第102話 娘が粗相を...申し訳ない

「ごめんなさいねアルエッタ...、カリンちゃんが粗相をしてしまって...」


 私はアルエッタに謝りの言葉をかけると、彼女は笑顔を返してくれた。


「いえ...、別にそこまで怒っていませんし、それに...、あんなに激しくされたのは初めてでしたから、少しドキドキしてしまいました...」


 さりげばく頰を赤くしていたので、もしかしてこの娘、そっちの気があるのではないかと疑がいをかけてみる。

 わざとらしく咳をこんで彼女を見下ろす。


「コホン...、ところでアルエッタさん、あなたはカリンちゃんの事をどう思いますか?」


「どう思うか...ですか?、そうですね...カリン様はエルカ様の娘であらせられるお方でありますので、私にとってとても大切な客人ですね」


 ...、違う、そういうことを聞きたいのではない。


「先程からあなたの顔が赤くなっているのが気になってね...」


 私がそう言うと、彼女はハッとしたように手で口を押さえた。


「もしかして、顔に出ていました?」


「うん、アルエッタさんの表情はとてもわかりやすいから」


 彼女とは幼少の時からの付き合いなので、だいたい表情を見ると何を考えているか手に取るように分かるのだが、今回のような表情はまずいと思うので今のうちに手を打っておく。

 一呼吸を置くと彼女は口を動かし始める。


「ええ...、実は先程からカリン様を見ていると体の奥底から沸き起こる感情がありまして...」


 ほらきた!。

 絶対に辞めさせるぞ...、私にとってはアルエッタも娘のような物なので、流石にとめなくてはと考えていると。


「カリン様のプニプニしてそうな頬っぺたを摘んで見たいのです!」


「はい?...」


 以外!。

 ただ頬っぺたを摘みたいだけだったとは不覚を取らされた。

 真剣に考えていた私は急におかしくなり大いに笑った。

 私が笑うと、彼女は動揺し「何かおかしいですか?」とキョトンとした顔を見せた。


「いえ...、私の心が汚れていただけだから気にしないでね...」


「は...はぁ...」


 頭に手を置いて私を見上げる彼女の素顔を見て安心する。

 彼女は純粋に我が娘の頬っぺたを触りたいだけなのだろう。

 その純枠さに免じ、私はある提案をする。


「じゃあ、今から子供部屋に行ってカリンちゃんの頬っぺを一緒に触りましょう」


「えっ!?、今からですか!?、もう夜も遅いですし子供たちも寝ていると思うのですが...」


 たしかに彼女の言う通りではある。

 もう10時も過ぎているので、きっとカリンちゃんは眠ってしまっているだろう。

 だが、眠っているからと言って頬っぺたをさわれないわけではない。

 それに、私も最近か娘に触れていないので少し寂しかったのだ。


「さあ!話が決まったからには行くわよ!アルエッタ!」


 私は元気の良い子供のように駆け出すと、彼女も慌てながら私の後についてきた。

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