見てはならないもの
放課後の生徒会室。
いつものごとく三人で作業していた時だった。
「悪い。トイレ」
「あいあいよー」
武田が席を外す。
その瞬間を伊達は見逃さなかった。
「ちょっと失礼」
「伊達」
「ちょっとだけ。実は気になってたんだよね」
机に置きっぱなしのスマートフォンを手に取る。上杉が注意するも効果はあまりない。
「ひっひっひっ、パスワードロックかけたって無駄だよ。解除するとこ何度も見て覚えたからね」
「伊達。笑い方が変だぞ」
「最近、ガードが堅くなった理由は何かな~?」
伊達が気になっていたこと。
近頃、武田がスマートフォンの防御率をあげたことだった。パスワードはもちろん、他人には触らせない。側に誰かがいる時は絶対に使用しない。
そこで伊達の野生の勘が閃く。
パスワードを解除し、検索の履歴を調べてみよ、と。そんな謎の啓示を受けた。
「おいしいシュークリームの作り方……???」
意外な結果に上杉も覗き込む。
「他にも、近所のお店を検索してるみたいだけど」
「製菓材料の売ってる店じゃないか?」
「あ~」
履歴を辿ってみても、菓子に関することばかり。最初は首を傾げた伊達だったが、やがて心当たりがあるのに気付いた。
「この間、上杉に言われたの気にしてたんじゃない? ほら、シュークリーム作った時」
「俺、何か言ったか?」
「言った本人は忘れてるよねー」
よくある話だった。
上杉が思い出せないようだったので、その時の出来事を簡潔に説明してみる。
「うまく膨らまなくて落ち込んでる武田に『干からびた梅干しみたいだな』はえぐいよ」
「そんなつもりじゃなかったんだが」
上杉がぽつりと呟く。
どうやら思い出せなかったのではなく、悪意のある発言ではないと信じていた様子。武田にしてみれば、そちらの方がショックかもしれない。
「あ」
噂をすれば影。
スマートフォンの持ち主が帰ってきた。扉を開けるなり、状況を把握したようだった。
「何やってんだよ、伊達!」
「武田。悪い。俺、そんなに気にするとは思ってなくて」
「何の話だ、上杉!」
「いいじゃん。おいしいシュークリームが作りたかっただけでしょ」
「か、かかか返せよ!」
「そんなエロい動画見てたのバレた中学生みたいな反応しなくても……」
「黙れ、黙れよ!」
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