U街の年末。最高オラオラ回数更新

 何を考えたか酔った状態で文字を書くという企画に乗ってみんとす。

 私の地元であるUという街は良い街だ。訂正。良い酒が飲める街だ。

 狭い街の面積の半分以上を商店が占めている商業区であり、その大多数が飲み屋である繁華街だ。そしてその飲み屋のほとんどは良心的であり、良い酒を飲める。

 自らが良い客であれば確実に良い酒を飲める。そういう街だ。

 そういう街で生まれ育ったもので、私はこの街のいくつかの店を飲み歩くのが趣味である。

 私が普段飲む店は多種多様であり、ぱっと思いつくだけで十軒近い。我ながらよくもまあそれだけの店に常連として顔を出したものだと思う。

 最近のお気に入りはその中でも珍しいアニメコンセプトバー。コンセプトバーとは言うが、要するにガールズバーの系列店でアニメをコンセプトにしているだけの店だ。

 しかし、この街に店を置く以上その店も良心的である。なぜならこの街で不届きな経営をしようものなら客がつかずに寂れるだけだからだ。この店はまだできてから半年弱と年若い。だがその時点ですでに常連として顔なじみになるような客が何人もいる。良い店である証拠だ。

 その店は時間料金で飲み放題。カラオケもついて歌い放題。価格は近辺のガールズバーと比較すると安めで良心的。カウンターが立ち飲みでさらに料金が安くなっており、カウンターは時にはあふれ出るほどに人だかりができる。

 今日は年末最後の営業日ということで賑わいもひとしお。カウンターは熱気を感じる人だかりだった。

 そんな店で私はというと、“歌うことを期待される”客だ。

 いろいろとあったがゆえに歌は人よりは得意であり、その歌を披露した手前その店では歌える客、あるいは『歌ってくれる客』としてそこそこに知名度を持ってしまっている。

 そんな状態で年末最後の営業日とくれば歌をせがまれることもあり、歌わないわけにはいかないということもある。

 そこで何を歌うかを思案した結果、『ジョジョの奇妙な冒険』を歌うことをせがまれたのでそのシリーズを歌う。

 オタクは知っている知識が様々であり、それがお互いに重なることは実のところなかなかないことでもある。ゆえに意図的にジャンルを絞って集まったりなどしていないこのバーにおいて、その場の全員がなにがしか“わかる”という曲も少ない。その中においてジョジョはやはり曲だけでも何かが“わかる”客と店員が多く、それを歌うことにしたわけだ。

 その流れでジョジョ三部の『その血の記憶』を歌いあげて今日は帰ってきた。

 その時に言われたのがタイトルに書いた言葉だ。「U街の最高オラオラ回数更新ですね」である。

 これを口にしたのが通称トムという男。常連の一人だ。彼は他人を持ち上げるのが上手く、特に一言をもってして相手を言い表すことを得意技とする。

 なので私はトムに「この街ではね」ということで謙遜として家路についたわけである。

 バーから家までの三分間、次はトムに何か言ってやろうと思いつつ、帰ったのである。

 U街は楽しい街だ。特に酒飲みにとっては。夜の街を騒がんとするならぜひ一度来てみるといい。翌日は猛烈な二日酔いになるだろうから。



補足:

 書き終わってから昼も過ぎ、酔いも冷めたので補足を。

 この文章はツイッターのハッシュタグ企画『#文字書き忘年会』というものに寄稿したものです。

 企画のルールとしては書いた文字をスクリーンショットでツイートにつけるということだったのですが、それだけだと読みづらいと思いましてカクヨムのエッセイにも載せた次第です。

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