第124話 古の化け物
息を切らしながら私は一歩一歩を大事に踏みしめる。
少しでも遠くに逃げなくてはいけないのに速度が上がらない。
怪我をした痛みと水に浸かった事による体温の低下が私の体力をどんどん奪っていくのがわかる。
こんな時火の魔道士がいてくれればどんなにありがたかった事だろうか。
残念な事に私は風の踊り子なので火は起こせないから我慢するしかない。
くちゅんとくしゃみをしながら私は進む。
この先に出口と言う名の希望が待っていることを信じて...。
やがて大きな広間に出ると、私は思わず目を見開いた。
「なぜ!?、こいつがこんな所に!?」
私は絶句した。
いや、なぜ?こいつがこんな所にいるのか見当もつかない。
私達家族を離れ離れにした元凶。
その死骸が今目の前に埋まっているのが見えたのだ。
「魔女の僕...、魔神ゼルギニス...!」
憎たらしいその顔を見るや否や私は駆け出した。
こいつが暴れたせいで私たちの地区は崩壊したのを今でも覚えている。
忘れるわけがない...、悪魔の様な青い肌刺々しい体のライン、そしてあの胸に開いた穴を...。
なぜこんな所にこいつの死骸があるのか気になったが、今はそれよりもここから逃げる事が先決だと自分に言い聞かせた。
生きて帰ってこのことをギルドに報告しなくてはという使命感に駆られた時。
「見つけましたよ」
私はその声の方向に不利返って見ると、見たくない彼女が立っていた。
一応身構えるが戦えるだけの体力は残っていないので虚勢をはることしかできないがやるだけやってみる。
「見つかっちゃったか〜、でっこれは何?」
私は死骸を指差して彼女を睨む。
「あらあら、そんな物がこんな坑道にあるなんてびっくりしましたわ〜」
「わざとらしい芝居はやめろ!」
私は感情的にならない様に注意しながら発言していく。
少しでも多くの情報が必要だ。
「あんたが言ってた我らが神ってゼルギニスのこと?」
「いいえ、我らの神は他にいます...」
「...もしかして悠久の魔女?」
数秒後に彼女は笑みを浮かべた。
「貴女はすこし知りすぎてしまいましたね、ここで死んで頂きます...」
彼女がそう言うと、奥からさらに2人の白装束が現れた。
片方は小さく小刀の様な物を持っていて、もう片方は大きく炎の弓を精製していた。
「弱った相手に3対1か...汚いねぇ...」
嫌味たっぷりの発言で彼女を揺さぶりにかけるが乗って来るはずがない。
私は3人の行動を見ながら距離を置こうと後ずさっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます