第151話 3人目の聖人

 私達が6日目と最終日の話をしていると、ようやくあの男がやってきました。


「おっ!?、もう皆揃ってるみたいだな!」


 笑い声をあげながら拳聖が登場しました。

 彼は筋肉質な身体つきと黒い髪が特徴的(?)で、単純な一般人をちょっとむきむきにした感じな見た目なのです。


「レイン!!」


「おっ!なんだ!プラムの嬢ちゃんもいるじゃねぇか!!」


「あんたに嬢ちゃんと呼ばれるほど年を取ってないわけじゃないのよ!」


「はっはっはっ!、そんなのちっこいんじゃあ嬢ちゃんと呼ばれても仕方ねぇだろうよ!」


 私の頭を叩きながら彼は笑い続けていました。

 彼が私の身長をネタにしてくるのはいつもの事なのでそこまで不快感はないのですが、それは彼の言い方に悪意が全くないのが大きいと思う。

 本当に心の底から私のことを小さいお嬢さんとしか思っていないので、不快感が少ないのだ。

 とは言え、私が身長をコンプレックスに思っているのも事実。

 なので彼は正直苦手な印象を受けてる感は否めないでいる。


「レイン...、1〜2ヶ月ぶりか?」


「まあそうだな、魔海の怪物討伐からそれくらい経つもんな」


 フォロスとレインは一緒に魔海の魔物の討伐に向かったのですが、レインは里帰りするために王国には戻ってこなかったらしい事を話していた。

 私はその頃はまだこの国に来てなかったのでよくわかりませんが、一応2人の会話を聞いて大体理解したつもりである。


「久しぶりね〜レイン!!」


「おお〜、エルカか!、昔よりも色っぽくなりやがって!!、フォロスが羨ましいぜ!!」


「あらあら、そんな事を言って、リーネさんに怒られちゃいますよ!!」


 妹はレインに冗談を笑いながら言う。


「まあ、俺にはリーネがいるからな!、エルカには悪いが俺の嫁さんもなかなかのもんだぜ!」


 そう言いながら彼は笑顔を浮かべている。

 それを見ていたフォロスはため息を吐いて。


「全く...、そんなどうでも良い会話をしにここまで来たのではないだろう?、それに王を待たせているのをお忘れなく」


 それを聞いた彼は王に跪き、頭を下げて謝る。


「王様すいません!、久しぶりに懐かしい顔触れにあったもんだからついつい!」


「よい、お主の性格はよーーーーく知っておるからのう」


「さっすが王様!話がわかっていらっしゃる!」


「どうじゃ?、レインよ会議が終わった後一杯やらんか?」


「良いのか?」


「わしもお主とは一度酒を交えてみたいと思っておったのじゃ、昔みたいにのう」


「はは...、こうして見るとお前さんも偉くなったもんだな...」


 彼は王の顔を見ながらゆっくりと立ち上がった、と同時に妹がパンっと手を叩いて空気を変える。


「さあさあ、皆さん!警護のお話を再開しましょう!」


 この場の変な雰囲気を壊すためにわざと妹が大声を上げたのだろう。

 そのおかげで皆が定位置に座り、ようやくまともな会話を始めるのだった。


(エルカ...、我が妹ながらよくやった!)


 その後は速やかに会議が進み、会議自体はすぐに終わった。

 と言うかこれだけの内容を伝えるためだけに何時間も待ったと言う事実を考えると、呆れを通り越して笑えてくる。

 若干の疲れを感じながら私が席を立とうとした瞬間、王にこう言われた。


「皆さま、今日はもう遅いので夕食は是非我が城で召し上がってください」


 王がそう言いながら手を二回叩くと、お城の召使い達が豪華な料理を私達の席に運んで来た。


(嘘でしょ...、やっと帰れると思ったのに...)


 クティル城から出るには、もう少しかかりそうです...。

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