第125話 3対1

「ヒャッホーウ!!、姉ちゃんやるね〜!怪我してるとは思えないわ〜」


 小刀を持った少女らしき人物が私に斬りかかってきたので、私も短剣で応戦する。


「そりゃどうも!、だったらちょっとくらい手加減してくれないかな!」


 私はそいつを蹴飛ばし追撃を試みたが、火の矢が飛んできたのでそれを避けた。

 大きい奴が小さい奴に説教じみた事を発言している。


「油断するな!」


「はいはい、ゴウは真面目だな〜」


 2人のやり取りを見た彼女は、2人に言い聞かせる様にこう言う。


「お二人とも、手加減は無しでお願いしますね、彼女なかなかの手練れなので...」


 ジリジリと近づいて来る圧迫感だけでもやばいのに、その状況をどうにかしなくてはいけない現状を打破する方法を考えなくてはいけないのだが、この3人の連携攻撃を躱し続ける事などできるはずがない。

 百足との戦闘、白装束との戦いからの水流れ。

 そしてこの3対1という圧倒的不利な状況...。


(あれ...私どうしたら勝てるんだ...?)


 考えれば考えるほど詰みの状態が目に見えて見えてくるのは嫌な物だ。

 私はいつしか戦意喪失したかの様に短剣を床に落としていた。

 それを見た大男は警戒している。


「気をつけろ2人とも!、誘っているのかもしれん!」


 相手からすればこの行為はそう見えてもおかしくはないが、それは違っていた。

 私は初めて生き延びる事を諦めたのだ。

 あがきつ続け生き延びてきた私だからこそわかってしまう。

 どうしようもない現実という物が。

 それがいかに残酷で無慈悲な物か私が1番よく知っているのだ。


「いえ、あれは完全に戦意を喪失していますね...、無理もありません、我ら3人を相手にしてたった1人でここまでやれた貴女を高く評価し、せめて苦しむ事なく消し去ってあげましょう!」


 とんでもない魔力が彼女の周辺に集まり無数の黒い螺旋を描いている。

 あれは魔力が膨張し原型を留めていない時に起きる現象で、とてつもない魔力を一箇所に凝縮し続けるとああなる事を私は知っていた。

 逃げなくては、避けなくてはいけないのに私の体は動かない。

 嘘だろ...ここで終わるのか私は...。

 せっかく実の妹に会えたかもしれないのに本当に終わるのか?。

 そう思うと自然と涙が溢れてきた。


「ごめんなさい...、ヤヨイ...お姉ちゃんもうあなたに会えそうにないや...」


 その時に私が発した諦めにも似た声は震えていた。

 私は目を閉じて最後の時を待った。

 今更足掻いてもどうしようもない事は分かっていたからである。

 その時だった。


「あらあら、もしかして諦めちゃうの?」


 懐かしい声が聞こえたのは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る