クレープパーティーは好きですか?






「伊達を出せ。勝負だ」

「開口一番それか。おまえの頭はどうなってるんだ」


 休日の武田家。

 ドアチャイムで玄関を開けるなり、仏頂面の織田がいた。


「徳田も返り討ちにしたようだな」

「……会話しろよ。大体、あれは勝手に自爆したって感じじゃないか?」


 織田は前回といささかも変わらず自分のペースを崩さない。

 武田も奴と顔を合わせたのは二度目だと忘れそうになる。それくらい織田の態度はふてぶてしい。どう追い返すか悩んでいると、


「もーッ、武田ー! 早く来てよ! 焦げちゃうでしょ!」


 待ちきれなくなった伊達が背後から声をかけてきた。


「久しぶりだな。伊達」

「し、しんこちゃん……?」


 珍しく伊達が戸惑う。苦手な人物であるらしい。

 ちなみに伊達はメイドが着るようなフリルのついたエプロンを身につけている。そこを突っ込まないあたりはさすがだと思った。

 つまり武田は目の前の問題に対処することを放棄した。


「もう面倒だ。あがれよ。伊達と勝負するなり、煮るなり焼くなり好きにしろ」

「た、武田!?」


 織田を招き入れたことで伊達の表情が変わる。

「まさかオレを売るの?」的な。むろん武田の知ったことではない。


「ただし、今、クレープを作ってる。それを片付けてからだ」


 勝負をするなら食事の後にしろ。

 どのような場合でも食べ物を粗末にすることに我慢がならない武田だった。それをどのように受け取ったかは不明だが織田が大きく頷いた。


「……いいだろう」


 居住まいを正し、敵陣に乗り込むような仕草で靴を脱いだ。




「クレープ、クレープッ。はむはむ〜、ふーッ!」

「伊達。座って食べろ」


 はしゃぐ伊達を上杉がたしなめる。

 いつものダイニングには所狭しとクレープが並べられている。チョコバナナやイチゴ、ブルーベリーにラズベリーなどのフルーツソースと、生クリームとカスタードクリーム、アイスクリーム、クリームチーズなどを組み合わせて作ったので大量だ。おまけに白玉あんみつやツナサラダなど変化球をはじめ、納豆キムチにまで行き着いた。

 それぞれノルマがあり、格闘すること二時間。とりわけ織田の攻略が芳しくない。ノルマの半分も進んでいない相手に武田は冷たく言い放つ。


「ちゃんと食えよ」

「……もう勘弁してくれ」


 耐えきれなくなったらしい織田は、力なくうなだれた。






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