第112話 それぞれの休日・メルラ

 今日は休日なので私は町へと出かけてみる。

 最近遊んでいなかったので、少し気分転換のために町を歩きたくなったのだ。

 魔導王国クティルにある店であれば、大抵の物は優秀なため、町にある店に片っ端から入っているだけで時間が経ってしまうのだ。


「今日はどこに行こっかな〜」


 そう思っていると。


「おっ、メルラじゃねーか、今日は非番か?」


 聞き覚えのある声に私が振り向くと、そこにはローシュが立っていたため、私の心拍数は急激に上がった。


(えっ!?、なんでローシュがこんな所に!?、出会うなんて思っても見なかったから、私ラフな格好のままじゃん!)


 その場で出来る格好を正してみるが、やはり魅力的には見えないので恥ずかしい。


「何やってんだ?」


「えっ!...、いや...その...、あっ!ほらあのパン屋さんのパン美味しそうだよね!」


 強引に話題を変える為に指をさした。


「ん?、ああそうだな、そろそろ昼時だしなんか買おうか?」


「いやいいって、自分の分は自分で払うし、よければローシュの分も私が払うよ!」


「いやいや、知り合いの女の子に金を払わすなんて、俺の騎士道精神が許すわけないだろ」


 彼と揉めてしまうのは避けたかったのだが、やはりこう言う事が起きてしまうのだった。

 昔っからそうだった。

 彼の前だと妙に上がってしまい、いつもの自分が出せないのだ。

 結局彼にアンパンを奢ってもらうことになってしまったので少し申し訳なさそうに俯いて歩いていると。


「おいおい、そんな顔するなって、せっかく奢ったのに意味がなくなるだろ」


「ごめんなさい」


「謝らなくていいって、別に悪いことをしたわけじゃないんだから...」


 妙な雰囲気になってしまったので、彼はため息を吐きながら話題を変えた。


「そうそう、聞いてくれよメルラ、最近俺に弟子ができたんだ!」


「ローシュに?」


 ちょっと興味が出たので話を聞いてみることにした私は顔を上げた。

 それを見てにっこりと笑った彼は話を続ける。


「ああ!、そいつは諦めが悪くてな、最初は俺も嫌がったんだが、意外と伸び代があるから教えていて楽しいんだ」


「へぇ〜、ローシュがそう言うなんて、才能があるんだねその子」


「いやないな、世間一般的にいう才能はそこまでない」


「え?、じゃあなんで剣を教えているの?」


「...、あいつのハートに心を動かされたから...かな!」


「...?」


 女の私に男の子のノリはよくわかりませんが、彼が楽しそうに笑っていたので良しとします。

 この後一緒に色々と見て回ったので充実した一日が過ごせました。

 夕日が暮れてくると、彼は「じゃあそろそろ帰るわ」と素っ気なく帰って生きましたが、それでも私は彼と一緒に過ごせたこの時間がとても有意義に感じられます。

 私が帰って床に着くと、今日のしたことを振り返ってしまい、まるでデートのようだと気がついた時に悶絶していましたとさ。

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