マキちゃん日記 その3
靜さんがつめたい。
つめたい、ちがうかな。こわい? うーん、それもちがってる気がする。
いつも優しく頭を撫でてくれて、お店に行くと笑ってお迎えしてくれる。でも、それだけ。せっかくカノジョになったのに、おうちに遊びにいくのもまた今度ねってそればっかり。
看病しにいったときは、ちゃんとカノジョできたと思ったのに。
なんで! って言おっかなって、何回も思ったけど、でも、それじゃ靜さんに嫌われちゃうかもしれないって心配になるとなんにも言えなくなっちゃう。
アナンちゃんには「ちゃんと言ったほうがいい」「聞かなきゃわかんないままだよ」って何回も言われてる。わたしもそう思うし、言いたい。聞きたい。
どうやったら、靜さんにとってのカノジョになれますかって。
でもきっと、靜さんはわたしが聞いても教えてくれないと思う。どうしてかわからないけど、靜さんはわたしが頑張ろうとするときゅって顔になっちゃう。
わたしは、わたしのことで靜さんに笑ってほしくて、かなしい顔をしてほしいんじゃない。もっともっと、笑ってほしいだけ。わたしといっしょにいるのを、うれしい、たのしいって思ってほしいだけ。
だから靜さんを困らせちゃうことは、言っちゃダメ。
でも、だけど――
そこまで書いて、わたしはあわててさいごのところを消しゴムでこすった。だめ、せっかくカノジョになれたのに、こんなことが書きたいわけじゃないのに。
カノジョになったら、恋人になったら、もっと楽しいことがいっぱいあると思ったのに。
それなのに――気づいたらわたしの手は、気づけば消しゴムのあとの上に、
あいたい。
そんなことを、書いてしまっていた。
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