第130話 はぁ!?

「はぁ!?、魔神ゼルギニスの死体が見つかった!?」


「そう、私達が跡形もなく粉砕したはずの死骸が旧坑道に隠されていたの、それにその途中には輪廻教が強化魔物を開発している資料とその魔物達がわんさかいたわ」


「って!なんで1人で行ったのよ!!、私やフォロス、ローシュの皆で攻め込めば一網打尽に出来たかもしれないのに!!」


 フ〜フ〜と息を荒げる彼女の表情は怒りに満ちている。

 私が1人で行った理由は単純明快な答えにあった。

 もしも皆で行けばきっと輪廻教の皆は殺されていたに決まっている。

 だが、王国に害をなす異物は排除されて然るべきだという考えかたは良くないと思うのだ。

 人とは多種多様な人格があるのが自然な事であり、それが個性だと私は考えるからである。

 短絡的な回答はいつか身を滅ぼす事を誰よりも知っているはずの私が1人で事を解決しようと奮闘した結果がこのザマである。

 私の身勝手な思いが引き起こした今回の責任は自身にあると言えるだろう。

 事は重大なのだが、姉さんにはこう言っておく。


「それは...、あの時は私の魔力感知に輪廻教徒の結界魔方陣が引っかかって気になっただけだったから1人でもいいかなって...、その時はただ自然の魔力が膨張しただけだと思ったから...」


 少し申しわけなさそうに頭を下げる。

 ちゃんと謝る私の姿を見て、姉さんは少し気を良くしたのでこう呟く。


「今回の件、私に任せてくれない?」


 その話をすると、姉さんは相変わらずの表情で私を見下げるように見つめながらこう返してくる。


「あなたに任せてたら被害が大きくなる一方でしょ、それに、そのために私を呼んだんじゃないの?」


「うすうす気が付いていたのね...」


「そりゃそうよ、私はあなたの姉なのよ、妹のあなたを支えるのは姉として当然よ」


 彼女は私が持って帰った資料を読み漁りながら強化魔物の弱点を調べている。

 その姿を見て私は安心したようにふうっと息をついた。

 その様子を見た彼女はむすっとした顔で私に注意換気を促してきた。


「エルカ!、ぼさっとしてないであなたも手伝いなさい!」


 それがなんだか嬉しく感じた私は隣で一緒に資料を読み漁る。

 これを見る限りでは相当な数の魔物が既に送りこまれているようだった。

 だが、それが事実なのであれば、町中がこれだけ平和なのは少し不気味でもある。

 私と姉さんは一通り目を通し終わると今後の対策を相談し始めた。

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