第176話 ショーの準備OK

「よし!舞台のセットOK」


 私はギルド内に作られた舞台を見て満足そうな表情をしていた。

 今日ここで私が踊るのだと思うと胸が高鳴る。

 カリンと私が全力でやれば必ず成功すると思っている為、余計な心配はしていないのだが、それでも頭の片隅に残っているのは輪廻教だ。

 奴らの動向が気になる。

 ここでのショーが終わった後にはしっかり調査しようと思っていると。


「今日は頼みましたよ、エルシー君」


 白髪少年のギルマスが私に声をかけてきたのを見た私は、彼に言いたい事を言います。


「ギルドマスター!!、私はあなたに問わなければならない事があります!」


「それは...何だい?」


 惚けたような表情で頰を掻きはじめるのは腹ただしい。


「以前の坑道の話なのですが、あれ一人でやるような依頼じゃなかったでしょ!!」


 指を突きつけて彼にそう告げる私。

 あそこに輪廻教がいたというのは100歩譲って仕方がないと思えるのだが、問題はあの百足である。

 あれだけでも相当危険なモンスターであった事は明白。

 それを私一人に任せた事が納得行かない。


「納得の行く説明をしてもらいましょうか?」


 私が声を出してそう言うと、彼は不意に笑い出した。


「いや失敬失敬、悪かったな、まさかエルシーですら苦戦するレベルだとは思わなかったんだよ」


 ...、彼の表情から嘘の感じは見受けられない。


「本当に?」


「本当本当」


 疑わしく彼を見つめて見たのだが、眉ひとつ動かさない所を見る限り、本当であると言わざる終えないだろう。

 私はため息を吐きながら彼のお気楽そうな表情を見つめていると。


「それは置いておくとして、今日は頼みますよエルシー君」


 それを聞かれた私は胸を張った。


「それは任せて下さい!!」


 自信たっぷりの声を張り上げる私。

 そちらは私の得意分野な為、そこまで心配をしていない。

 踊りを始めた頃ならいざ知れず、今の私には些細なミスすらないのだ。

 踊りは完璧、さらにカリンという歌い手もいる為きっと上手くいはずである。

 今までの経験から推測すれば、今日の私は最高の踊りを披露できると断言できるのだ。

 ふふっと静かに笑いながら、私はギルマスと共に舞台を見つめていた。

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