第129話 さっきの歌って...
「ところでカリン?だっけ?、さっきの歌はお前が歌っていたのか?」
そう、あの歌声が気になった私は彼女に問い詰めて見る。
少し恥ずかしそうにしていたが、時期に答えてくれた。
「そうだよ、私が歌っていたの...、私は歌を歌うのが好きなんだけど、その姿を人に見られるのは正直苦手なんだ...」
そう言って暗い顔をしながら笑う彼女。
もったいない、あれだけ綺麗な声で歌えるのであればボロ儲けできるのに...、と私が考えていると、私の中にある商売魂に火がついていくのを感じた。
「なあカリン」
「何?」
「私と一緒に仕事しないか?、分け前は儲けの半分でどうだ?」
「でも仕事って何をするの?」
彼女が不思議そうな表情で私を見てきたので、それに答える。
「カリンはただ歌っていればいい、私の指定した歌を歌ってくれればそれでOKさ、そにれ合わせて私が踊る、それだけでかなり集客が見込めるはずさ」
「お姉さんって踊り子なの!?」
彼女の目が急に光輝いて見えた。
さっきまで暗い顔をして俯いていたのに、私が踊り子だと知るや否や取り乱したような態度で立ち上がった。
「ああまあな、ちなみに今は商人と冒険者も営んでいるぜ」
「お姉さんってすごいんだね!、でも、私の歌なんて聞いてくれるかな?」
不安そうな表情の彼女を見ていると妹を思い出す。
「大丈夫さ、カリンならきっと一人前の歌姫になれるって!」
敢えて大げさな言葉を使うが、私は本気で彼女が歌姫になれる素質があると踏んでいる。
彼女の歌声からは安らぎと安心感を得られたのは間違いのない事実であり、曲調を変えれば情熱的にも感情的にも聞く人の心を魅了できる力が彼女の歌には存在すると思えてならない。
そのため励ましの言葉をかけて彼女を持ち上げてみる。
「う〜ん...ちょっと恥ずかしいけど、一回だけなら良いかな...」
まだ少し恥ずかしそうな態度をとってはいるが大丈夫、新人の時は皆だいたいこんな感じだからだ。
私も最初はあんな際どい服着て民衆の前で踊るなんてこっぱずかしいと思っていたのだが、生きる為だと思えばそんな考えは少しずつ消えて行ったのを覚えている。
彼女も最初はぎこちないかもしれないが、だんだんと慣れてくれば一人前の歌姫になれる才能を、少なくとも私は感じていた。
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