舞い上がってユウシャちゃんのことしか目に入ってなかったみたいだけど」
「センシちゃんがどうかしたの、ソウリョちゃん」
「ああ、なんでもないよ。少なくとも僕の口から言うことじゃあない。で、まあ、他の二人は置いとくにしても、少なくとも僕に関しては魔王討伐を中止することにはなんの異存もないよ。むしろ、中止してもらってここレトロゲームセカイに暮らすことにしてもらったほうがありがたいくらいだ」
「そうなの、ソウリョちゃん」
「そうだよ、ユウシャちゃん。僕がユウシャちゃんとの魔王討伐の旅に同行した理由はね、回復魔法の修行のためなんだよ。知ってたかい」
「ううん、知らなかった、ソウリョちゃん。てっきりあたしやセンシちゃんみたいに、魔王が倒されるべき存在と信じて疑わなかったからだと」
「僕は正直なところ魔王が悪かどうかはどうでも良かったんだ。ただ、危険な旅に出れば僕の回復魔法が実行される機会も増えるだろうし、世界中を旅して僕の見聞を深めるのも悪くないと思ったからなんだ」
「そうだったんだ、ソウリョちゃん」
「実はそうだったんだよ、ユウシャちゃん。で、ここレトロゲームセカイなんだよ。聞くところによると、ここには伝説級のパーティーメンバーがゴロゴロいるそうじゃないか。そんな場所がこの世にあると知ったら、もう魔王討伐なんてどうでもよくなってしまったよ。白状するとだね、もし、ユウシャちゃんが魔王討伐を続けると言ったらね、僕はパーティーをやめさせてもらうつもりなんだ。それくらい、僕にとってはここレトロゲームセカイは魅力的な場所なんだよ」
「えええ、あたしはソウリョちゃんにパーティーを抜けて欲しくなんてないよ」
「なら、魔王討伐をやめてここレトロゲームセカイでセカンドライフを満喫するといい。少なくとも、僕はユウシャちゃんがそう決断してくれたら嬉しいよ。僕もユウシャちゃんがいないレトロゲームセカイよりは、ユウシャちゃんがいるレトロゲームセカイの方が嬉しいしね」
「なんだかソウリョちゃんにそんなこと言われるの初めてかも……」
「そんなことって、どんなこと、ユウシャちゃん」
「どんなことって……ソウリョちゃんがあたしといっしょにいれて嬉しいなんて言うなんて初めてだからさ。その、いままで、あたし、ソウリョちゃんのこと、クールと言うか、ドライと言うか、なんだかゴーイングマイウエイなところあるかなあ、なんて思ってたものだから……あ! 別にそれが悪いとか言うわけじゃなくて、むしろ孤高って感じでちょっとかっこいいなあなんて思ってたりなんかして……」
「ユウシャちゃんは僕のことをそんなふうに思っていたのか。初耳だよ」
「その、ごめん、ソウリョちゃん」
「別にユウシャちゃんが謝ることはない。それで、ユウシャちゃんはこれからどうするつもりなんだい」
「それはその、ここはやっぱりマホウツカイちゃんの意見も聞かないと。こういうのは多数決で『はい、決定』というわけにはいかないだろうし。やっぱり、パーティー全員の意見を聞かないと。わ! テレポーターが合図してる。マホウツカイちゃんが生き返ったんだ。ソウリョちゃん、マホウツカイちゃんのところに行っていい?」
「テレポーターって、瞬間移動装置かい、それは。そんなものがあるのなら、すぐにいくといいさ。マホウツカイちゃんの意見を聞きたいと言うのなら、二人きりのほうがいいだろうね」
「わかったよ、ソウリョちゃん。じゃあ、いってくるね」
ヒュイーン
「ふう、しかし、ユウシャちゃんは全員の意見を聞きたいなんて言ってたけれど、センシちゃんはユウシャちゃんの言うことなら何でも賛成するだろうな。僕もレトロゲームセカイに住みたいし、マホウツカイちゃんも……レトロゲームセカイに住みたいって言うだろうな。これはもう決まりだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます