第183話 罠

「ああ〜もういいや!、さっさとお前を捕まえて仲間の居場所を吐かせてやる!」


 俺は剣を構えて彼女を睨みつけていると、彼女の雰囲気が少し変わった事に気がついた。


「良いでしょう、私に傷をつけた事は評価に値しますので、少し本気を見せてさしあげましょう」


 いちいち上から目線なのが妙に鼻に付くが、こう言う奴なんだと思い込む。

 剣を錬成し再び奴の方を見つめていると、目が曇ったのか奴が2人に分裂しているように見えた。

 目を擦ってみるが、やはり2人に増えている。

 幻影か?それとも分裂したのか?、二つに一つだがこの判断を誤れば致命傷を受けかねない。

 その為慎重に吟味することにした。

 まずは武器を錬成して奴に投げつけて見ると右の方は動いて左の方は止まったままだ。

 これで右側が本物だと分かった俺は、左のやつを無視して右に特攻した。

 慌てた様子で俺の接近を止めようと数に頼った魔法を放ってくるが、先ほどの様に詠唱をちゃんとしているものではない為、軽くあしらう。


「自分の魔術を過信しすぎたな!」


 俺は勝ち誇ったまま驚く彼女に斬撃を与えた瞬間!!。

 強烈な爆発音と共に、俺の腕が炸裂した。


「ぐっ!!?」


 負傷した腕を振って冷やし続けるが、このダメージ量では暫く剣は握れないだろう。

 ジンジンと痛みが酷くなって行く腕をかばいながら、利き手ではない手で剣を握る。

 その様子を見た彼女は高らかに笑っていた。


「こんなにあっさり罠に引っかかってくれるなんて...、自分を過信していたのはそちらの様ね」


 反論できない自分。

 おそらく彼女は俺がそう思う様にコントロールしながら戦っていたのだろう。

 完全に自分の失態でピンチに陥ってしまったのだ。

 それでも戦う意志だけは捨てない。

 俺は騎士だ。

 どれだけ危険な状態でも諦めてはならない宿命にある。

 それが国を守る剣としての義務であるからだ。

 息を切らしながら痛みを体に慣らしていく。

 徐々に体が動くようになると再び俺は彼女を見やる。

 こうなったら...、やるしかない!。

 俺は大量の剣を錬成し始める。

 魔力を込めて、俺の今作れる最高の剣達を生成した。

 その数、約100!。

 次々に生まれて行く剣を見た彼女は笑っていた。


「なかなかの数ね...、これは貴方の評価を上げなくてはいけないわ」


「これを前にしてもなお余裕を見せるか...、どうなってんだお前...」


 それらを錬成し魔力が空となった俺も笑う。

 これが俺最大の魔法、最大の剣技。

 これでダメだったのであれば、残念ながら力及ばなかったと言うしかない。


「行くぞ輪廻教徒ミライ!我が最強剣技受け切ってみよ!!」



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