世界のごみくずから
(心地よい音楽と共に森本レオが語りだす)
本日ご紹介するのはS県S市のUという街。駅からほど近い建物の二階にあるダイニングバーです。
扉を開けると温かみのある内装と柔らかな照明が目に入ります。カウンター席に着いたとき、後ろのテーブルに座る女性がヒーターの向きを調節してくれました。
居合わせた客同士の優しい心遣いに感謝しながらビールを飲んだ時、先ほどの女性をなじる声を臆面もなく上げる連れの男性。
こちらの男性が今日ご紹介するごみくずです。
白髪頭に恰幅の良い、一見紳士な見た目の男性ですが、話し声から察するにかなり他人を下に見る癖があるようです。
男性よりもだいぶ若い連れの女性のやめてという抗議にも答えることなく、私に聞こえるほどの声で臆すこともなくなじり続けます。
店のマスターも渋い顔。
ついには泣いてしまった連れの女性が帰ろうと諭すも、これで最後と少しづつ少量の注文をする男性。今回のごみくずは自覚がない上に周囲の迷惑も顧みないタイプのようです。
女性が席を立ち、トイレで泣き止むのを待ってからようやく男性も帰ることにしたようです。
支払いを女性に任せて立ち上がる男性。すぐ近くの席だった私に気を使ったのか軽く頭を下げてくれました。
「すみませんね。人生長くなるといろいろとあるんですよ」
人生のいろいろは関係なく、ただ男性がなじることだけだが問題だと思いますがせっかく帰る決心をしてくれたのでこちらも笑顔で見送ります。
マスターの見送りに男性がお礼を言いました。
「ああ、この店もまあ悪くはなかったよ」
最後にきっちり爆弾を落としてから店を出る男性。もう二度とこないといいですね。閉まった扉に向かって中指を立てておきました。
その日の最後は店のマスターとさし飲みをしながら嫌な客に対する対応について話し合いました。
さて、次回はどこの酒場でごみくずと出会えるのでしょうか。
お楽しみに。(続かない)
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