クリパ、楽しんでますか? 続







 12月24日。

 寒風吹きすさぶ屋外に武田はいた。


「……」


 周囲には幸せを全面に押し出すカップルたち。いや、それは構わない。場所が問題だった。


 視界一面はおとぎ話に出てくるようなログハウスや洋風の建物。カップルと写真を撮る巨大な着ぐるみ……もといファンシーな妖精や動物たち。

 遠くには叫び声がこだまするジェットコースターがひっきりなしに走っている。


 そうだ。場所も問題ではなかった。一番に懸念すべきは別のところにある。


「たッ、けだー! 次はグレムリン・ヒットアウェイに行こう!」

「いやだ。そんなアグレッシブなアトラクション」


 マフラーに帽子、コートに手袋。これでもかとキャラクターグッズに身を包む伊達。すっぱり拒絶すると同時に真横からもうひとり現れる。


「武田。疲れてないか、寒くないか」

「いや、そっちじゃねー」


 姿こそ普通の上杉だったが、両手にはイヤーマフにホッカイロ、ホットドリンクが握られている。心配そうに顔を覗き込んでくる。


「腹、減ってないか」

「いや。そっちでもねー」


 ついでに、ハンバーガーにフライドポテト、サンドイッチなどの軽食の包みを片っ端から開けていく。最悪だ。


 どうしてこうなった? 気がつけば野郎ふたりとテーマパークを歩いている。しかもクリスマスに。今まで、おれは何をしていた? 彼女を誘う暇すらなかった。


「やっぱ最後は観覧車だよねー」

「クリスマス期間限定でイルミネーション点灯をしているらしい」


 武田の気持ちなどお構いなしに話を続けるふたり。


「いやらしいね。限定がつけば何でも特別に感じる企業の黒い策略……だがしかし、オレは騙されない。よし、乗ろう」


「乗るのか」


 もう突っ込む気力さえない。


「も、いい……おまえら、ふたりで行ってこい」

「えー」

「武田」


 手を振って送り出そうとすると不満げな声が洩れた。


「具合でも悪いのか」

「そうじゃねー」


 心配してくれている上杉にも優しい言葉が出てこない。


 そろそろ察してくれてもいい気がする。

 目で訴えてみても、伊達が頬を膨らませるだけだった。


「もう、武田ったら。野郎ふたりで観覧車に乗ったらあからさまに怪しいじゃん」

「いやぁ、三人の方が怪しいと思うぞ」


 実際、観覧車のスタッフは武田たちを見るなり怪訝そうな表情を浮かべた。






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