第184話 100の剣撃とラストシーン

 ずらっと並んだ剣達が俺の指示のもと次々に踊り始める。

 ザッと駆け出した俺を向かい撃つ様に屍を操る彼女。

 それらを受けて俺の剣は次々に壊れていく。


 〜残り90本〜


(ったく!、あの魔法コントロール力はおかしいだろ!、なんでこの数の骨を自在に操れんだよ!!)


 そう思いながらも剣を骨でできている怪物達に投げつけて壊していく。


(あまり時間はかけらんねぇ!、残りの剣が俺の全魔力だかな!!)


 〜残り80本〜


「くらえっ!!」


 俺は40本の剣を空中で起動させながら奴を仕留めようとしたのだが...。


「その程度の攻撃が私に通用するとでも思いで?」


 彼女が片手を振り上げると、急に骨の蛇の様な存在が彼女の周りに纏わりつき彼女を守る。

 俺の剣は全て反射され魔力の塊となって散布して行く。


「くっ...」


「どうしたのかしら?、だいぶ剣の数が減っているようだけど」


 〜残り40本〜


「上等!、ちまちまやるよりも豪快な方が俺の性にあってる!」


 俺は残った40本の剣を一つの剣のように集団的に固める。


全剣放射フルバースト!」


 俺はそう呟きながら腕を大きく降る。

 凄まじい流星のような勢いの剣線が彼女を襲うのだが、それでもまだ余裕を見せていた。


「ふふっ、なかなか面白い技だったわよ...、けどね私と張り合うにはちょっとばかし足りないのではなくて?」


 彼女は両手を広げ魔法障壁を展開した。

 5重にも重なる分厚い壁が連なり、俺の前へと立ち塞がる。


「こんなもんで止まる俺じゃねぇ!!!」


 40の剣は一点を集中的に狙い守りを崩して行く。


 〜残り30本〜


 奴のシールド削り取るがこちらの消耗も激しい。


 〜残り20本〜


 ようやく一枚剥がせたが、流石に後4枚は崩せないか!?。


 〜残り10本〜


 最後の一発と同時に2枚目のシールドを破壊したのだが、のこり3枚も残っていた。

 俺はガクンと膝をつき俯く。

 それを見た彼女は障壁を解きこう呟いた。


「100の剣線...ね、残念だけど私はこの目で見た死者の数がこの世界を作っているの...、貴方が100の剣を扱うのであれば、私は数千の使者を使役する死霊使いネクロマンサーってところかしらね、思ったより楽しめたし痛みなく殺してあげる...」


 魔力切れの疲弊により動けなくなった俺の背後に立ち何やら呟く彼女。


(...、俺は死ぬのか?)


 そう思うと怖い...。

 まだまだ先が長い人生だと思っていたのに、唐突に訪れた終わりによる恐怖から逃れるために目を瞑った。



 ...。




(お兄...ちゃん...?)


 何故かわかりませんが突然兄の悲鳴のような物が聞こえたような気がしました。


(いや...、今はそんなことよりもショーに集中しなきゃ!)


 ダンスも終焉に差し掛かり、いよいよクライマックスに入っていきます。

 お母さんが王様から賢聖の称号を与えられ、皆から讃えられるシーンです。

 沈黙とした音楽か〜ら〜の〜...、...あれっ...?。

 溜めるに溜めた後にステージからクラッカーのような音が鳴り響き出しました。


(こんなの聞いてないんだけど!!)


 唖然とする私を尻目にエルシーさんは母さんの元へと走り抜き、花束を送りました。


「エルカ様...、お誕生日おめでとうございます!」


「えっ!?」


 花束を受け取った母さんが恥ずかしそうな顔をしながらも舞台にあげられます。

 そんな母さんの様子を見ながら、エルシーさんは笑みを浮かべならこう呟きました。


「クティル王国祭4日目は賢聖エルカ様の誕生日として有名だと知っていましたので、この脚本を選びました、今日は楽しんで頂けましたか?」


「ええ!とっても楽しめたわ!、まさか最後の称号授与式のシーンを私の誕生祝いっていうサプライズに変換するなんて思いもしなかったけどね!」


 母さんが嬉しそうな表情をする中、エルシーさんがお客さん達にこう叫びました。


「では、皆さま!今回私が演じさせて頂きましたエルカ様本人にも盛大な拍手を!!」


 彼女がそう言った瞬間、会場は最後の盛り上がりを見せました。

 エルシーさんの踊りを楽しみながら、私の歌を聴き、最後に国の宝である母さんの誕生日を祝えるなんてお客さんは幸せだな〜...。

 正直に言うと今日が母さんの誕生日だって知らなかったんだけどね!。

 ...、結局兄さん来なかったんだ...、ちょっと残念かな...、せっかく頑張ったんだから見て欲しかったな...。

 会場が盛り上がる中、あの時に感じた殺意の様な違和感が頭から離れない私でしたが、無事にショーが成功したことに安堵する私でした。

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