第7話ユウシャちゃんセンシちゃんに謝罪する・センシちゃんの部屋にて

「センシちゃん、センシちゃんだね。生き返ったんだね、良かった」


「あっ、ユウシャちゃん。なんか、ここはレトロゲームセカイっていうところみたいなんだね。事情はまあ、ここで働いているスタッフさんに聞かせてもらったよ。あたしを生き返らせるのに、ずいぶん大変な手間がかかったみたいじゃないの」


「うん、ごめんね、センシちゃん。生き返らせるのがすっかり遅くなっちゃって」


「べ、別にユウシャちゃんが謝ることじゃあ……悪いのは、あたしたちを全滅させた魔王……でもないのか。魔王があたしたちを全滅させて、その魔王があたしを生き返らせるように手配して……なんだかややこしいな」


「うん、それなんだけどね、センシちゃん。わたしもセンシちゃんが蘇生させられるいままで魔王さんと話していたんだよ。けどね、どうも魔王さんはまったく話の通じない相手というわけじゃなくて、むしろ話が長すぎる相手みたいで……そんな魔王さんの話を聞いたら、これからどうしようかって悩んじゃって。一度魔王さんと話をしちゃったから、その魔王さんとまた殺し合いをするのはどうも……」


「ユウシャちゃんはその魔王さんと戦いたくないの?」


「よくわかんないんだ、センシちゃん。あたしが『魔王を倒しにいく』って宣言したら、『そうだね、あんな極悪非道な魔王は許しておけないよ』ってすぐにあたしのパーティーの一員になってくれたセンシちゃんには悪いんだけど」


「え? いや、ユウシャちゃんがあたしのことを気にする必要は全然ないんだけど……」


「だって、センシちゃんは、魔王が憎たらしくて憎たらしくてしょうがないからあたしと魔王討伐の旅に出てくれたんでしょう? それなのに、あたしの都合で『魔王討伐やめまーす』なんて、センシちゃんに申し訳ないというかなんというか……」


「ぜーんぜん、あたしのことなんてユウシャちゃんが気にする必要はこれっぽっちもないんだよ。え、えーと……ああそうだ。あたしを生き返らせたのはその魔王さんとやらなんだろう。そんな命の恩人を殺すなんて、いけないことだよ。そんなことはやめちゃおう。あたしの魔王への憎悪なんて、ユウシャちゃんは忘れてもらっていっこうに平気だよ。なんなら、最初からなかったものと思ってくれていい」


「そ、そうなんだ。センシちゃんはそう思っているんだ。まあ、ソウリョちゃんやマホウツカイちゃんの意見も聞いてみないとなんとも言えないけれど」


「ああ、そうだったね。ユウシャちゃんパーティは四人だったもんね、そうだったそうだった。ソウリョちゃんやマホウツカイちゃんにも聞いてみないとね。でも、あたしはユウシャちゃんが決めたことなら何にだって従うからね。なんてったって、このパーティーのリーダーはユウシャちゃんなんだから」


「そう、なんだかごめんね、センシちゃん。『いっしょに魔王を倒そうね』って約束したのに、こんな中途半端なことになっちゃって』


「ユウシャちゃん、あたしと二人でしたその約束覚えててくれてたんだ……じゃなくて、だからユウシャちゃんが気にすることはないんだってば。あたしたち、魔王討伐の旅をしていたんだよ。あっついあっつい砂漠での野宿や、さっむいさっむい氷河での夜明かしをしたこともある。下手したら、オークやゴブリンに全滅させられてどうこうされてたかもしれないんだよ。それに比べれば、途中でリタイアするくらいどうってことないよ。なにせ、このレトロゲームセカイはけっこういい暮らしをさせてもらえるみたいだからね」


「それもそうだね。魔王さんが人間向けに快適な暮らしをしてもらう場所を作り出したっていうから、どんなところかビクビクしていたけど、けっこう住みやすそうなところみたいだね」


「そうなんだよ、ユウシャちゃん。ここのスタッフさんの話によるとね、今までのユウシャちゃんパーティーの功績をたたえてね、あたしたちパーティー四人には、それぞれ一軒家に住まわせてくれるんだって。すごいね、一人一軒だよ。あたしたち、そんなにすごいことしてたかなあ」


「一人一軒! すごいね、センシちゃん。そこまでしてくれるっていうのなら、断るのもなんだか悪いね。あ! テレポーターが合図してる。また一人生き返ったみたいだよ、センシちゃん。隊列からすると次はソウリョちゃんかな。じゃあ、センシちゃん、このテレポーター一人用みたいだから、センシちゃんは生き返ったばかりなんだからここでじっとしててね。それじゃあ」


 ヒュイーン


「ユウシャちゃん、行っちゃった。そりゃあ、ソウリョちゃんやマホウツカイちゃんが心配なのもわかるけれど……そもそもあたしはユウシャちゃんと二人っきりで魔王討伐に行くつもりだったのに……たしかにソウリョちゃんとマホウツカイちゃんも加えた四人パーティーのほうがバランスがいいのはわかるけれど……」


 はあ


「それに、べつにあたしたちはたいしたことしてないんだから、一人一軒なんて特別待遇してくれなくてちっとも構わないのに。このレトロゲームセカイでユウシャちゃんと一つ屋根の下だったら……ああ、もう、どんなことになっちゃうんだろう」

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