武田くんの長い1日 ④
サバイバルゲームとはエアガンなどの殺傷能力の低い銃器を用いて戦闘を模した日本発祥のゲームである。
公式なルールは存在せず、状況や人数などで設定が変わってくる。
今回は数ある設定ルールから防衛戦が採用された。攻撃側と防衛側に分かれ、双方それぞれ攻撃と防衛のみに徹する。防衛側が全滅すれば攻撃側の勝利となり、防衛側が制限時間内まで逃げきれれば防衛側の勝利となる。もちろん、防衛側の守るものは人数だったり拠点だったり、ルールによって異なる。今回はサバゲ―同好会メンバー全員(三人)を見つけ出し、全滅させることだ。
「ん~。オレの勘では……」
伊達がきょろきょろと辺りを見回す。
「そこだ!」
叫ぶなり壁際を指さす。
そこから迷彩柄の服と目出し帽のサバゲ―同好会メンバーが現れた。カメラ片手に驚く。ゲリラ兵らしからぬ反応だった。
「よくわかったな」
「こちらの会話が筒抜けだからな。近くに仲間がこちらの様子を伝えていると考えるべきだろう」
戸惑う武田に対し、上杉は冷静な推理を披露する。
だから、何故そんな落ち着いていられるんだ?
「ちょっと試し打ちさせて」
「あ、ちょ……」
伊達はメンバーから軽い口調で銃を奪い取ると相手に向かって構える。
「バンッ!」
伊達が叫ぶと唐突にゲリラ兵が倒れた。
〈 ふ、藤原ー!〉
「あらいやだ。ただ『バンッ』って言っただけなのに」
画面越しに慌てる同好会メンバーとのんびりと銃を眺める伊達だった。
〈ひ、卑怯だぞ、伊達!〉
「卑怯? 笑っちゃうね」
非難するメンバーに対して伊達の口元は怪しく歪む。
「ゲームとはいえ曲がりなりにも戦争を模したルールを提示したのはそっちだよ。生命のやりとりがある時点で卑怯も汚いもないんじゃない?」
武田は背中に冷たいものを感じた。伊達が自分の知らない人物のように思えたからだ。言葉の奥にシビアな棘が含まれているような、そんな怖さを悪友から感じる。
「とか言っちゃうオレってカッコいいじゃん。すげえじゃん。さあ行くよ、ふたりとも!」
違った。伊達は伊達だった。
ノリノリで走り出す。武田が振り返って訊ねる。
「なあ、これからどうする?」
「付き合うしかないだろう。すでに伊達はノリで遊んでいるだけだ」
現在のスコア。
藤原、失神。
サバゲ―同好会ひとり脱落。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます