武田くんの長い1日 ②
上杉が入力したURLは動画のようだった。
しかも撮影場所は校内らしい。手ブレの大きい画面には目出し帽を被った男が、校庭のグランドを背景に立っている。
今更だが、武田は上杉の行動が心配になった。
動画だったからよかったものの。これがアダルトサイトやウィルスだったらどうするつもりだったのか。いや、もはや何も言うまい。
〈生徒会長・伊達政宏に告ぐ!〉
いきなり、宣戦布告が始まった。
声の主は、屹立する目出し帽の男。全身が迷彩服。両手にはライフル銃を抱えている。
どこぞの過激派組織だ。
武田はいろいろついていけない。もちろん、それでも事態は収束しない。
〈単刀直入に言う! 我々、サバゲー同好会は待遇改善を要求する!〉
武田が怪訝そうに呟いた。
「サバイバル同好会?」
「かなりデンジャーな同好会だね」
〈サバイバルゲーム同好会だ!〉
言い直した。かなり不本意であるらしい。
さらに言うならこちら側の発言が筒抜けらしい。
「しかも、生放送なのか」
「やだなぁ、武田。リアルタイム放送だよ」
「生配信とも言うな」
上杉の突っ込みで会話が中断する。
将来のYouTuberは、どうやら専門用語や仕組みをあまり知らないようだ。どうでもいいが、話はまだまだ続く。
〈貴様の横暴な執政は目に余るものがある。よって、勝負を申し込む! 我々が勝利した場合、部に昇格をしてもらおう!〉
えらいことになった。
これは実力行使のクーデターではなかろうか。横暴な手段には違いないが、武田は彼をただの暴徒として片付けることができない。
なぜなら、クーデターというものはボンクラなトップが圧政を強いていることが多いからだ。
武田はちらりと横目で見る。
「うーん」
案の定、ボンクラなトップ……もとい、生徒会長の伊達は戸惑っていた。むろん、心当たりがあるというより、なさすぎて思い当たらないといった顔つきだった。
「何したんだ、おまえ」
武田が半眼で訊ねる。とりあえず中立的な立場を貫く。
「予告なしに廃部にして同好会に格下げをしたの。実績あげてないから」
「おまえが一番ひどいな」
自身のしたことは忘れていない。だが、それについて一切の罪悪感がない。恨まれる覚えは全くないという口調。それこそが、彼が行動を起こした理由かもしれないと武田は思った。
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