第101話 終劇
私は息を吸い込み最期の演技に入る。
息を飲みながら子供達も見入っている。
「悪い魔法使いはお姫様にこう言いました」
「お前が私を真実の愛で私を消そうとも、いつか私は復活しお前の子孫を食らってやろう...、もっとも...その時にはお前年老いてこの世には存在していないだろうがな...」
「しかしお姫様は動じません」
「あなたが復活した時に私が居なかったとしても、その時には私の血を引くものがいます、私の血を継ぐ者は永遠に存在するのですから!」
「お姫様は剣を掲げ悪い魔法使いに止めを刺しました」
「その後お姫様は家族と一緒に幸せに暮らしましたとさ...、めでたしめでたし」
私は息を吐いて汗を拭う。
思ったより公演時間が長かったので疲れたのだ。
流石に全キャラの演技と造形を同時に行っていたので、流石に疲労が溜まったと感じている。
でも、途中からアアルにも手伝って貰ったので魔力切れにならずに済んだのが幸いしていた。
もしも彼が力を貸してくれていなかった場合、魔力が続くわけがないので、この演劇は失敗していただろう。
「お疲れ様...アアル」
そう言いながら私は彼をそっと手に取る。
彼は眠そうに目を羽で擦りながら私を見て大あくびをした。
「ふぁ〜...、カリン...もう僕は限界だよ...、先に眠っているね...」
それだけ告げるとすぐに眠りについた。
「お休みなさいアアル...」
私がそう言い終わると急に拍手が鳴り響いた。
子供達が一斉に拍手をし始め喝采を上げてくれたのだ。
「面白かった〜」
「アンコール」
「続きないの〜」
みんなの感想が私の心を癒してくれる。
「皆ありがとう!、でももう夜も遅いし寝なきゃね」
「ええ〜...」
皆最初は渋々床に着いたものの、やはり子供なのかすぐにスヤスヤと眠ってしまった。
私もあくびが出てきたのでそろそろ眠ろうかと思って用意された布団に手をかけた時。
「カリンちゃん、今日はありがとう、皆カリンちゃんのお話楽しんでいたよ」
ヤヨイにそう言われるのでなんだか照れくさくなる。
私の元いた世界でこのくらいの話は腐る程見てきたので知識があるのだが、こちらにきてからこういう童話風の本をあまり見ていないと思う。
もしかしたら数が非常に少ないのかもしれないのかもしれない。
さっきの子供達の様子を見ていると、大人になったら童話風の人形劇を色んな町を巡りながらやるのも面白いかもしれないと考えたのだが。
やはり今は魔法の勉強が最優先事項だと結論に達する。
何をするにしても魔法が使えなければ商売にすらなりはしないし、今日も1公演のみで魔力切れを起こしてしまっている為現実的ではない。
もう少し精度を高めてコントロールが上手くなれば話は変わるのかもしれないが、どのみち遠い未来のことなので深く考えないようにする。
「ヤヨイちゃんにそう言ってもらえるのなら、私も公演した甲斐があったというものだよ、また新しいお話が出来たらここで披露してもいい?」
私がそう聞くと彼女は即答してくれた。
「良いに決まってるじゃない!、カリンちゃんの作ったお話すごく綺麗で面白かったんだもん!」
目を輝かせながら私の手を握ってきたのでかなり照れてしまう。
「そ..そうかな...」
「うん!」
これ程までに好評をいただけるのであれば力が入る。
次はもっと面白い話を書こうという創作意欲が湧いてくるのだが、やはり眠気には勝てない。
「ヤヨイちゃん...私そろそろ眠いかな...」
「カリンちゃん...、実は私も...」
お互いに大きくあくびをしたので笑いあった。
「おやすみ...ヤヨイちゃん...」
「おやすみ...カリンちゃん...また明日...」
私は子供達と一緒になりながら、夜の教会で静かに瞳を閉じた。
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